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結婚届を出しにいったらパンツまでびしょ濡れになった話

20年前の7月7日のことである。

7月7日と言えば、彦星と織姫が年に1度だけ、天の川を渡って会える大切な日。しかもぞろ目で覚えやすい。さらにその日は、朝からすっかり晴れていた。4階の部屋の窓から広がる風景は、夏の始まりのキラキラした光につつまれていた。

今日は結婚するのにもってこいの日だ。

というわけで、夫になる人と妻になる人のわたしは、結婚届を出しに近所の区役所の分室に出かけた。それは、当時住んでいた(ぼろい)マンションから直線でまっすぐ、10分ほど歩いたところにあった。わたしと夫は手をつないでいたと思う(たぶん)。まあ、ウキウキですよ。なんせ、結婚するわけだし。

家を出て100メートルくらい歩いたとき。ピカピカの晴れだったのになんだかひゅ〜っと冷たい風が吹いてきて、急に頭上が曇り始めた。

あれ? これって、なんかやばいやつ? もしかして、降っちゃうの? 

当時はまだ、ゲリラ豪雨という言葉は無かったが、それの前兆であることはすぐにわかった。

そこでどうするか。

普通は家に引き返すよね。そんで、傘を持って出るとか、時間をおくかするよね。まだ100メートル歩いただけだし。別に誰かと待ち合わせしているわけでもないし。

でも、若くて甘くて面倒くさがり屋の二人は、「まあ、まだ降んないよ。降ったら走ればいいじゃん」で意見が一致する。引き返して出直すのも、なんか負けたみたい(何に?)でイヤだったし。

歩き続けるうちにどんどん暗くなっていく空。そして、道のりの半分まで来たとき。

ついに、ボツッ…ボツッ…。ボツボツボツボツボツボツボツボツ…ばしゃばしゃばしゃばしゃと、ものすごい音を立てて大粒の雨が降り始めたのである。

走った走った。結婚届が入ったトートバッグを胸に抱えて走った。しかし、ものの1分もかからずに、二人ともびしょ濡れである(ここのBGMはもちろん岡村ちゃんの“びしょ濡れでいい〜じゃない手をつないで歩きたいい〜〜”『ステップ UP↑』でお願いします)。

区役所の分室に着いた時には、ほんとーにっ! 頭の先から足の先までびっしょ濡れ。薄い夏生地のワンピースを着ていたわたしはパンツまでびしょびしょになり、裾からこぼれる水滴で、二人が立っているところに水たまりができてた。

これには区役所の人もビックリ。ていうか、「おめでとうございます」が半笑い。


結婚届はトートバッグに守られて無事だった。よかった。


滴をぽたぽた落としながら、国民健康保険の説明やらなんやらを聞くのは、なかなか面白かった。

しかしこれで話は終わりではない。

帰り道ではすっかり雨は上がっていた。まあ、夏の通り雨だからそうだよね。あそこで待てないうちらがバカなんだねと笑い合う。で、帰りは一本隣の道を通って 帰ってみようということになった。この辺あまり来ないし。

そしたらね。

その道、濡れてないの。

なにこれミステリー?

☆ ☆ ☆

雨風を司るのは、龍神様だと言う。
わたしは、龍神様からお祝いしていただいたのだ…と思っている。

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