コーチングでの「視点が変わる」≒「変容的学習」。10プロセスを解説(中編)
コーチングが提供する体験として、「視点を変える」というものがあります。これは変容的学習と類似点が多く、知ることでコーチングの役に立つことも多いでしょう。
ここでは、前編に続き変容的学習をより具体的に紹介していきます。
変容的学習とは何か?
「変容的学習」は、大人の学習(成人学習)のひとつで、米コロンビア大学の研究者ジャック・メジローが提唱しました。まず、その定義から見ていきましょう。
少し長い定義ですね(汗)
あえば簡単に表現するならば、「考え方の土台をより良いものに変える学習」とでもいえるでしょうか。
人は、人生での様々な経験を得て自分なりのものの見方、世界を解釈する枠組み(frame of reference)をつくっていきます。ただ、今の枠組みでは上手くいかない事態に直面すると、人は悩み考え、より確かな思考枠組みを作り直します。そこに変容的学習が起こっています。
永井健夫 (1989)の例を見るとより具体的にイメージができるのでご紹介します。
この例のように、環境や役割に変化があるケースでは、考え方の枠組みを変える必要にせまられることがあります。たとえば、コーチングのクライアントが転職したり、引っ越しをしたり、マネージャに昇進したりと様々な変化のケースがあるでしょう。
その時には、変容的学習をおこすことで、より変化に対応し活躍できる状態に移行することができます。コーチの役割として、その変容的学習を促進することがあると思います。
省察的対話とコーチング
メジローも「省察的対話(reflective discourse )」が変容的学習を促進すると述べており、この定義はコーチングに通じるものがあります。
一方、ICFによるコーチングの定義は次の通りです。
両者の定義は、「前提を評価する」ー「創造的なプロセス」、「代替的な視点に開かれる」ー「自身の可能性を公私において最大化させる」というコンセプトベースで符号しているように感じます。実際に、変容的学習のハンドブックにおいても、コーチングが1章をさいて取り上げられています。
では、その変容的学習はどのようなプロセスでおこるのでしょうか。メジローが下図のような10プロセスにまとめています。
次のコラムでは、この10プロセスについて詳しくみていきます。
この記事の前編はこちら
参考文献
Mezirow, J. (2000). Learning to Think like an Adult. Core Concepts of Transformation Theory. In J. Mezirow, & Associates (Eds.), Learning as Transformation. Critical Perspectives on a Theory in Progress (pp. 3-33). San Francisco, CA: Jossey-Bass.
永井健夫 (2007). 変容的学習と「成人性」の関係をめぐる試論. 大学改革と生涯学習 : 山梨学院生涯学習センター紀要. 第11号 107-116, 2007-03-28.
常葉-布施美穂 (2004). 生涯学習理論を学ぶ人のために―欧米の成人教育理論、生涯学習の理論と方法. 世界思想社
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