自分の音楽
いま、ハノンのほかにギロックの「アラベスク・センチメンタル」を練習している。
先生に「次の曲」としておススメされたとき、曲どころかギロックも知らなくて、どんな曲なのかyoutubeで聴いてみた。
最初は「無理じゃん、こんなの」と思った。
楽譜の構成がよくわからなくて、読むのもすごく大変だった。
でも、弾けるようになってきたら良さがわかってきて、こんなきれいな曲がレパートリーになったらいいな、という気持ちで練習している。
ある日のレッスンで、「じゃ、右手だけ弾いてみましょう」と言われた。
それ自体はよくあることなので、弾こうとするのだけど上手く弾けない。
冒頭の左手から右手にかけてひとつながりだと思って弾いていたので、右手だけだと思ったように手が動かない。
「左手もつけて弾いていいですか?」と、冒頭の左手をつけて弾いた。
練習が終わったあと、先生が「その解釈も美しいですね」とおっしゃった。
その解釈?
「左手からメロディが始まる、という解釈もとてもいいと思います」
青天の霹靂だ。
左手から始まるんじゃなかったのか。
あ~、だから先生は「右手だけ弾け」とおっしゃったんだ。
「メロディって本当はここ(右手)から始まるんですか?」
「そういうふうに考えている人が多いと思います」
「あぁ……思ってもみませんでした」
思ってもみなかった。
冒頭の左手からメロディが始まっている、と思い込んでいた。
そうなんだ……左手はあくまで伴奏だったんだ。
「でも、左手から始まるっていう解釈も、ありだと思います」
疑り深い性格なので、先生は慰めでおっしゃったのかなぁと思ったり。
でも、間違っているならはっきり「違う」とおっしゃるだろうし。
先生がありだというなら「あり」なのか?
どっちつかずの気持ちで家に帰って、youtubeで7~8人くらいの演奏を聴いてみた。
驚いた。
みな右手からメロディが始まっていた。
初めて検索したときの演奏も改めて聴いてみたけど、やっぱり右手から始まっていた。最初に聴いたときは全然気づかなかった。
これってこういう曲だったんだ。
でも、いくつか演奏を聴いてみても、冒頭からひとつながりでメロディが始まる、という自分の解釈のほうが、自分は好きだな、と思った。
音が大きく懸け橋のように流れていく。
先生だって「それもあり」と言ってくださったのだし。
やっぱりこれでいこう。
今までの自分だったら、先生が「多くの人はこう考える」とおっしゃったら、何か怯えてしまって、じゃぁ多くの人の言うとおりにしよう、と即座に変更したに違いない。
でも、今回ばかりは揺らがなかった。
自分の感じ方のほうがいいと思った。
こういうふうに演奏したいと自分で決めた。
そうしたら、初めてこの曲が自分の音楽になったようで嬉しかった。
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