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音大受験に音楽基礎科目はいらないのか?

この3月で2つ、仕事を離れることになった。一つは指導教員から頼まれていたものだったので、学位論文執筆のため辞める許可を得た。もう一つはピアノの先生から頼まれたものだ。こちらは音楽教室で、音楽学部または教育学部の音楽専攻を進学とする人には必要な科目であるソルフェージュと楽典の指導である。
実は博士課程に入ると同時に、一度その音楽教室を辞めていた。というのは、まず、音楽学部入学志願者が激減した、という背景があった。たまたま博士入学とソルフェージュの生徒0人になるタイミングが重なった。
今回の退職は、少し理由が違う。最初は「ソルフェージュ受講希望者が2人いる」と聞いたので、その音楽教室に戻った。一人は結構できる子だったけど、結構な頻度でサボるし、嘘もつく子だな…と思っていたら、「ピアノを専門にするのは嫌になった」といってすぐやめた。ピアノの先生に少しキツイことを言われて自分のプライドが傷つけられた。だから辞めると。「あ、そうですか」なら辞めたほうがいいね、が私の意見。約3ヶ月くらいのことなのでこの件に関しては何も思い入れはない。

それから2年が経とうとしている。1人のためだけに快速の電車に乗れても、往復2時間ほどかかる教室に教えに行っていた。少し話は逸れるが、楽器店系の音楽教室は交通費が出ない。1人だけのために、まあまあ時間が潰れる。待てど暮らせど、生徒が増える兆しはない…楽器店も頑張ってはくれた。コンクール後にチラシを配ったりしてくれていた。でも1人のまま…。その1人の生徒のことだか、その子がのちに進学するとしてもソルフェージュが必要になる可能性が低い、ということが含まれている。それが以下の入試事情の変化である。

入試にソルフェージュ・楽典の課題を課さない学校、簡単になった学校が多くなった。特にコロナ後。私が調べたものだけだが以下の通りである。

・藝大=これまでとほぼ変わらず。しかし、単旋律冒頭の4小節はかなり簡単になった。あの4小節が取れない人は藝大にも他の私大音大にも入れないと思う。
⭐︎私大は匿名で。ちなみに私大はどの音大も全入に近い状態。
・元ソルフェ強い音大=課題AとBに分かれるようになった。Bは誰でも取れる。Aもそこまで難易度は高くない。
・演奏家コースで一世風靡した音大=声楽と管弦打の聴音がかなり易化。ピアノ科、作曲は普通。指揮専攻のみ、ある程度の難易度を保っていた。合格ラインがどの程度かは不明だが。
・以前《第九》といえば!の音大=この大学を受けるために特別な対策を立てないと取れない、とされていた大譜表の暗記聴音課題が削除され、四声体和声になった。つまり、他学と併願しやすくなった。
・2つキャンパスあったけど、1つになった音大=全専攻、聴音なし!(衝撃!)
・我が家の近所にある音大=器楽専攻系(もしかしたらピアノ科だけかも?)は、かなり簡易な単旋律、四声体和声聴音はなぜか全てCdurしか出さないという謎の決まり。かなりの数の専攻で「楽典・ソルフェージュ課題は課しません!」と宣言したポスターを見た(驚愕)。

以上の大学は関東近郊のみだけど、ざっとこんな感じでした。これじゃ、ソルフェージュなんか習いにこないだろう。そもそも少子化なのに加え、音大進学志願者が激減している。ソルフェージュ・楽典の易化や削除という結果になったのは、学生を集めるためだろうことは想像に難くない。国公立教育学部の音楽専攻も一応、楽典・ソルフェージュを課しているようだが、この現状はこちらが死にたくなるくらい受験生の意識が低いので、この件に関しては記述を控える。

こうなったらソルフェージュ講師を辞めるしかない。ソルフェージュ講師に未来はないのだ(藝大を目指す子は藝大作曲系などの先生に師事するだろうから。数年前は私も藝大に受験生を送ったが、もう私の出る幕はなさそう)。これから私は自分のすべきことをして、ちゃんと大学院を修了できるように学位論文を書こうと思う。ピアノは細々弾く。やっぱり音を出してないと頭が変になるから。

まぁ私の話はどうでも良い。とにかく日本で音楽を学ぶとなったら、藝大一択になってしまったのではないか?と本気で思う。日本人がヨーロッパの音楽を学んだっていいじゃないか!実はソルフェージュを教えるのはいろいろしている仕事の中で一番好きだったので、残念でならない。また西洋だけでなく、世界の音楽がいろいろな形で学べる環境が整うと嬉しいな、と個人的には思っている。

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