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CS入賞目指して先生に教えを請っていたら優勝してしまった話。

CS優勝しちゃった。

 まだびっくりしちゃってて現実感が持てないのですが、どうやら本当に優勝してしまったみたいなので、今回の備忘録では初級者の私がのまろか先生に師事していろんなことを教えてもらい、もう感謝の言葉では語りつくせないほどの恩を受けながらCSに挑み、最終的に優勝してしまった経緯を取り留めもなく綴っていこうと思います。

 備忘録シリーズの例に漏れず、このノートから得られるものは何もないです。

 それでも読んでやるという方のみ気軽に読み物として楽しんでいっていただければ幸いです。

出場したい。

  ──CSというものがある。

 私がそんな話を聞いたのが、だいたいデュエマを遊び始めて数日したころ。インターネットの動画配信サイトでのことであった。

 曰く、チャンピオンシップとも。

 曰く、平たく言えば競技志向のプレイヤーのために用意された主戦場。

 曰く、その日、その場所、その一戦、もっとも強いプレイヤーを決めちまおうぜって、そういう催しである。

 以前別の備忘録(ハイランダーに納得のいかなかった話。)でも軽く触れたが、私という人間はカードゲームを遊ぶ上で勝つということに一定の重きを置いていて、つまりそれはこういった催しが大好物であることとイコールであった。

 そんなもんもあるのか。そんな風に頭の片隅に置きながらデュエル・マスターズを楽しく遊んで、それで一ヵ月もすれば、私はトーナメントシーンを意識したデッキを組み、プレイングをなんとなしに練習したりしていた。

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 そのうち秋葉など普段カードを遊んでいる地域でショップ大会に出てみたりして、──ああ、なるほど、これは楽しい。そんな風に確信めいたものを感じたりしていた。

 そんな私がCSに出ようと思い至るというのは、至極と当然の帰結であったと言える。

初出場。

 10月、某日、都内某所。

 私は初の戦場へと赴いた。

 握った山は当時まだ世間で完全には話題になりきっていなかった最初期の「オカルトアンダケイン」を自分好みにチューンしたもの。

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 直前まで零龍ギャスカと青黒零龍を対抗馬として迷った末の結論で、経験値の不足による相手との差を奇襲性の高い奇をてらったアーキタイプの持ち込みによって補えれば、そんなふうに思っての采配であった。特に当時最大母数であったドラグナー対面の練習を意識的に積んでの参加だ。

 結果は──2-2ドロップであった。

 対戦内容はひどいもので、会場の雰囲気に呑まれたとしか言いようのない初歩的なミスによる敗北すらあった。2敗した時点でスイスドローを続行する気にもなれない心境になってしまい、気がつけば携帯端末でドロップの手続きを完了してしまっていた。

次を目指して。

 意気消沈したのも当日の間のみで、次の日にはCSで戦うために不足しているものについて考えだしていた。

 まず、環境への知識不足からは目を逸らせない。

 もともとその自覚はあり、それ故に自分のデッキの練度をある程度の水準で確保すれば押しつけによる勝利の期待が持てるデッキタイプを選んでいたのだが、それにしたって必ずしも理想の動きができるとは限らないのがカードゲームの常である。少しでもゲームが縺れれば、そういった知識差はゲームの勝敗に如実に影響を見せることを身をもって体験した。

 当時最大母数であったドラグナーの対面は身内に手伝ってもらってこれでもかと練習し、結果としてドラグナー対面は全勝をおさめていたという成功体験も、その思考を後押しした。

 環境、メタゲーム、カードプール、裁定など、とかく知識の学習と習得が急務であった。

 しかし、私は社会人。

 現実問題一日に確保できる趣味の時間は多くて2~3時間といったところで、きちんと現実で相手と対面してカードを触れるのは週末に1日~2日時間が取れるかといった具合である。

 圧倒的に時間が足らない。そんなことを思い困り果てた私に手を差し伸べてくれた人物が1人。

困った時はのまろか先生。

「そういうことなら僕にわかんないことは聞いてくれたらいいんじゃないですか?」

 その一言をいただいた後の私の行動は早かった。

「〇〇の〇〇は置換効果だと思うんですけど、〇〇の場合はどう処理するんですか?」

「〇〇の平均キルターンってどんなもんなんでしょう?リーサルプランって〇〇のほかにもあります?」

「〇〇には3ターン目にランデス狙うよりもアグロ優先したほうがいい気がしますけど、どう思います?」

「〇〇と〇〇ならどっち採用したらいいすかね。僕は〇〇意識するなら〇〇かと思ったんすけど」

「〇〇に採用されてるトリガーって〇〇のほかになにが考えられますかね?」

「あれ、ブロッコリーとカリフラワー緑なのってどっちでしたっけ?」

 えとせとらえとせとら。

 言質はとったとばかりに毎日のように鬼のような量の質問や疑問を投げかける私に、彼ことのまろか先生はそのすべてに丁寧に事実や私見を述べてくれ、時には対面の練習にも付き合ってくれた。

 あまりにもなんでも答えてくれるもんだから最終的にはのまろか先生とSiriの概念が私の中で融合し、ディスペクターのSiろか先生としてエクストライフを習得するに至ったほどである。(このため、彼は現在あらゆる除去に1回分の耐性を備えているので注意してもらいたい。)

 正直、逆の立場ならよゆーのLINEブロック召喚から、絶縁の儀を達成して縁切り卍誕まで通しにいくレベルであったように思うのだが、彼は文句を言うどころか、最終的にCSで優勝するに至るまで、一度として私への協力を拒むことはなかった。

 私は本当に最高の師を得たのだ。その思いは日に日に強まり、次回のCSに出場する頃には確かな確信へと成っていた。

真の環境トップ。

 環境でのコ〇ナウイルスの流行。文句なしの環境トップを前にメタカードであるワク〇ンはなかなか刷られることも叶わず、じり貧なゲーム展開が続く中、私は次の機会をまだかまだかと待っていた。

 思ったよりも期間が開いてしまったためモチベーションに多少の上下はあったものの、小〇百〇子選手が「緊急事態宣言の解除」のプレイを通したことでゲームが大きく動いたのを確認した私は、さっそくCS0回戦のエントリー戦争に挑み、無事に勝ち抜き、エントリーを完了させた。

「やれるだけのことはやりました。まずは前回の反省を活かして、しっかりと楽しんで来たらいいっすよ」

「ガンガン挑戦して絶対デドダムのプロモ獲って、それをのまろか先生への月謝とします。必ず献上するんで待っててください」

「それは楽しみだ、がんばってください」

 激励の言葉も貰って、半年の月日でバージョンアップしたデッキを握ってCSへ挑む。

 もちろん、私自身のバージョンアップもばっちりだ。環境デッキのリストや動き、環境に存在するカードのテキストなどはひとしきり網羅していた。

 まずは予選通過を目指す。

リベンジをかけた半年ぶりのCS。


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 約半年ぶりのCSで握った山は、対面練習に付き合ってくれたザーサイくんと、言わずもがなたくさんのことを教えてくれたのまろか先生の意見を取り入れた私なりの「オカルトアンダケイン」だった。

 1回戦開始の直前までLINEでのまろか先生とやりとりを続け、対面が予想されるデッキタイプの注意点などを話し合った。また、試合が終わるごとに結果報告を行なっていたが、その行為がCSというある種アウェーな空気感で焦る心を落ち着かせたことは、言うまでもない。

 知り合いの存在、彼の存在はやはりこう言った場面では──というか、こう言った場面でこそとても大きい。

 最終的には入賞は果たせなかったものの、半年前のように雰囲気に呑まれてしまうようなこともなく、プレイの内容も致命的なミスはなかったように思えた。

 第4試合で負けてしまい、入賞が不可能なラインへの転落が確定する際には、まだCSを(入賞を目指しながらという意味合いで)楽しんでいたいという気持ちでいっぱいになりながら投了をした。負けはしたが、その心境に至ったことが大きな成果であったように思えた。

 負けは負けだが、しかしそれでも半年前とは明らかに違っている手応えがあった。私の努力は無駄ではなかったという確信が得られたし、なによりも入賞も決して夢物語ではないという実感を得られた。

 私は、確かな熱量と意思でもって、なによりものまろか先生へのプロモ献上による恩返しへのモチベーションでもって、来週に控える次回CSへ意気込んだ。

三度目のCS、そして優勝へ。

 そうして迎えた4月17日。

 前回のCSから一週間の間、例えそれが仕事中であったとしても一度として頭からデュエルマスターズを完全に忘却した瞬間はなかった。

 それほどの執着をもって挑んだCS。

 その歩みは常に彼──のまろかと共にあった。

 思えばはじめてCSに挑んだその時より、数えて半年以上の時間をこの日のために2人で積み上げたのだと思うと、非常に感慨深い。

 改めてCSとは。

 ──曰く、その日、その場所、その一戦、もっとも強いプレイヤーを決めちまおうぜって、そういう催しである。

 そこでもって、事ここに至って、その日、ついに優勝をその手にすることが叶ったのである。

 言うまでもなく感無量だし、だからこそ声を大にしてその結果を叫ばせて貰いたくもなる。

 では満を持して優勝デッキのリストを掲載させていただこう。

 このリストでもって、ついに、CS優勝を果たしたのだ!!!

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   のまろか先生がなぁ!!!!!!!!

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 いや、なんでだよ。


 

ここからはいつもの備忘録。

 ことの発端は、CSの開催日が最新弾の発売日と同日であったことだった。

 もともと私とのまろか先生──彼は、最新弾の発売日には秋葉原のカードショップに開店凸をかけ、最新弾のカードが入っている店頭ストレージを漁って掘り出し物を見つけるというイベントを通例行事としており、今回の「王星伝説超動」の発売日も同じように一緒に早朝からはしゃぎ倒す予定であった。

 しかし、最新弾「王星伝説超動」の発売日である4月17日には、都内某所にてCSが開催される予定となってしまった。

 正直、今のモチベーションからすればこの日のCSはどうしても出たいところ。そう考えた私は彼に相談の一報を入れるに至る。

「のまろか先生、こんどの17日なんですけど。予定変更してCSにでてもいいですか?」

「うーむ、なら僕も出てみようかなぁ」

 ここ。

 ここが全ての原因となったやりとりであったように思う。

 ──そう、今私の眼前に広がる光景の原因は確かにそのやりとりにあった。

 CSも予選のスイスドローはとうに決着し、現在は本戦の決勝トーナメントもいよいよ大詰め、今まさに決勝戦が行われようかとしていた。

 カードショップ内の雰囲気はまちまちといった具合で、大会の結果を固唾を飲んで見守る者もいれば、やいのやいのと身内でカードゲームを遊ぶ者、今日発売のパックを開封して一喜一憂する者と、三者三様であったが、その中にあっても決勝卓──その机と周囲だけは、なんだか異界めいて、しっとりとしつつも張り詰めたような独特の空気感を放っていた。

 いつも自分が負けた時点で予選が終わるころには会場を後にしていたものだから、初めて肌で感じる感覚に自然と手に汗を握っていた。

 ──いや、手に汗を握っている理由について述べるのであれば、それだけでは説明不足であると言えた。より正しくは、もう一つ理由があるのだ。

 その理由こそが、3回目のCS参加にして初めて決勝戦の観戦をしていた理由であった。

 ──異界めいたその力場の中心に、見慣れた彼が在った。

 そこには、CSの決勝戦を戦う、のまろかの背中が在ったのだ。

 彼は今、その日の最強を決める戦いの最終決戦を戦っていた。

 対面する相手は、何の因果か私の一回戦の対戦相手であった彼。私の敗北した相手であって、そして握っているデッキまでもが私がこの半年間握り続けてきたアーキタイプと同一であった。オカルトアンダケインだ。

 環境トップの一角を担うに恥じない出力を誇るそのデッキ、またそれを駆る乗り手である彼も、もはやその実力に疑いの余地はないのは明白であった。

 なにせ彼らの立つ其処は、我こそはと集った62の戦士の骸を重ねて作られた異界に他ならない。それを築き、そこに在るに足り得た2人である。

 ともすればやはり、その実力が確かなものであるということにも一抹の疑問の余地もなかった。

 しかしそれでものまろかの所作、カードを捌く手には迷いも不安も、焦燥も感じとれなかった。決して大柄ではない彼の背中がとても大きく感じてしまうほどに、一手一手に確信めいた意思が感じられた。

 どうして彼がそうまで平静に、それでいてどしりと構えていられるのか。本来であればこんな土壇場の勝負、火事場も火事場の鉄火場であればもっと感情に揺らぎがあって然るべきではないのか。そんな私の考えと疑問は彼と彼のプレイを見ていく中で次第にゆっくりと解かれていった。
 思えば、私の脳内の選択と、彼の選択が重なっていることに気が付いたのだ。そして意識すればするほどに、その重なりの数が尋常のそれではないということにも思い至った。

 まるで、プレイすべきカードが私にも、彼にもわかっているかのようだった。

 当然だ。

 だって彼は、この半年間ずっと私の相手をしていたのだ。

 オカルトアンダケインをずっと、一緒に研究してくれていたのだ。

 私とずっと一緒にいてくれたのだ。

 ──じゃあなんで、彼の対面が私ではないのだ。

 ──じゃあなんで、今私は彼の対面にいることができていないのだ。

 決まっていた。私は負けたからだ。ここぞで、勝つことができなかった。全体の戦績で見れば過去一番の勝星であったが、それでも足りはしなかったからだ。

 あまりにもおこがましい思考であることはわかっていた。

 私ごときが半年間努力をしたからといって、今、決勝戦を戦っているオカルトアンダケイン使いの彼と自分を重ねていることのおこがましさは嫌というほど理解していた。

 しかし、それでも。

 もしもと。

 であればと。

 なのであればと。

 私が彼と決勝戦を戦えていたのなら、それはどんなに楽しい時間だったのだろうかと。

 そう思ってしまうほどに、たまらなくその事実を悔しく感じてしまっていた。

 気が付けば、なんだか目頭がじわりと熱くなっていた。大の大人が、カードゲームの大会でなにをと、慌てて気持ちを強く持つように努めた。

 努めたが、もうなんだか、うまく言葉にすることも叶わない得体の知れない感情で、私の情緒は既にぐちゃぐちゃになっていた。試合の顛末を見届けることを強く意識することでなんとか彼と、彼のデッキの雄姿で気持ちを繋ぎとめる。

 ──ゲームは1対1で最終戦へと縺れ込んだ。

 お互いの念入りなカットが終わり、それぞれシールドと手札をセットする。明暗分ける初手の確認、ゆっくりとした動作で1枚1枚めくるように確認しているのまろかの初手に、この対面の勝負を決定付けるであろうキーカードが握りこまれているのを確認した時、彼の勝利を確信する。

 それと同時、私の中の緊張の糸が切れるのを感じた。

 そこから先のことは、正直はっきりとは覚えていない。気が付いた時にはこちらを振り返ったのまろか先生がほっとした顔でガッツポーズをしていて、私はそれに駆け寄っていって「さすが」と一言声をかけたのだけを辛うじて思い出せる。

───

──

 祭りの後。

 のまろか先生とは15分ほど前に駅前で解散し、私は帰宅路を電車に揺られていた。

 ぶーん、と。ポケットの中で携帯が音を立てた。

 携帯の通知音に確認しようと持ち上げると手首にかけていたビニール袋ががさりと音を立てた。自然とそれに視線を向ければ、つい1時間ほど前のやり取りが鮮明に思い出せた。

『これはぽけさんに差し上げますよ。声かけてもらわなきゃ、そもそもCSになんて出ようと思いませんでしたし──』

 そういって、彼は私に優勝賞品の最新弾『王星伝説超動』のボックスをわたしてきた。

 本来であれば私のほうから彼に授業料としてプロモを献上するという約束であったのに、蓋を開ければなぜか私が商品をもらっている始末だ。それを情けなく感じないといえば嘘になるが、しかしそれ以上に、彼のその後にくれた言葉がそれを受け取ることを良しとするに十分な理由になってしまった。

『──それに、決勝戦はぽけさんとずっと決闘をしていたからこそでしたし』

 視界がぐらついた。私のおかげだという彼に、それほどの関係へ至れたことに。子供の頃に私と友達を繫いだカードゲームは、どうやら大人になってしまった私のことも、誰かと繫げてくれるようであると――その事実があまりにも嬉しいものであったから、私はそれ以上の言葉を語れなかった。

 ──彼はあの異界においても、いつも通りであればよかったのだ。

 そしてそれは、私が居なければ成らなかったことだった。

 普段、あれだけカジュアルなデッキが──とか、メタゲームよりも使ってて気持ちいいデッキを──なんて言動を振りまいているくせに、いざCSに引っ張り出してみればほぼ新基盤のようなデッキを自作して持ち込んで、初出場で初優勝するような、そんな男の口からそんな言葉を聞いてしまっては──。

 彼の口から、そんな言葉が出てきてしまったのなら──。

 アナウンスが響く。最寄り駅への到着を知らせる電子音に施行を遮られて、はたと現実感を取り戻した。崩れているであろう表情を思い、マスクと情勢にこの時ばかりは感謝して、当初の目的であった携帯の画面へ視線を向ければ、そこにはメッセージが通知されていた。

【今日はありがとうございました。明日はアキバ?】

 足早に席を立って電車を降りる。いつからだったか、歳を重ねるごとに休日の帰路は気分が重くなりがちであったが、今日ばかりはその限りではなかった。だってそうだ。

 ──まだ、週末休みは半分も残っている。


 それではまた、別の備忘録とかで。



PS.

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使用デッキ名【5C王“来”伝説超動】

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最新パック名【王“星”伝説超動】


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 備忘録書いててとんでもないことに気が付きました。

 いえーい、のまろか先生ー、見てるー???

 

 

 


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