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人生リブート指南(12)人類滅亡系SFの主人公気分を味わわせてくれた住宅街

人生リブートのための移住地リサーチ散歩をやり始めて以降、神奈川西部から静岡東部にかけての全駅周辺を踏破した私。
その中には東京と大差ない利便性が担保されてる町もあれば、絵にかいたような田舎もありました。

歩いてみて「ここに住むのは無理そうだな」と判断した地域の中で特に印象的だったのは、何もなかった土地を大規模宅地造成して作ったであろう小ぎれいなニュータウンでした。
「高級住宅地」と呼ぶにふさわしい美しい町並み、きちっとした街路に沿って整然と建ち並ぶ住宅群……「こんなところで暮らしたいわぁ~」とため息をつく奥様はきっと少なくないだろうと思わされる景観。

ただし、その中に商店の類は見当たらない。
これだけ広いんだから1軒くらいあってもいいだろうと思わされる「コンビニ」はないし、新しい町だから「代々続く地元商店」というものも当然存在しない。
町中をぐるぐる回ってみても何か買えそうな施設はまったく見つかりませんでした。

そして住人にも出会わなかった。
行ったのが午後のまだ早い時間だったので、たぶん殆どの方が仕事に行っているのでしょうけど、それにしたって誰もいなすぎる。
稼ぎ手が出勤中だとしても、家を守る主婦なり主夫なりが道にいたっていいだろうに。

見たところここは「帰って寝る」以外の機能をあえて放棄し、「生活物資は近隣の繁華街まで車で行って調達してくればいいのさ」という割り切りをしている模様。
だから、ちょうど皆さんマイカーで買い出しに行ってる最中だったのかもしれません。
そう考えても「きれいな住宅街の中に自分1人しかいない」という状況は、まるで「全人類が絶滅した世界に取り残された」かのよう。
なんだか自分が破滅系SF作品の主人公になったような気分でした。
というわけで「この町に自分は住めない」と判断した私は踵を返したわけですが、最寄り駅まで戻る途中でも誰とも出会いませんでしたね。

湯河原のアパートまで戻ってから、ひょっとしたらあそこは住宅街ではなくて、「破滅系SF作品の主人公の気分が味わえるテーマパーク」だったんじゃないかという思いがこみあげてきたんですが、どうなんでしょう?
あるいは「あの町は自分にしか見えない幻だったのかも?」という気もしましたが、写真にちゃんと収まっているので物理的に存在していることは確かなようです。
いや~、リサーチ散歩してると色んな所が見られて色んな体験ができるもんですよ。

画題「こんなふうに叫びたくなりましたよマジでマジで」

函南


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