アウトライナーは「思考の加工場」である

 それなりに考えた結果、とりあえずそういう結論に至った。ほかにも以下のような成果を得た。
 思考の場=Scapple(フリーボード?)
 思考の加工場=Bike(アウトライナー)
 文章工房?=egword Universal 2(ワープロ)?
 文章倉庫?=Scrivener(?)?

 端的に思考の成果を表現すると以上のようなものになる。しかし多くの人にとっては意味不明だろう。したがって以下に説明を記すのが筋——だとは思うのだが、上記の図式を眺めても一切ぴんと来ない人に向けてまで説明しようとすると、手に負えない気がする。残念ながら今の僕にはそこまでの説明力がないと思う。

 というわけなので、以下は説明というより、たんに思考の履歴を述べることになりそうだ。適当に拾い読みして、飽きたら離脱するのが吉かもしれない。

 そもそもは「アウトライナーとは何なのか」ということを考えようとしていた。ネットや辞書にあるような説明としてではなく、僕にとってアウトライナーとは何なのか。僕はアウトライナーを使って何をしているのか。

 それを考え始めたときに、最初に出てきたのは「テキスト操作」だった。アウトライナーを使い始めて3ヶ月……、他のテキストエディタとの違いは何だろう……、というふうに考えて出てきたのが「テキスト操作」だ。アウトライナーでは文を移動させたり、文を配置して階層を表現することができる。それを「テキスト操作」というワードであらわしてみたわけだ。

 ところが不意に「いや、なんか違うかも」と感じた。考えてみたら、僕はアウトライナーでテキストを書いていないのではないか? アウトライナーで文字入力をしているときには、アウトプットとしての文章を意識していない。これまでの使い方を思い返してみても、一度としてブログにアップする「文章」を書いたことはない。文章はegwordで書いている。
 であるなら、僕がアウトライナーでやっているのは「テキスト操作」ではない。そもそもテキストを扱っているという意識がないからだ。
 ではいったい何をしているのか?

 たぶん「思考している」が近い。前回の記事でもアウトライナーは「思考の場」であると書いていた。
 さて、ところが、「思考の場」というフレーズで思い出したことがあった。僕はかつてScappleのことをそう呼んでいたはずだ。Scappleは簡単に言えばホワイトボードみたいなアプリだ。「マインドマップ」ではないところがポイントである。「マインドマップ」は中心から枝が伸びるように構造化されるが、Scappleはもっと自由だ。好きな位置にポンポン言葉を置いていくことができる。

 しかしScappleはしばらく使っていなかった。アイデア出し、フリーライティング、自由連想的な思考をするには最適なアプリだが、そこからブログにアップできるような文章にまで持っていくことがむずかしかったから、そのうち使わなくなってしまったように思う。
 そういう状況なので、しばらく使っていないScappleのことはふたたび忘れて、「思考の場」としてのアウトライナーについて考えよう——と気を取り直しかけたのだが、そこで思考が足を止めてしまった。そこにくわえて、アウトラインの中にキーワードを列記している箇所があり、そこもアウトライナー(Bike)ではうまく展開しづらいなあと感じていたことも相まって、久しぶりにScappleを使ってみる気になった。

 そしてScappleで少し作業をしているうちに気づいた。だいたい、思考って階層化されているのか? 否、思考自体はむしろネットワーク的、あるいはリゾーム的なのではないか? だとしたら「思考の場」はアウトライナーよりScappleの方がよいのではないか?

 しかしだとしたらアウトライナーの役割はどうなる? アウトライナーの特徴である階層化とはどういう意味を持つのか?
 階層化とは論理だ。論理が思考自体に寄与しないとしたら、いったい何の役に立つのか? それはおそらく伝達の役に立つ。思考を他者に伝達する際に論理が必要とされる。
 ということは、アウトライナーは「思考の場」ではなく、「思考を伝達可能なものに加工する場」かもしれない。「思考の加工場」……これはなかなかいいフレーズじゃないか。
 Scappleで出てきた思考をそのまま文章化するのはむずかしかった。だがアウトライナーがその橋渡しをしてくれる可能性がある。

 すなわちScapple=思考の場、Bike(アウトライナー)=思考の加工場。
 思考の帰結はこれである。そこから普段使っているアプリのことを考え、egword Universal 2=文章工房? Scrivener=文章倉庫? というのがすんなり出てきた。とくに思考せずに出てきたから「?」をつけているが、まずまず妥当なところだと思う。
 次はアウトライナーとワープロのあいだ、思考と文章のあいだには、いったい何があるのか? といったことが課題だと思うが、今のところとくにアイデアはない。そこには魔法がある、というのもひとつの解だと思うが、どうだろう。

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