人生最後の雑誌を作ろう。コンテンツの種を植える(雑誌NEUTRAL COLORS ニュー・カラーへの道#1)
“人生最後の雑誌”とか、随分と大袈裟かもしれないけれど、20代でNEUTRALをはじめたときも、30代でTRANSITに邁進しているときも、いつも毎号これが最後かもしれないという気持ちでやってきた。雑誌が好きで、発売した1週間くらいは抱いて寝るくらい好きだった。それでも頭の中ではいつもエンドロールが鳴っていた。
印刷までやるひとり出版社(いきさつは以下に詳しい)をはじめたのは、終わらない雑誌をやるためだ。終わらないためには自分で全部やるしかない。誰かの“意向”や時代の趨勢に左右されず、思ったテーマで、思った数で、思った読者に向けて作りたい。それよりももっと言うと自分のために作りたい。以前はとにかく自分を世間に証明しなきゃならなかった。最後は自分のためだけに作りたい。
自分のためとは、内容が人生に直接つながっているということ。印刷工房を作り、出版のオルタナティブの方法を探究するのが、追い求めたい出版の形だ。編集と印刷を共立しながら、新しい紙の可能性を模索したい。そんな人生の目標に直結した特集が創刊号になる。
創刊は「37.5歳からの人生を変えないインド特集(仮)」
変えないのではなく、人生にインドが張り付いてしまっている人たちの物語だ。僕もその主人公の一人になって、無二の親友の写真家と一緒に旅をする。タラブックスをはじめ、紙工場や大小様々な手作業の工房を見てまわる。それは将来の印刷工房のための視察だ。小さな工房から何が生まれるのかを見て、そこで感じた気持ちがストーリーとなる。旅は目的であってゴールではなく、スタートを切るための助走みたいなものだ。
今日は若いデザイナーと最初のデザイン打合せだった。従来の編集者がラフイメージを伝え、デザインをしていく方法ではなく、言葉の応酬から形を浮かび上がらせていく問答形式でやってみた。それは新鮮な驚きだった。ラフを描かずに言葉だけでイメージを共有していく。なんというか形にする前の粘土をこねているような不思議な感覚。それでも完成する形が見えて、それが今までにない形で、自信をもって「これはいい」というイメージが育っていった。
形にしていく作業はずっと楽しいに違いない。難しいのはわかっているけれど、粘土を整形して焼くまでの愉悦の時間。そして焼いてからも、もうひとやま印刷という「寝かし」の作業がある。こんな作り方は自分も想像もしていなかったのだから、誰もやっていないと思う。これはzineではなくmagazineなのだ。
コンテンツの種は無数にある。これからその種をどう育てていくかをnoteで追っていこうと思う。最後の雑誌です。ゆっくりお付き合いください。
コンテンツの一部。大きなネタのみ
インドの紙と色「タラブックス」工房と南の果て/ヴェーダーンタという生き方の教科書/インドで子育てをするということ/死の川をめぐる冒険〜ガンジスと鴨川/アウトオブ民芸インド編/1年のうち数ヶ月カレー屋を閉めてインドに行く理由/インドで処女小説を書いてみた/私の中に神様を持つこと/カーストを超えていく若き写真家たち/私がインドに行く理由(料理人・音楽家・社会学者など)
完全にインディペンデントとして存在し、オルタナティブな出版の形を模索し続けます。