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何もない

杪冬、地元。
溶けかけの雪、まだ咲かない桜の木、しがない暇つぶしの噂、潰れかけの居酒屋。
尽き果てたもの、または始まらないもの。
僕の求めているものはここにはない。
何もない。

上京、渋谷。
人で溢れかえるホーム、無駄に明るい電子掲示板、広告・宣伝、終わりの見えない工事、立ち尽くすドール。
尽き果てないもの、または終わりの見えないもの。
僕の求めているものはここにはない。
何もない。

ガラクタでは何も埋まらない、ガラクタは埋めるものであるから。
埋めて土を被せれば、何もなかったことになる。
あるものを無かったことに。
何もない。

埋められたものは這い出てはこない。
当事者、若しくは関係者が掘り起こさない限り。
けれどいつだって掘り起こすのは自分。
自分には何もない。

早春、光る画面。
複数の色の花びらが写る、見慣れたもの。
無かったことにできる場所。
終焉の終焉を迎える場所。

地元、何もない。
渋谷、何もない。
どの場所にも何もない。 
何もない。

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