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感じて動くから、感動でしょ。(教育④)

前回、半年以上悶々としながら続けていた学校巡回から、より根本的な問題解決に向けたモデル校作りが始まったことについて書いた。

今回は、良いものを見てもらおうという事で、日本人学校と他の現地NGOを見学に行った時の事を書いていく。



日本人学校への偵察

モデル校プロジェクトも始まり、まずは首都の学校と地方の学校の2カ所をモデル校にすることにした。今までの巡回指導を減らしてモデル校の打ち合わせや資料作りなどの作業に時間を割いていった。

その中で、日本人学校を見学できる機会があったのでモデル校の校長先生とオフィサーを連れて見学に行くことにした。


海外の日本人学校と言っても、先生や授業内容は日本の学校とほとんど変わらない。施設もプールや理科室、図書館などもある。

初めて日本の学校を目にした現地の同僚たちは、目を丸くしてキョロキョロしていた。校内の綺麗さやパソコンを使った授業、掲示物など色々とメモを取っていた。


そんな中、今後キーマンになっていく首都の学校で校長をしているロトナは、先生の働きかけにも注目していて、先生の優しい口調子供一人一人に寄り添う姿勢、子供と目線を合わせていることなどを称賛していた。

しかし、ほとんどの先生やオフィサーが施設や設備の立派さに目が行き、結局は先進国の日本人だから、、という空気になっていた。


最初に見てもらいたい観点を伝えればよかったと反省した。


そして、ひょんなことから解決するための糸口を見つかった。


現地人運営のNGOから学ぶ

タイミングよく国連で働いている専門家とご飯を食べる事になり、話をしている中で評判のいい現地NGOが運営する小学校があるというので、紹介していただいた。

モデル校の学校目標やモデル校作りの参考になると思い、前回と同じメンバーを連れていくことにした。今回は、事前に先生の様子、教室内の様子、子供の様子など見学する際の観点別のメモ用紙を作り、そこに記入するようにした。


見学先の学校に着くと、私たちの学校より少し大きいコンクリートでできた校舎であった。建物や設備にお金がかかっている様子もなく、これなら私たちもできそうだと感じた。

教室は綺麗に保たれていて、清潔感があった。教具は、丁寧に使われている様子で整頓されて収納されていた。掲示物も必要なものが見やすく貼られていた。同じベンガル人が運営しているので親近感を覚えたのか、先生たちも熱心にメモを取っていた。


夜、ホテルで先生たちと観点別に書いたメモを元にそれぞれの気づきを情報共有した。首都の校長であるロトナは、特に教室の綺麗さに感心していて、同じベンガル人の運営している学校なのに素晴らしいと他にも彼女の気付きを共有してくれた。

前回の日本人学校とは違い、ベンガル人が運営する同じ規模感のNGOであったので、私たちにもできるという空気感が出ていた。


感じて動くのが、感動。

見学から帰ってきて、3日後にロトナのいる首都の学校を訪れた。
学校に向かっていると、いつもと違う違和感に気付いた。学校の外に子供の靴がズラーっと並べられていたのだ。それまでは土足で教室に入っていたのに、何があったのかロトナに尋ねると、彼女はこう言った。

見学に行った学校は、靴を脱いで学校に入っていたので教室が綺麗だった。教室が綺麗なら誰も汚そうと思わないので、教室を綺麗に保てるからやってみたの。

早速、見学で良いと思った所を取り入れていたのだ。
しかし、まだ定着していないので靴はバラバラに散乱していたので改善の余地はあるが、早速取り入れていたことに胸が熱くなった。


さらに授業を見ていると、黒板の右上に担当、教科、ページ数、日付を書いていた。これも今までなかったから驚いてロトナに聞いてみた。

子供たちが次の教科が何か分かるように授業の初めに書くようにして、ページ数も書けば、準備が遅れている子も分かるから真似してみたの。

見学時のロトナの感動は、本物であった。感じ取ったことを誰に言われるわけでもなく、自分でできる範囲の中で実践していたのだ。見学に連れて行って心から良かったと再び感情が揺さぶられた。

ロトナは、他の先生たちにも共有していて、他の先生たちも実践していた。
校長次第で学校は変わるというが、まさにその通りだった。

私たちは、現地の人が主体となってモデル校を作って欲しかったので、見学後の指示は出していなかった。


ロトナの行動に対して感謝を伝え、
一緒にモデル校を作り上げていこうという気持ちが強くなった。

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