見出し画像

ジョブ型雇用が「運頼み」のキャリアを解放する

 仕事の内容によって報酬を決める「ジョブ型雇用」が広がってきた。ジョブ型雇用とは、ジョブディスクリプションを元に個人と企業が契約をする。人事評価を実施せず、転勤も異動もない硬直的な雇用制度だ。各国のジョブ型雇用は解雇などのルールで様々なものがあることは注意しなければならない。この広がりは、どこの企業・部署に勤めるかよりもどんな仕事をするかが社会人として重要になったと言える。社会人にどのような影響があるのだろうか。

 元大阪市長・弁護士の橋下徹氏はさまざまな著書やメディアの中で「流動性」を高めることが必要だと訴えている。府知事時代に3年連続定員割れする公立高校を統廃合するルールを作ったというエピソードはよく彼の口から語られ、雇用においても安定性よりも流動性を高めることで、社員の熱を高めたり労働環境を改善させたりすることができると主張する。ジョブ型雇用はまさに流動性を高める効果があると言える。

 会社は我々が認識しているよりもずっと閉ざされた世界だ。「会社の常識は社会の非常識」という言葉がある。閉ざされた世界では社会とのひずみが生まれやすい。その最たる例が報酬だ。同じ仕事をしていても企業によって報酬が異なる。働きに対してもらいすぎている人、搾取され続けている人が存在する。

 ジョブ型雇用の広がりに伴い、報酬調査サービスを利用する日本企業が増えてきたようだ。これまでの日本企業の利用は主要国で最も低調だった。総合職というキャリアと年功序列制との親和性から、必要とされてこなかったのだ。報酬体系を市場原理に晒して、ひずみが改善されていくことを期待したい。

 大学生にとって就活は人生で最も重要なイベントの一つであり、高校・大学へと進学した先の「ファイナル・チョイス」の側面が強かった。しかし、ポジションと仕事内容に応じて報酬が定義されるようになれば、転職市場が活発になり雇用の流動性は増すはずである。それによって、大学生の就職活動は単なる「ファースト・チョイス」へと変わり、自らのスキル習得やライフスタイルの変化に合わせて、勤め先や所属部署を転々と移していくキャリアを送れるようになる。

 人生の後半になって初めて余裕のあるお金の使い方できるようになる年功序列制の報酬体系は、若者の人生の多様性を阻害してきた。若くして多くのお金を手に入れる人は一定数いる。スポーツ選手や企業して成功した人、富豪に生まれた人、SNSのインフルエンサーなどである。彼らを見ていると、多様な生き方があることを感じさせられる。しかし、多くの人は企業に就職して、経済的な余裕のなさから若いうちは一緒くたの生活をせざるえない。

 優良企業や急成長する企業に就職できた人たちが「就活勝ち組」として華やかな生活ができる。全ての社会人を対象にすると、業界や企業ごとに大まかな年収ランクが決まり、能力と収入の相関が弱い。就活で良いポジション取りをできた人がラッキーなのだ。そんな「運頼み」に近い伝統的なキャリア観を解放するジョブ型雇用を歓迎したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?