「他者」の登場

 何かについて語るというのはどういうことか、引き続き考えている。
 まず「語る」ということは、他者に向けて言葉を放つことだ。
「他者」というワードが出てきた。話がどんどんむずかしくなっていくみたいだ。困ったな。
「他者」「自分」「言葉」「何か」と、既に4つも要素が出てきている。とりあえずそれらが関係して、「語る」という現象が成り立っているように思われる。

 そもそもこんなことを考えるきっかけになったのは、観た映画についての感想がうまく言えないということだった。あらためてそのことについて考えてみると、僕の場合、「他者」が不足していたのかもしれない。欠如といってもいい。「他者」が欠けていたから、「語る」ことができなかった可能性がある。

 しかしリアルな他者を想定すると、僕の語りは簡潔になりそうだ。それはたとえば「面白かった」とか「イマイチだった」とか、ほとんどひとことで完結すると思う。その映画を見ていない人に向かって、印象に残ったシーンを言葉で説明したり、自分はどこを面白いと感じたのかを説明したりするシチュエーションが僕には思い描けないからだ。

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