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曲を書かないと「0%」、曲を書くと「1%」

こちらの記事では、コンペに勝つ為に四苦八苦した作曲家時代を書きましたが…


「コンペに落ちまくったからわかったこと」...それは私にとっての財産になりました。

いわゆる反面教師ですが、できない自分がいたからこそ、その苦しさもわかるし、そこから「正解」に持っていける方法も少しづつですがわかるるようになったからです。

これから作曲家を目指す人

既に作曲家であるが思うような結果が出ていない人

の微力ながらお役に立てればと思い、今回は、自分なりの「コンペ必勝法」を書かせて頂きます。


本気で聞かない


通常、曲発注はレコード会社から発せられ、作家事務所のディレクターやプロデューサーを通じて作曲家に情報が来ます。

「●●の次期シングル表題曲」「▲▲が歌う●●系列ドラマ主題歌」など、歌うアーティストも求められるものも様々です。また、コンセプトも、

・「この曲の感じで」と、パクり推奨的コンセプト
・「ロックな感じで」と、ジャンル先行的コンセプト
・「ふんわりした感じで」と、抽象的コンセプト
・「好きなように書いて」と、丸投げ的コンセプト

...レコード会社のディレクターやプロデューサーによって様々。

まずは、このコンセプトやリファレンスをどう自分自身でどう理解するか、どう昇華するかが大切です。


私の経験から言えることは…

「コンセプトやリファレンス内容は本気で聞かない」

ということ。

なぜなら「採用曲」を聞くと、必ずしもコンセプト通りにはできていない場合が多いからです。

私自身の「採用曲」を顧みても、ほぼほぼコンセプト通りの曲ではなかったです。


コンセプト通りに作ろうとするより、「ワクワクする曲を作ろう!」を優先させるべきです。

作曲をしている時間は「マイワールド全開」の至福な時間、

コンセプトばかりを考えていると、「こうでなければいけない」と限定されてしまい、自分自身の「良さ」を出せないことが多いからです。


プロが作ってくる曲なので、「いい曲」が集まってくることでしょう。

そんな中で必要なことは「あなたの曲」なのです。

ひとことで言えば「オリジナリティ」なのですが、なにが自分の「オリジナリティ」なのかも、自身ではなかなかわからないものです。

「オリジナリティ」があるとしたら、

あなたの「頭の中に浮かんだもの」だと思います。


躊躇せずに、それを「実行」してみください。

躊躇せずに、その音を打ち込んでください。

躊躇せずに、そのメロディーを歌って録音してみてください。

私は、ディレクターから「この曲の感じで」という発注をもらった時、あえてその曲は聴きませんでした。

「確かこんな感じだったっけ」くらいに、その曲を頭の中でイメージするくらいに留めました。


プロの耳で聞くのですから、

「聴きすぎるくらい」に聴き

「再現しすぎるくらいに」再現してしまう

危険性があるからです。


同じ発注を受けた作曲家たちも同じように、「聴き」「再現している」はずです。

つまり、同じように質の高い、そして同じような曲になる可能性が高いのです。

ちなみに、ディレクターの中には、「プロの耳」では音楽を聴いていない人も多いです。

それは、作曲家ではない人、敢えてプロ過ぎない感覚を大切にする人

…色々あると思いますが、少なくとも私は「プロの作曲家の感覚」では

ディレクターからのアドバイスを本気では聴かないようにしていました。


迷ったときは


作曲という行為は「選択」の行為でもあります。

ここは、どっちのコードの方が良い?どっちのメロディが良い?

…常に選択を迫られます。


私はそんな時、「迷ったらシンプル」を心がけていました。


なぜなら、ディレクターは

・1回しか聞いてくれない

・1番しか聞いてくれない

から。

いざ商品になったとしても

1回で覚えて貰えない曲は「売れない」からです。


また、作曲している時にスッキリしない箇所があるとします。

そんな時、

・これはアレンジを変えるといいかもしれない

・音色を変えるといいかもしれない

…などと思ったことはありませんか?

私も「希望的観測」で、その思ったり、そう思いたかったことはありましたが

結果は「NG」、うまくいったことはありません。


後に自分がアレンジャーとして他の作曲家の曲をアレンジするようになりましたが、

「良い曲」はアレンジは頑張らなくても良く

「ちょっと?の曲」はアレンジを頑張らなければいけなかった

という経験を得たこともあり、

やはり「作曲」という作業のなかで「作曲」は完成されるべき

すなわち、迷いのないものにすべきだと思いました。


「後でなんとかなる」は、なんとかなりません。


苦戦したときは


私の経験上、オススメなのは「2曲同時進行」です。

上記の記事でも記したように、一晩に3曲作り、3曲とも採用されたことがありました。この時、複数を同時進行することで、

・迷っている時間がない状況が作れる

・1つの曲で迷ったら他の曲に手をつけて、そこで得たインスピレーションを基に、また他の曲に取り組むことができる

ことが、結果一晩に作った3曲が全て採用、という成功例ももたらしてくれたと思います。ガンダムの主題歌もそうでした。


曲の色が大事


今や伝説のライブハウスになりつつあるのですが、渋谷警察署の隣に「アンコール渋谷」というライブハウスを経営していました。

アンコールーラスト
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(back numberの清水依与吏さんにも、デビュー前に出演して頂いていたようでした。)

メジャーデビューを夢見る若いアーティストが毎晩のように出演していたのですが、私はオーナーという立場ではなく、ひとりのお客さんとして客席からライブを観るようにしていました。


「この人はいいな、この先楽しみだな」と思えるアーティストのライブでは「ステージの照明」と「曲のイメージ」がマッチしているのです。

1曲めは青、2曲目は赤、3曲目は紫、と曲ごとに色のイメージが変わる人

全曲青の人

いずれにせよ、楽曲と「色」のイメージが一致していました。


また、私は私のボイストレーニングの生徒さんのために「作曲レッスン」も行なっています。

バークリー音楽大学での理論をもとに「誰でも楽しく曲が作れる」ようにオリジナルのテキストも作成し指導しています。

そんな中、理論より私が生徒さんに「熱く」指導しているのは「色」です。

「この曲をライブで歌っている時の照明は何色?」と。

ライブを観に来ているお客さんは、音楽の専門家ではなく、またひとつひとつの歌詞を聞き取っている訳でもなく

「なんかいい」「好き」...など大きなイメージで、初めて聴く曲を捉えています。

その「大きなイメージ」の中心的な役割を果たしているのが「色」

作曲家時代は気付けていなかったことを、ライブハウスのオーナーになってリアルなお客さんの立場になって気づけるようになりました。


曲は音符と歌だけでできているのではありません。

今作っている曲が、ステージで歌われる時には「何色」の照明が降り注いでいるのか

…その曲の最終的なイメージを強く持つことをオススメします。


音楽に走り過ぎない

私は決して優等生な作曲家ではなく、むしろ「落ちまくっていた作曲家」だったので、役には立たないかもしれませんが、今回のこのアドバイスで少しでも気持ちが楽になり、次の曲作りにやる気が出てもらえると幸いです。


最後に

曲を書かないと「0%」

曲を書くと「1%」の成功率

私は、「1%」の成功率を信じて、機動戦士ガンダムの主題歌が出来上がったので、皆さんの「1%」の成功が実ることを祈っています。


小泉  誠司

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