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隠れ家的医院

今月のはじめ、突然音が二重に聞こえるようになった。
片耳ずつだと普通に聞こえるけど、両耳だとほんのちょっとずれて聞こえる。そのまま症状が固定してしまうのが一番怖いのですぐに耳鼻科受診した。
ところが、聴力の検査では問題なく、鼓膜にも問題がなく、他に検査してもこれといって悪いところがない。
少年のように快活ではきはきした女医さんが「花粉症でしょう」と言う。
いや、鼻も詰まってないし、目も痒くないし、花粉症の症状は皆無だ。
仮にそうだとしても、なぜ花粉症で音が二重に聞こえるのか、説明がない。
やんわり確認しても「いや、花粉症だと思いますよ」と押し切ろうとしてくる。
この時期、何でも花粉症と言えば納得するとでも?
しかも処方された薬が抗生物質…そこは抗アレルギー薬じゃないのか。
安易に抗生物質を出す先生とは相いれないなと思いつつ、その夕方には聞こえが改善したので放っておいたら、先日また同じように音が二重に聞こえるようになった。

今度は前回と違う医院にかかり、また同じ検査をしたけど、その先生が言うには「よくわかりません」
見える範囲の検査では異常がなく、聴力検査でも難聴とは言えない。
もっと奥のほうで何か起きているとしたら(たとえば腫瘍とか)、前回のように放っておいて改善する、というのもちょっと考えにくい。なので、「これ」という診断はつけられません、と言う。

診断がつかないのなら、治療もないってこと?
ストレスのせいとか加齢とか、そんなふうに適当にあしらわれるのかと思っていたら、そんなことはなかった。

中で炎症が起きている場合、その腫れによって耳管が狭窄して聞こえが悪くなることがあります。いまここで試せるのは、その耳管の疎通をよくすることだけなんですけど、してみます?と。

あーこの先生はいい先生かも、と思った。
わからないことをわからないと言える。
そのうえで最善を提案できる。
この先生は信頼できるかも。

結果を言えば、耳管の通気をしてもらったら改善した。
いろいろ済んだあと先生が「エレベーターや飛行機、苦手ですか?」と聞いてきた。
苦手です、耳が詰まるので、と答えたところで、自分でも思い当たった。
そうか、もともと詰まりやすいってことか。
先生も、でしょ?、みたいな顔をして「ただ、今回は詰まった感じはなかったんだし、耳管狭窄で二重に聞こえる、というのもあまりないことなので、これで解決とは言い難いんです。でもまぁ様子見てください。また困ったらいつでも来てください」と言った。

わからないなりに経験に照らして、すべきことが提案できる先生はいい先生だ。
慎重で誠実で、信頼できる。
でも、「わからない」と言ってしまう先生が嫌な人もいるのだろう。
Googleレビューも☆1だったし。
この花粉症の時期にほとんど患者さんいなかったし。
ならいっそ、隠れ家のように、でも知る人ぞ知る、そんな医院であってほしい、これからも。


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