ウカ様のエッセイの感想
バーチャルドールYoutuber・届木ウカさん(以下、愛称の「ウカ様」と称する)が「SFマガジン 2020年 8 月号」に寄稿したエッセイ、
「異常進化するバーチャルアイドル -VRとVTuberの新たな可能性-」の感想記事です。
すでにエッセイを読んだ方向けの記事なので、ネタバレを含みます。
また、内容の解釈と考察のために、エッセイにある文章を多数引用させていただいております。
ご注意ください。
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・VTuberとは何か?
ウカ様によれば、VTuberとは「自身のスキルを生かせる新たな表現媒体の場」であり「自身の存在の補完」を目的とし、「私の精神や自我の完全なる写し鑑」を実現するための手段である。
そもそも表現とは、絵や歌や文など様々な手段によって、自分の感情や思想など、形の無いものを何らかの形として残すことである。
言い換えるのならば、仮想世界のものを現実世界のものへと翻訳し、変換することである。
年齢や性別や容姿など、努力ではどうやっても変化させることができない外見的特徴を、仮想世界では自由に変化することができる。自分自身の理想をとことん追求することができる。
有機生命体としての肉体的制約を超越する、新たな自己実現の手段がVTuberなのだ。
・VTuberの配信のメリットとは?
ウカ様は、VTuberの配信のメリットとして「画面に出る情報を任意に操作できる」ことを上げる。
「視聴者は整ったCGの体が動いて喋るのを何時間も、罪悪感や疲弊感を気にせずに気楽な気持ちで楽しむことができます」
実写映像から発生する生々しさ、痛々しさを排除し、余計な情報を遮断することで、視聴者は配信の内容に集中できる。
それは「タレントの人生とファンの人生を同期させる」というサービスの提供に繋がり、「永遠に美しい偶像の長時間生配信の視聴」を実現させる。
これによって、タレントにとっても、ファンにとっても配信を長く楽しめる環境が成立する。
情報とは多ければいいというものではなく、不必要な情報は削るべきなのだ。
・ウカ様の魅力とは何か?
ウカ様とは「単一個体で発生し、ファンと共に無限成長する」存在であり、
「より美しい姿でファンの前に立ちたい」「もっと多様な表現を行いたい」という個人的な欲望から生まれたものであるにもかかわらず、
その「多様で貪欲な表現活動と無遠慮で無作為な成長活動」が、不特定多数の「ファンに歓びと応援の対価を与えている」。
ファンにとって「推しの喜びが自分の喜び」であるように、
ウカ様にとって「自分の喜びがファンの喜び」に繋がることで
Win-Winの関係を築いている。
さらには、個人の活動だからこそ、一貫性のある世界観を構築できる。
ただのクリエイターではなく、ただのアイドルでもない。
ウカ様自身が「オルタナアイドル」と呼ぶその存在は、まだ誰も結末を知らない物語であり、その「可能性の萌芽」がウカ様の魅力である。
ウカ様の、ウカ様による、ウカ様のための表現。
しかしその表現はウカ様ひとりでは成立せず、ファンだけでも成立しない。
ウカ様とファンの協力関係によってはじめて成立する物語が、ウカ様の魅力の根源なのだ。
参考文献:『SFマガジン 2020年 08 月号』(2020年06月25日発売)
文責:ねうろ派(@neuroha_seiji)