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リモートワークで失われた「雑談」の価値

リモートワークが急速に広まった2020年。ただ、どうしても悩みのタネとなるのが、社内やプロジェクトチームにおける、コミュニケーションです。

Webミーティングツールを使えば会議や打ち合わせは問題なくできる。でも、ちょっとした相談や思いつきのアイデア、お互いのことを知る身の上話などはしづらくなり、新しいプロジェクトが生まれなかったり、チームの一体感が失われてしまったり。仕事は問題なくできているようで、どこか空虚な気持ちになる。

リモートワークで失われてしまった「何か」とは。NeWork(ニュワーク)開発チームは、新しい働き方を提案するサービスをつくるために、その正体を解明していきました。開発チームの大野、武田が、開発パートナーであるデザインファームKESIKIの石川俊祐さんを交え、NeWork開発プロセスを振り返りながら語ります。

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快適! のはずが、なぜか疲れるリモートワーク

大野:NeWorkのプロジェクトが発足したのが、2020年6月。最初は、「リモートワークを支えるコミュニケーションツールをつくる」というざっくりしたお題でした。そこから、コンセプトを考えていったんですよね。

武田:ちょうど外出自粛期間の真っ只中でした。NTTコミュニケーションズは2020年2月頃からリモートワークを推奨していたので、2020年4月の緊急事態宣言後には全面的にリモートワークに切り替わりました。いろんなコミュニケーションツールを使って、仕事は問題なくできていました。でも、実際に会う時間が減った分、打ち合わせの頻度が増えていた気がします。

石川:あのころ、なぜか毎日ものすごく疲れていた気がします。オンラインミーティングで移動時間がなくなったことで、スケジュールに間がなくなってずっとミーティングの状態が続いて。仕事をしたという達成感もないのにぐったりしていました

リモート

左上:大野 右上:KESIKI 石川さん 中央:武田

大野:ツーカーでできていたことができなくなった、というのは大きかったですよね。オンラインで人とは話しているんだけれど、なんだか一人ぼっちのような感じ。寂しさを感じている人は周りにも多かったです。

武田:阿吽の呼吸ができなくなりましたよね。4月に入った新入社員も、先輩社員に声をかけるハードルが高く、戸惑っていたり。リアルではできていたコミュニケーションのうち、何かが欠けているんだろうなと思いました。僕たちがコミュニケーションツールを作るなら、Zoomからこぼれ落ちている「何か」をすくえたらいいなと思いました。でもその正体はまだ見えていなかった。

石川:僕たちKESIKIとしては、以前から、そもそもミーティングって生産性悪いからやめようって言っていたんです。でも、リモートになって、気づいたらミーティングばっかりになっていた。だから、このプロジェクトの話があったときに、働き方の再定義のチャンスだなっていう漠然たる思いがありました。

無駄だと思われていた「雑談」に隠された価値

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大野:自分自身の体験や感じたことをベースに、miro(ホワイトボードアプリ)などを使いながらリモートワークのコミュニケーションの課題を出し合っていきましたよね。

武田:コンセプトを検討していく中で出てきた課題をざっと挙げると、
・いちいちURLを探したり、発行したりするのが面倒
・相手のリアクションがわかりにくい
・そもそも、上司や部下、同僚が何をやっているかわからない

などなど、不満がいっぱい出てきました(笑)。

MIRO_付箋大きい版

石川:エキスパートインタビューなども交えながら、みんなで、「働く」ってそもそもなんだっけ?という根源的な問いから考え直していきましたよね。

大野:チームで議論する中で、私たちが一番、大きな課題として捉えていたのが、「コミュニケーションの絶対量が不足している」「会議中しか話す機会がない」「すきま時間で軽く相談したいけど、わざわざWeb会議を設定するのは手間がかかる」という、3つでした。

石川:そうした課題に対し、それを単に解決するのではなく、それを踏まえてリアルを超えるような形でどうやってバーチャル上に再現できるか。もっと楽しい働き方にどうやって変えていけるか、ということを議論していきました。

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「バーチャル会議室」では現実を越えない

武田:コンセプト段階ではバーチャルオフィスって呼んでいたんですよね。でも、上から見たオフィスや会議室をUIとして表現するのは違う気がしていました。リアルをそのまま再現したらそれ以上にはならないというか

石川:そうそう。オンラインだからこそ、現実を越えた体験をつくりたいと思ったんですよね。空間として、どういう場所をイメージするのかという話もしました。美術館みたいにかしこまったところではなく、フードコートみたいに気軽に集まれる感じとか。

武田:ビジネスっぽすぎる堅い感じにはしたくなかったですね。やわらかさや、わくわく感を大事にしたいと。

石川:そもそも、人と人がつながる、人が会議とつながる、ってどういうことだろう、ということを話していきましたね。インスピレーションになったのが、二つの水滴がくっついた時、ピトッとひとつの大きな粒になる、あの自然現象。そういった有機的なインターフェースにしたい、という思いがありました

シャボン

大野:そこから、「バブル」の発想ができていきましたね。NeWorkでは、リアルでの会議室やミーティングルームを「バブル」と呼んでいます。部屋としての大きな円形と、個人の小さな円形。それぞれがくっついたり離れたりが可視化されるようにしました。

コミュニケーションが生まれる「余白」のつくり方

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武田:コミュニケーションのハードルをいかに下げるかということが一番の肝でした。現実世界であれば、いま話しかけていい状態なのか、会議に出ているのか、集中して作業しているのか、ということが目で見て分かります。リモートではそれが見えないから、余計な慮りが発生する。だったら見える化しよう、という話になり、アイコンの色でその人の状態が一目見ればわかるようにしました。

大野:ちょっとした相談とか、話しかけるにあたっても可視化されていないと、ねえねえって話しかけることも難しい。一人ひとりの状態が見えていて、誰と誰が話をしているかが見えるというのは、コミュニケーションを活発にする上でとても大事なことですね。

武田:「話す」だけでなく、「聞く」方のハードルも下げたくて、「聞き耳機能」というのを作りました。これは、言ってしまえば、自分のマイクをオフにしている「ミュート」の状態と全く変わらないので、普通であれば排除されてしまいます。でも、UIとして別で見せて、「この人はいまは聞くことしかできない」というのを見せてあげる。そうすることで、その人の状態だけでなく、その人の意志までもがビジュアルとして見えてくる。これは現実を越えて、オンラインならではかな、と。

ききみみ

石川:色使いやイラストのテイストも堅すぎず、実際の会議を想起させないようにしていきました。これからの時代に、もっと仕事と遊びの間のコミュニティだったり、友達同士で何かプロジェクトをするなんてこともある中で、そういうシチュエーションでも使いやすいようにしたかった。

武田:ユーザーインタビューをしていたら、バブルのひとつに「温泉」って名前をつけてくれているチームがあるみたいで(笑)お湯に浸かりながら世間話するような部屋らしいのですが、多分、普通に会議室のUIだったらそういう目的のない部屋って存在し得なかったんじゃないかなと。イベントで使ってくれている方々もいらっしゃいました。そうやって、想定していなかった使い方にまで拡張されているのは嬉しいですね。

石川:知ってる人同士、知らない人も含めて、いつでもどこにいても、ちょっとした会話ができる場所があるって、おもしろいですよね。そこから今までになかった創造性が発揮されていきそうです。そういう、新しい働き方、新しいコミュニケーションの在り方を提案していきたいですよね。

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大野:このプロダクトを「NeWork」と名付けたのも、リモートワーク 時代の新しい働き方を自分たちがつくっていくんだという思いをこめたかったから。「NeWork」という名前を体現できるようなサービスを目指していきたいです。本当に心地の良いサービスにしていくには、まだまだ道半ば。ありがたいことに、多くのユーザーさんからフィードバックをいただいているので、まずはそれをひとつひとつクリアしていきたいと思っています。

NeWork サービスサイトはこちら!

NeWork note 編集チーム:中見麻里奈、原田結衣
Special Thanks :若尾真実(KESIKI)、九法崇雄(KESIKI)
クリエイティブ :宇都宮里梨子、武田透摩、田中亮

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