見出し画像

「食わず嫌い」から「大好物」に

突然ですが
皆さんは「食わず嫌い」から「大好物」になったものはありますか?

私はあります。
音楽の話ではありますが、

「渋谷系」の楽曲

社長の策略?により私自身がメジャーデビューすることになったユニット「will to love」のコンセプトでした。

▼その時の詳しい話はこちら▼

社長からそう言われて「えー、いやだ!」

私はロックが好きでだったので、「渋谷系」という何となくオシャレな感じの音楽性がどうしても好きにはなれませんでした。


正しく言うと得意ではなかったのです。


なので、作るデモテープ、作るデモテープ、社長からはダメ出しをくらい、途方にくれました。

デビューできるのは有難いのだけど、よりによって苦手の音楽性とは…

好きなロック系ならノリノリでできるのに…

好きな音楽をやっているはずなのに、どんどん負のスパイラルに陥っていく...

渋谷系と言われるアーティストを聴けば聴くほど、わからなくもなっていきました。

運命の地で吹っ切れた瞬間


そんな時、事務所の別のアーティストのプロモーション撮影のために、アメリカはLA(ロサンゼルス)に行くことになり、私も社長の通訳兼運転手として同行することになりました。


バークリー音楽大学を休学して西海岸に移り、「Musicians Institute」に1年通っていた時以来のLA、

「作曲家になりたい!」という決意を固めたLAという地に戻ってきたのも何か運命的

それも、「渋谷系」がうまく作れず、スランプに陥っていた時に。


でも、そんな音楽での悩みは、不思議なことにLAの天気や開放的な雰囲気の中で晴れていく感じがしました。

そして、なにか大事なことを取り戻せた感覚がありました。


いわゆる「ふっきれた」だと思います。


帰国後、「渋谷系って何だろう?」ともう一度真っ白な気持ちで聴いてみました。

そうすると、今まではあまり好きではなかった「軽さ」が、なんだか心地よくなってくるのがわかりました。

うっこれって、なんかに似てる ...「あっ、フュージョンだ」

私は高校時代から「Tスクエア」や「カシオペア」などの「フュージョン」が好きで良くコピーをしていましたし、バークリーや「Musicians Institute」でも、「フュージョン」をよく演奏していました。

「インスト」としては、16ビートを基調にした音楽は馴染み深く好きでしたが、歌は歌、ギターはギター…というように別々な音楽としてやっていたので、どうしても「渋谷系」を「フュージョン」と一緒だという割り切り方ができないでいたのです。

でも改めて聴いてみると、私が好きだったフュージョンじゃないですか...なぜ今まで気づかなかったんだろう。

いわゆる固定概念、「食わず嫌い」だったのでしょう。

良く噛んで味わって食べてみると「美味しいじゃないですか!」

それからは、今までの不調が嘘のように、アイデアは湧いてくる湧いてくる...

社長にも「吹っ切れたな」と言ってもらい、曲も気に入って頂けるようになりました。

それがデビュー曲「SA・KU・SE・NN開始(日テレ系「うるとら7:00」ED)」でした。


豪華ミュージシャンで創り上げた「渋谷系」


当日はコンピュータによる「打ち込み」全盛時代でしたが、「will to love」では、生演奏の曲を多く入れました。
他のアーティストのプロデュースも掛け持っていたので、「打ち込み」でアレンジする時間がなかった、という事も理由ですが、
それ以上に「生の音楽をやりたい!」という思いがあったからです。

こんな時の強い味方は、バークリー音楽大学時代からの仲間です。
だって渋谷系は「フュージョン」や「ジャズ」からの派生…私の中ではそう成り立っていたので
そうなると、バークリー時代の凄腕ミュージシャンしかいないでしょう…と。

在学中から仲の良かったベーシストの納浩一さんにレコーディングをお願いすると快く引き受けてくれました。
彼はバークリー時代から、ピアニストの小曽根真さんと一緒にプレイするなど活躍、帰国後はジャズ界の巨匠の渡辺貞夫さんのバンドに入るなど、一流ミュージシャンとしての道を歩んでいたのですが、そんな多忙な中引き受けて貰えて本当に嬉しかったです。

納浩一さん以外にも素晴らしいミュージシャンが集まってくれました。
同じくバークリーで小曽根真さんと共演していたドラマーの小野江一郎さんとギタリストの道下和彦さん、
そして普段のレコーディングでお世話になっていたピアニストの籠島裕昌さん。


小野江さんは現在はフランス在住で活躍の場を世界に
道下さんは著名アーティストのサポートやギター教則本の執筆でも著名に
籠島さんはピアニストとしては勿論、作編曲家としても大活躍
…とその後も素晴らしい活躍をされている人たちばかりで、本当に素晴らしい演奏で、今思っても信じられないほどゴージャスなレコーディングで、プロデューサー冥利につきました。

歌詞カードに掲載された豪華ミュージシャンのクレジット


結果的には「will to love」の作る音楽は、事務所が目指していた「売れ線」ではなく、残念ながらセールスには結びつきませんでしたが
事務所の他のプロデューサーや若いスタッフ達からは「この事務所の中で一番好き」と言って貰えていたり、素晴らしいミュージシャンの力も借りて「GOOD MUSIC」は作れていたかと思います。

その後、社長からは、他のアーティストのプロデュースをする際には「will to loveのあの曲みたいな感じで」と言われたり、その後の私の「得意分野」になっていきました。

あれほど嫌いだった「渋谷系」が、まさかその後の活路を見出してくれるとは、思いもよらなかったです。

「食わず嫌い」から「大好物」に。


この経験がその後の人生においても多くのチャンスを作り出してくれました。

「この人、苦手」

「これ、難しそう」

「これ、嫌いかも」

… 一見ネガティブに見えるものが、実はポジティブに繋がる可能性を秘めていることを学びました。


逆に「得意」「好き」「楽」…が必ずしもベストの結果になるとは限らないということ。

今難しいと思えるということは「伸びしろ」...「あなたが成長できる時ですよ!」...むしろ「チャンス」ということだと思います。


答えを引き出すには、同じ方向ばかりでなく、別の方向から考えると見えてくることも学べました。

「渋谷系」を「歌モノ」と決めつけていた時は答えが見えず

「渋谷系」を「インスト」と同じと気づけた時、答えが見えてきたように思えたからです。

たとえば「英語を話す」ことに似ているかもしれません。

英語の単語や表現がわからなかったら、「英語」にとらわれずに、その「元の日本語」の別の言い方を考えると解決できると。

「発想の転換」ということになると思いますが、答えは意外に身近に、そして「押してもダメなら引いてみな」...シンプルなんですね。

今までに食べたことのないものを食べるには勇気がありますよね。
同じように経験したことがない事に挑戦するにも勇気が要る事です。

しかし、その先にチャンスや成功が待っているとしたら...

「食わず嫌い」から「大好物」

とりあえず食べてみるのも良いかもしれません。

案外いけるかもしれませんし、もしかしたら大好物になる可能性もあるかもしれません。

美味しいか美味しくないかは、しっかりと食べてみてから決めることをオススメします。


小泉 誠司


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?