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気軽な「ほしい物リスト」公開の文化は日本だけかもしれない?(2021年10月時点情報)

■はじめに

※この記事は2021年10月時点での聞き取り情報をまとめたものです。

 イラストレーターさん等がAmazonの「ほしい物リスト」を公開し、誕生日などにファンの人がリストのものを購入してプレゼントするという贈り物文化が、日本のインターネット上のイラストコミュニティに存在します。
 これらと同様の「ほしい物リスト」の文化や風習は、海外のネット上のイラストコミュニティにも存在するのでしょうか、というご質問を頂きましたので、ちょっと海外の友人に尋ねてみました。結論から言うと、日本のイラストコミュニティに見られるような「ほしい物リスト」の文化は、ほぼ日本特有のものであるという事が、自分の身の回りからは言えそうです。

■だらだらと説明

 まずアメリカやイギリス等の英語圏の友人から。Amazonのほしい物リストを公開しているアーティストを見たことがあるといったお返事をいくつか頂いたものの、それは数少ない事例であり、ほぼ全員から日本のような一般的な選択肢となっていないという回答を頂きました。また、イタリアの友人から、Amazonのほしい物リストの問題点として、Amazonは各国別に独立している為に、外国の作家のほしい物リストから贈り物をするにはその国のAmazonに登録する必要がある煩雑さがあることを、シンガポールの友人からは国際郵便で海外発送になった場合の高額な送料の説明を頂き、「同じ国内のイラストレーターさんに対し」「その国で大勢の人が使っている、利用しやすいネット通販サービスで」「お互い匿名のまま発送が可能で送料も安い」というかなり限られた状況・環境下においてインターネットの贈り物文化が実現できる(そして、それを満たすのがAmazonのほしい物リストである)という印象を受けました。
 そしてほしい物リスト公開が広まらない原因について上記の環境・状況的な問題だけでなく、どこか 「はしたない行為である」 という風潮や雰囲気がある、といった返答もいくつかの方から頂きました(その原因となっていそうな推測も伺ったのですが、ちょっと表では書けません……)。ただし、欧米圏ではKo-Fiという「コーヒー一杯分程度」の少額投げ銭サービスが普及しており、ライブ動画配信サービス「Twitch」の投げ銭機能も盛んに使用されています。贈り物は物質じゃなくて金額お金がいいよ! というのが欧米や英語圏の友人から多く頂いた回答でした。やはり肉中心に食ってる文化圏の人達は戦闘力が違うぜ!(やめなさい)

 さて、それでは日本と同様に単一言語・単一国家内で大きな市場が存在し、ネット通販サービスが充実している中国や韓国はどうでしょう? 微博で中国の方々にお伺いした所、頂くお返事は一様に「没有(無いです)」でした。サイン会の時などにプレゼントを贈ったりする事はあるものの、ネット上での「ほしい物リスト」の公開は個人情報の問題や、「はしたなさ」に対する炎上リスクなどが存在する他、「ファンの購買力に差があるため、金額での比較が発生しやすい」といったことを懸念する意見もありました(私見ですが、この購買力の問題は中国以外にも存在するのではないでしょうか)。
 韓国の方からは、ネットアイドル的な人がファンから贈り物を募る事例を聞いたことがあるというお返事を頂いたものの、他の国の方々同様に「ほしい物リスト」の文化はほぼ存在せず、ネット上を中心に活動されているイラストレーターさんからも、見知らぬ人からの贈り物は危険なので受け取らない友人が多い、という回答を頂きました。しかしながら、「ゲームアイテムがコミッションの支払い方法の一つになることもあるよ」「電子ギフト券の『ギフティコン』を買って送るファンは居るかもしれない」ということで、『同じ国内のイラストレーターさんに対し』『その国で大勢の人が使っている、利用しやすいネット通販サービスで』『お互い匿名のまま発送が可能で送料も安い』を満たす電子財であれば、匿名ユーザーからの贈り物として許容範囲内となるかもしれません。

 この電子ギフト券については、スターバックスのeGiftなら欧米の方はどうだろう? ということで何名かの方に追加質問をさせて頂いた所、「それならまぁ良いんじゃないかしら?」というお返事を頂きつつ、イタリアからは「イタリアにはスターバックスが一店舗しかない」「そもそもスタバはイタリアの伝統的なコーヒーショップのイミテーション。だからイタリアでは流行らない」「しかしミラノにあるイタリア唯一のスタバは超デカい」「イタリアにはガラスのコップじゃないとコーヒーを飲まない奇妙な人達がいる」という内容のめちゃ長いDMが送られてきました。まあ、イタリア人のコーヒーへの思い入れは凄まじいものがあるからな。(やめなさい)

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※いにしえの超有名Flash動画であるBruno Bozzetto氏作「EUROPE vs ITALY」より引用。より慎重で入念な確認の為「これ?」と訊いた所、イタリアの友人曰く「それ」との事。

■おまけ

□頂いたお返事の中で印象に残ったお返事をいくつか紹介させて頂きます。

・(イタリア)親戚や面識ある友達間などプライベートではAmazonの「ほしい物リスト」を使うことがあります。インターネット上の友人に贈り物をしたことがありますが、その時はインターネット上の友人と現実世界で面識のある人が取りまとめ役となって、その人にPaypalで送金してプレゼントを渡してもらう、という手順をとりました。

・(イタリア)少し違いますが、プレゼント交換企画が存在するイベントがあります。プレゼントが主催者によってランダムに振り分けられ、参加者同士でプレゼントを交換し合うというものです。プレゼントを受け取るまで誰が送ったかはわかりません。絵を描いてプレゼントするアート系コミュニティや、ポケモングッズを贈り合うポケモン収集系のコミュニティなどで見かけたことがあります。

・(韓国)贈り物とは少し違うのですが、推しの対象が良い結果を達成したので、ファンがRTでサポートしてくれた人の中から抽選して、当選者にギフティコンを配るという文化がツイッターで割と定着しています。

・(中国)お誕生日にイラストレーターさんがおめでとう絵を送ったりしますね。

・(中国)有名なイラストレーターさんにはネット広告の営業が来ます。広告は例えば飲料品、電動歯ブラシ、スキンケア等で、気になる製品であれば自分が購入してコンバージョンに寄与することで、更なる広告を呼び込みイラストレーターさんの副収入としてサポートします。

□また、筆者個人の経験として、このような贈り物を海外のイラストレーターさんに行ったことがあります。

・海外のあるイラストレーターさんがコミッションの支払い方法について、一般的なPaypalの送金に加えてFLCLのカンチのフィギュアを提示されていたので、真弓、やるよと1カンチを提示。現在1カンチは「フリクリ アーカイブス」と共に太平洋上をどんぶらこ。

・引っ越しの可能性が出てきたので、部屋を徹底的に綺麗にしないといかんということで、読み終えた大量のアニメーターさん同人誌を海外の仲の良い( お互いの本名や住所を明かしても問題ない関係の)イラストレーターさんに頼む受け取ってくれと箱で送りつける。中国・カナダ・ブラジル・イギリスなどに着弾。SUSHIOYUTAKA NAKAMURATRIGGER! といった反応を頂く。

・それ以外にも、コミケで海外のイラストレーターさんの欲しい同人誌をおつかいしたり、「この本余分に買っちゃったんだけど、もしよければ……」という事があったり。

レバノンの爆発事故で、レバノンのイラストレーターさんが「自分は無事なのですが、以下に救援活動を行うNGOが……」と投稿されていたので、NGOのページに掲載されていたほしい物リストからいくつか――というのはちょっと違いますね。

・とはいえ、基本的にコミッションを依頼したり、依頼したコミッションにチップとしてちょっと支払額を増やしたりするのが自分なりのサポート行為の基本です。イラストレーターさんはお小遣いがちょっと増えて、自分はmoet-moetなケモ絵が増える、イエーイ。

■自分なりの結論

金最高 Money is the best
・電子ギフト券でもまぁいいよ
・住所とお名前を交換しあえる関係だったら贈り物しても大丈夫そう
・ロシアはロシアでロシア語圏ネットコミュニティがあるけど……でもやっぱり、金じゃないかなぁ?

 ということで、ツッコミお待ちしております~。


※Special Thanks!
アメリカとイギリスとシンガポールとインドネシアとアルゼンチンと韓国と中国とメキシコとイタリアの友達

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