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日本と米国の神経内科研修の違いについて

日本と米国でのトレーニングがどう違うかは時折聞かれることがある。まあ、一般の方には正直興味のない話だろうけど、医療関係者、特に結構ベテランの先生方から聞かれることがある。特に今は新専門医制度などで色々あるし、米国がどうやっているのかを知っておきたいという部分もあるのかも。
まあ違いはいくつかあるけど、ぱっと浮かぶものと言えばー
1)ローテーション制になっている
2)毎日の講義がある
3)チームでの病棟回診が教育の場
4)フェローシップがある
あたりかなあと。


1)ローテーション制になっている
日本で神経内科を後期研修なりで勉強するときは、特に市中病院であればOn the jobという感じが強い印象がある(この5年くらいで変わっていない限り)。今日は救外から呼ばれまくる脳梗塞Dayだったなあと思ったら次の日はてんかんの新規入院が重なって脳波室に行って脳波読んだり、その次の日は外来でひたすら患者さんを見続けたり。僕の思い出す日本の後期研修はそんな感じだった。それはそれで、一つ一つの症例から勉強することができて最初のうちは新鮮で相当楽しかった。全てが新しい経験だったから。
ただ、これが続くと最終的には結構得意分野、不得意分野みたいなのができるのではという不安はあった。もちろん、優秀な先生たちはきっと関連した論文とか教科書とかを一緒に読み込んで、見ていない症例でも見たのと同じレベルで吸収できるのかもしれないけど、僕にはそんな要領はなかった。
そういう意味で、米国のように毎月ローテーションして、それぞれの分野に特化した外来を回ったり、入院担当のときは入院だけに集中したりできる環境はありがたかった。自分の苦手分野に時間を割いたり、得意分野をさらに強くしたりなど、ある程度の自由度もあったし。さらにローテーションで回る外来の指導医はその分野に専門を持つ先生たちで、彼や彼女たちの経験から学ばせてもらえたのは非常に大きかった。特殊な身体所見の取り方や、“勘”みたいなのはなかなか直接指導してもらわないとわからないから。どんなローテーションがあるかというと、
Neuromuscular/EMG (神経筋疾患/筋電図など)
Epilepsy/EEG (てんかん/脳波)
Movement disorders (異常運動 (例:パーキンソン病など))
Neuroimmunology/MS (神経免疫/多発性硬化症)
Neuro-oncology (神経腫瘍科)
Headache (頭痛)
Sleep medicine (睡眠医療)
Neuro-radiology (神経放射線科)
Interventional radiology
Pain Clinic
Neurocritical care (神経集中治療)
Neurosurgery (脳外科)
というあたりがメインかなと。

2)毎日の講義がある
病院によって時間だったり、内容は変わるけど、米国ではDidactic lectureと呼ばれる授業の時間は必ずある。新研修医が入ってくる夏はすごく基本的なことから始めて、徐々にレベルを上げていくようなスケジュールを組むことが多い。授業形式で補足してもらえると、解剖などの知識も整理しやすくなるし、局在診断の思考トレーニングもじっくりできて、すごく勉強になった。ただ、個人的に一番役になったのはMeditationの授業と履歴書の書き方や就職時のNegotiationの方法などの実践的な授業だったかも。自分がチーフレジデントのときは授業内容に関してかなりの裁量が与えられていたので色々と試すことができて楽しかった。

3)チームでの回診がある
僕のいた日本の病院では一週間に一度、部長の回診をじっくりとする機会があったし、その後みんなで画像カンファレンスみたいなのもあったから、普通かと思っていたけど、日本の病院にはチーム回診がないところもあるらしい。そうすると、このチーム回診は大きな違いかも。プレゼンの準備もしないといけないし、プレゼンはチーム全員の前でするプレッシャーもあるし。
これのいい点は患者さんの把握、理解ができるようになるだけでなく、医者が常にチームのリーダーだという認識が生まれてくるのもこういったところだと思う。リーダーシップのトレーニングにはきっと役立っていると思う。(米国でのレジデンシー中のリーダーシップ教育についてはどこかでまたまとめないとなあと思っている)

4)フェローシップがある
レジデンシーを終えた後はほとんどの研修医はフェローシップに進むと思う。フェローシップは神経内科をさらに細かく分けたSubspecialtyのトレーニングを1-2年行うことでさらに専門性を高めることができるもの。内容は上に書いた選択ローテとおおよそ被る。これをやると神経内科専門医に加えてその分野の専門医も取れてダブルボードやトリプルボードと呼ばれてその人の貴重性が上がることになるし、アカデミックに進んでいくなら必須だと思う。これも日本とは違う点かなと。

また色々思いついたら付け足そうと思う。とりあえずは、こんな感じで。

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