これが女性が創った会社だ まるで米西海岸的なカルチャーを宿す 失敗を重ねても、妙に挫けないDeNA

経団連初の女性の副会長に就任
南場智子が評価される理由

 本来なら人流を徹底的に抑制すべきパンデミックの最中に強行された東京五輪。下馬評に上らなかったアスリートが予想外の活躍を魅せたあたりは、筋書きとは無縁とされるスポーツの醍醐味であった。だが同時に、この国際イベントは、JOC(日本オリンピック委員会)や東京オリンピック競技大会組織委員会といったニッポンの権威組織が宿すマスキュリズム(男性優位)とネポティズム(縁故主義)の深刻さを全世界へ見せつけた。

 数少ない慰めを挙げれば、悪評プンプンだった開閉会式と、パリで行われた華やかな次期五輪のプロモーション映像の落差を目の当たりにした若い国民が、国内の政官財に通底する硬直性と前時代性をアンシャン・レジームとして認識し、「世直し」の必要性を共有する契機になったことくらいだろうか。こんな有り様の東京五輪から急遽、距離を置いたトヨタ自動車のリスク判断が一定の評価を受けたのとは裏腹に、昭和生まれの高齢経営者たちが集
う権威組織である財界には、従来以上に厳しい眼差しが注がれることと思われる。

 その財界の総本山・日本経団連にこの6月、旧経団連並びに旧日経連時代から数えても初めてとなる女性の副会長が誕生した。IT大手のディー・エヌ・エー(DeNA)を創業し、現在は会長職にある南場智子氏だ。経団連は南場氏が登場するまで、19人いた会長・副会長は全員男性が占めていた。メンバーの4割が女性という米国の経済団体「ラウンドテーブル」と比較するのもおこがましいが、差別の解消やジェンダーフリー等を謳うSDGs(持続可能な開発目標)に則った初の五輪にすると国や東京都が掲げた手前、昨秋に、会員企業の役員に占める女性比率を2030年までに30%超に高めるとの目標を制定せざるを得なかった。

 もっとも、重責を前に南場氏自身は、「男女関係なく、頑張った結果でのみ評価されるべきだ」と、にべもない。現在、DeNA自体も女性管理職の比率目標などは定めておらず、採用の基準は「仕事ができるかできないか」の一点。性差に関係のない徹底的な実力主義が採られている。

 「女には教育は要らない」と実父が公言する新潟の保守的な家庭に反発を抱きながら育ち、女子大時にはそんな実家から少しでも離れようと奨学金を掴んで米国へ留学。新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社すると、上司であった大前研一氏から実力と結果だけが評価される企業コンサルの厳しい世界を徹底的に叩き込まれた。要は、こうした半生が前述の発言に反映されているのだろう。

ここから先は

4,388字
この記事のみ ¥ 200