【劇場めし 第4回】池袋（&渋谷）の十割蕎麦【池袋店閉店】

「劇場周辺の、おすすめのご飯屋さんをご紹介！」するこのコーナー。今回は池袋界隈を選びました。池袋といえば、東京芸術劇場、あうるすぽっと、サンシャイン劇場、シアターグリーン、等々、公共や民間、そして客席数を問わず、大小様々な劇場にアクセスできる都内随一の演劇タウンだと思います。街の規模に比例するように魅了的な飲食店も多く、このコーナーで定期的に取り上げたい地域のひとつです。

ご紹介するめしは、嵯峨谷の十割蕎麦。嵯峨谷は立ち食い蕎麦愛好家によく知られた存在で、そのコスパの高さには定評があります。池袋店は東口から徒歩2〜3分程。僕はシアターグリーンへ行く際に店頭を通ります。移動中に嵯峨谷の看板を見かけて「食べたいなぁ」と思うのですが、店内を覗くと常に満席で、諦めることが多かった。ところが、昨冬に店先を通りかかると、先客はいるもののいつもの混み具合ではなく「これなら！」と思い、久しぶりに十割蕎麦を堪能しました。

その時は「食べられてラッキー」程度に考えていたのですが、その後、ネット情報で都内の嵯峨谷の各店舗が立て続けに閉店したことを知ります。閉店理由などは分かりませんが、コロナ禍が続くご時世、好きな飲食店を応援したい気持ちもあり、今回は嵯峨谷を選びました。応援の気持ちと、まぁ、美味い蕎麦を紹介したい気持ちと。

やや余談ですが、僕が初めて嵯峨谷へ寄ったのは、池袋店ではなく「渋谷東急本店前店」。その名の通り東急の近隣にあり、Bunkamuraシアターコクーンでの観劇前に立ち寄り、めちゃめちゃハマリました。その後、観劇の度に訪れて、観劇前はもりそば、観劇後ならもりを二段に重ねた二枚もりと生ビール（プレミアムモルツ！）を頼んでいました。

話を池袋店へ戻します。先程も書きましたが、池袋駅東口にあるので、東口方面に位置する劇場ならどこへ行くにも立ち寄り易いです。立ち食い蕎麦屋ですが座って食べられます（むしろ立ち食い専用のスペースはありません）。蕎麦、うどん、ご飯ものとメニューも豊富。値段もお手頃なので、色々試して自分好みの一品を探すのも一興かと。渋谷店は店頭に「人気メニューランキング」を貼り出しているので、それを見て選ぶのもアリ。他所の立ち食い蕎麦屋であまり見かけない「あじ御飯（ほぐした鯵の身が乗ったご飯）」等も美味しいです。

僕がオススメする一品は、やはり「もりそば」。定番にして嵯峨谷の王道。太麺か細麺を選べる場合は、蕎麦の風味をより感じやすい太麺を推します。ごつごつした十割蕎麦ではなく、スラリと整えられた都会的な十割蕎麦。そして何より、蕎麦の喉ごしと風味を楽しんで下さい。あくまで一個人の好みの話ですが、僕は、勢いよくすする方が鼻の奥に香りが届きやすいことや、箸でつまんだ蕎麦を全部つゆにつけず、半分程度つけてすすると、蕎麦の風味が先行した後、つゆの出汁の風味が追いかけてきて、口の中で混ざり合いすごく美味しいことを、嵯峨谷で体験し、嵯峨谷で学びました。そこから他所の蕎麦屋にも興味を持ち、お気に入りの蕎麦屋さんを数店見つけました。僕に十割蕎麦の魅力を体感させてくれたのは、嵯峨谷です。

とにかくコスパが良いので試しやすいと思います。お店の外から覗いてみて、混み合っていなければチャンス到来！ 是非立ち寄って欲しい一店です。

文：園田喬し（演劇ライター・編集者・『BITE』編集長）

十割蕎麦 嵯峨谷 池袋店
東京都豊島区南池袋1-24-5 楽園タウン池袋
TEL:03-6907-0049

十割蕎麦 嵯峨谷 渋谷東急本店前店
東京都渋谷区道玄坂2-25-7 プラザ道玄坂1F
TEL:03-6416-4248