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ひょっこり職務質問の果て

23時、薄暗い裏道をぼんやり走らせてたら突然小さな交差点に黒い人影3人!

ひゃっ!!拉致?!

と思いきや、

赤く光る誘導棒で左に寄って停めろと警察官風。

怪しい!!

私はそう思った。
しかし、向こうもそう思った。

自主的に窓を開けると、ひょっこりはんを普通にした感じの若いおまわりさん。

「見回りしてます。危ないものないか・・」
と言いかけて

私が

「あ!三人だから職務質問の練習だ!」

と言うと、後ろにいた二人の警官がさっと車の後ろに廻りつつ

「ハハハっ」

と笑う。

話しかけた警官は免許を出せと言いつつ、私の財布をじーっ見る。

怪しい会員証やポイントカードの間に免許を見つけ引き抜いたら、うさちゃんクリーニング会員証。

あら?とちょっと焦ったら、

若い警官は
「白い粉でてこいでてこい」
「免許不携帯不携帯」
「動揺する奴は何かあるきっとある」

と念じているようだが、すっと免許が出てきた。

警官は警察24時のごとく棒読みで

「お仕事帰りですかね。ふーむ。林さん。林さんは捕まったことあります?」

「オオッ‼️」

あまりにストレートで興奮してしまったが、私生活の弁護士風になぜか余裕ぶって

「はい。よく捕まりますよ」

というと

「え?何しました?」

とテンション上げていうので

「オレンジの線跨いだり、車置いてたら二俣川に反省文持ってこいとか」

警官は興味なさそうに冷たい目で

「あ、交通ね」

と。

気持ちを切り替えたひょっこり氏は、血液検査する時の腕の血管を探す看護師が「はーい。ちょっと親指をぎゅっと握ってくださいねえー」という時のテンションで

「はい。では、車内見せてくださいね。はい、ちょっと足元いいですかー」

と言いながら足元とトランクをしゃかしゃか照らした。

「おー!警察24時!」

と反応したら

「あー、あれは面白いところだけまとめてるからねー、ああいうのは中々ないからねえ」

と若い癖に千葉の定年前の刑事のようにボソボソ言う。

「はい。それではありがとうございました。おきをつけて」

足元照らしただけなのに

「えー!もう終わり?」

というと

人としてどうなのかという位冷たい目で

「はい。大丈夫です。」

と言い放ち、三人はあっという間に消えた。

どうもちょっと雰囲気が警察官っぽくなかったが、あれはもしや劇団員の稽古だったのではないかと少し思っている。

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