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【翻訳記事】なぜ人類を信じているのか - ルトガー・ブレグマン曰く

以下の記事より翻訳。

オランダ人歴史家のルトガー・ブレグマン曰く、人類が実は相当に善であるという証拠は至るところに存在している。彼の言葉に耳を傾けてみると、気持ちはずっとマシになるはずだ。

「我々の中にはシニカルな人がいて、人間に対して悲観的な意見を持っています──人間というものはほとんどが悪人で、生まれつき利己的なのだと。けれど、研究結果は逆の見方を支持しています。現在の我々に至るまでホモサピエンスが繁栄してきたのは、適者生存によるものではありません。人類が最も優しかったからです。」

これは、ルトガー・ブレグマンが2020年のベストセラー『希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章』で示した命題だ。ブレグマンは、自身が言うところの"悪しき科学と厭世的な哲学者に影響された冷笑的な見方"の誤謬を暴く研究を次々に行ってきた。長きにわたる歴史が指し示しているのは、我々は種族として善意と協調性を持つということ。そして、本物の科学が経済学や心理学といった分野についての研究者の見識をアップデートし変化させているのは今しかないということだ。

ブレグマンはこの他に4冊の著書を上梓しているが、彼について最も知られていることといえば、2019年にスイスのダボスで行われた世界経済フォーラムでの出来事かもしれない。ブレグマンは金持ちの出席者たちを税金逃れ呼ばわりし、この発言が後にバズったのだ。だが、彼の著書と歴史研究はさらに革命的である。人類が善であると信じ、また気持ちだけでなく毎日の生活が良くなるはずだと信じるからこそ、あえてラディカルであろうとするのだと彼は語っている。これは一種のプラシーボ効果である──人生についての見通しが、文字通り生活の見通しに影響するのだ。

2020年が終わった直後、なぜ今なお人類に信頼を託しているのかについて、ブレグマンは自身の見解を共有した。


冷笑的で悲観的になるのはとても簡単なことなんです。パンデミックが起こった最初の数週間に人々がトイレットペーパーを求めて殺到しだしたときなどは、特にね。けれど、我々が本当に注目すべき真のニュースは、協調と連帯の爆発的な広がりのほうです。ウイルスの拡散を食い止めるため、世界中の圧倒的多数の人々が極めて急速に自らのライフスタイルを適応させていったんです。

何百万もの子供たちが、学校で『蠅の王』を読まされています。これって、すごくシニカルな小説ですよね。ええ、実例が存在するというのも判明しています。1966年、トンガ出身の6人の少年が冒険のためにボートを借りたのですが難破し、アタという島に漂着したのです。驚くべきは、どういうわけかこの10代の少年たちが15か月もの間うまく生き延びていたということです。ついに救出されたとき、彼らは元気そのものでした。彼らは健康で、互いに最高の親友であり続けました。つまり、現実の『蠅の王』は友情と柔軟性と希望の物語であるということです。

私が自分で考える生き方のルールのひとつに、疑わしきときは他者を信じよというものがあります。統計的にいって、ほとんどの場合はこれでうまくいくでしょう。心理学者が非相補性効果と呼ぶものからいっても、そうすべきです。これを簡潔にまとめると以下の通りです。もしあなたが私に害をなしたり敵対するなら、私は善意でそれに応じます、ということ。(私に対して)ネガティブであり続けるのは非常に困難でしょうね、振る舞いというものは──善かれ悪しかれ──伝染するものですから。それでも、不信感に満ちた人生をずっと送りたいと本気で思いますか?そんなの合理的じゃありません。代償が高くつきすぎますし、あなたにとって最悪なことです。

世界に蔓延る悪行の多くは、善行を為していると思っている人によって引き起こされたものです。たとえば、戦争について調べてみましょう。サディズムや何かしらのイデオロギーのために戦った兵士はほとんどいないことが分かります──彼らはただ、仲間を失望させたくなかっただけなのです。

私が皆さんにおすすめしているのは、人間性についての己の見方を考え、自問自答することです。これって本当に現実に即しているのか?アップデートすべきじゃないか?って。これは全てに大きな影響を与えます。私が研究し、著書に書いたことでもありますが、ひとたび人間性への見方をアップデートするということはパーソナルな部分にも関わりがあります。それは私の人生を変えてくれたのです。

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