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LANI KAI VILLAGE INAMURA(1)建築条例

ついに完成が近づいてきました!鎌倉市稲村ヶ崎駅徒歩30秒にある集合住宅『LANIKAI VILLAGE INAMURA』。noteのマガジンページ「野田の独り言」も作ったものの、全く記事を投稿していなかったので、11/5の内覧会開催に向けて、色々あったなーと思い返しつつ文章をUPしていこうと思います。

建築設計のお仕事をしていますと、しょっちゅう「えーーーーーーー!そんなルールがあったのー?」とか、「えっ!何?そんな物がこんなとこから出てきたの!?」など、壁にぶち当たる事も多く(ぶち当たらなくて良いように初っ端に十分な調査をするのがベストです。が、その余裕が無い事もしばしばです。)、その都度心臓をドキドキさせる事になるのですが、今回の計画でまずぶち当たった壁、「建築基準条例」について今回は書いていきたいと思います。途中建築専門用語も出てきますので、知りたいと思った方、どしどし質問してください!

建物に関する法律と言えば、建築基準法ですが、各自治体で建築基準条例が定められている場合もありまして、プラスαの規制がかかったりします。鎌倉市の場合はどうか?有りました。「鎌倉市建築基準条例」です。

今回敷地内に5戸のメゾネット集合住宅を計画したのですが、これが法律上「長屋」と呼ばれるものに当たりまして、鎌倉市建築基準条例では長屋に対して、「長屋の構造等」という規制がかけられていました。
ちなみに「長屋」とはそれぞれの住居から敷地内通路に直接出ることができる集合住宅を法律上そう読んでいます。
そして、私達が提案しようと思っていた形状は↓これなんですが、


鎌倉市建築基準条例には↓こうありました。

(長屋の構造等)
第 20 条
3 長屋の各戸の界壁の長さは、4.5 メートル以上としなければならない。ただし、当該建築物の 構造若しくは形状又は周囲の状況によりやむを得ないと認められる場合は、その界壁の長さを 2.7 メートル以上とすることができる。

「鎌倉市建築基準条例」より

界壁の長さというのは※部分の長さのことなんですが、この計画ではその界壁の長さが3mしかなく、4.5m以上にならない。ん?ダメじゃん。しかし、ここで諦めてはいけない!法文や条文で大事なのは「ただし書き」です。これはホント。そして当該条文には「形状の状況によりやむを得ないと認められる場合」という但し書きがあるじゃないですか!今回の敷地は変形地、但し書きが適用できるのでは?速攻鎌倉市の建築指導課に赴き聞いてみたところ、我々の計画案の形状はNGだと。
えっ?何言ってるんだろう?敷地形状から考えて4.5m界壁絶対とするより、今回の計画案の形状の方が良いに決まってるじゃないか!なんてナンセンスな、、(この辺りの思い込み、時として大事かなと思います。直ぐ引き下がってしまうと、つまらない計画となってしまったりするので。)
そして、私のとった次の行動は「他の確認申請機関に行って聞いてみる」です。まぁ確認申請機関も法文や条文上判断つきかねる部分については、建つ場所の行政機関に直ぐ問い合わせをかけちゃうんですが、その判断のつきかねる度合いが確認申請機関の主事によって違います。これまでの経験で私は知っていたんですよ。何でもかんでも行政に確認しちゃうのではなく、きちんと法文・条文から解釈を行なってくれる主事さんのいる確認申請機関を!
早々にその主事さんのいる確認申請機関に駆け込み、見解を伺ってみたところ、「条文にある『やむを得ないと認められる場合』とは誰が認める場合なのかを行政に確認し、それが確認申請機関の主事でも良いのであれば、僕なら通しますよ。」との回答が!!早速鎌倉市に問い合わせたところ、確認申請機関の主事の判断で良いと!無事に今回の形状で建てられる事となりました。
不思議ですよね、このやり取りをしただけで、可能な形状が変わる訳です。つくづく、言われるがままを信じてはいけないな、複雑な法文・条文については自分で読んで解釈して臨まなければいけない、と感じました。ま、主事さんが教えてくれたんですけどね。他力ですが、なんとか出来ました。

今回のこのケース、行政がダメと言っているものに対して、民間が抜け道作っているんじゃないの?と思われる方もいるかもしれません。ですが、私が今回お願いした主事さんを大変尊敬している所以の1つは、何故その法律や条例が作られたかまでの知識を持っていらっしゃり、そもそもの問題が解決されているかどうかを確認した上で判断をしてくださるところなんです!
そもそも界壁の長さが必要だというのは、かつて長屋と言って建てた建物を完成した後にブッタ切って戸建ての住宅に変えて売る、なんて事があったようなんです。それを避ける為に、建物を切り分けにくくするよう、第20条3のような規定が設けられたらしいのです。そもそもの規定が作られる事となった問題が今回の我々の計画で発生しないかどうか、それを確認した上で判断を下してくださった訳です。

建築基準法は天下のザル法と言われる事もあるようですが、解釈が分かれる法文の多い法律であり、条例も同じくです。是非、理不尽なルール(というか、理不尽な解釈)にぶち当たった時に闘える設計士を選んで頂く事をオススメします!その時にNEWESTの名前を思い出して貰えると良いなーなんて、、今回はここまでとしておきます。それでは、また次の投稿で。


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