100回目の告白
「好きです」
と初めて伝えたとき、先輩は「ありがとう」と微笑んだ。それだけだった。
強く好意を寄せれば、人は誰でも、応じてくれるものなのだと思い込んでいた。だから何度も先輩に「告白」をした。
初めて「好きです」と伝えたときから、先輩に告白した回数を数えていた。手帳に書きつけていたから。
それは回数を重ねに重ねてゆき、どうやら40回目あたりから「好きです」に加えて「付き合ってください」「交際をしたいです」「恋人になってください」などとようやく言えるようになる。思えば、最初からそう言えば良かった。要は先輩と1対1の関係になりたくて、先輩を自分だけのものにしたかったのだった。告白の回数を重ねるごとに、先輩に対する気持ちの輪郭がどんどんハッキリくっきりしてくるのを感じた。
恋をしていた。まぎれもない、恋だった。
それでも先輩は、告白するたび「ありがとう。でもごめんね」と困ったように笑うだけだった。
先輩はやさしい。告白するたび、まず最初に「ありがとう」と必ず言ってくれるから。
でもそれはずるい。とても。
先輩。
「はい」
あの、えっと、すごく言いづらいんですけど、
「うん」
今日で、もう先輩に告白するのは終わりにします。今まで困らせてごめんなさい。交際を申し込んだりとか、付き合ってくださいとか、もうこれからは言いません。
でも、最後に1個だけ伝えたいこと、っていうかお願いがあって。
聞いてもらえますか。
先輩、
「これからも、ずっと好きでいていいですか」
夕陽が沈む。乗りもせず眺めていたメリーゴーランドが煌々とまばゆかった。
「いいよ!」
先輩の明るい声が響いた。史上最強の完璧な笑顔だった。
100回告白して、ようやく初めて「いいよ」の返事をもらえた。
でも、終わりにする。
先輩を好きでいて良かった。思いっきり、何度も何度も気持ちを伝えられて、本当に良かった。
でもそれはとても自分本位なことだったと気づいた。100回目で。自分は愚かだ。
だからこの気持ちはもう永遠に、心の宝箱にしまいこむ。
先輩。99回、拒絶してくれてありがとうございました。あなたが本当に好きでした。俺すごく幸せでした。
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