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病院を受診する意味

私は消化器内科医として勤務している身ですが、患者さんからよく、「また来ないといけませんか?」と言われます。

この問いに答えるのは様々な事情が絡みますので容易ではありません。



まず、病院にかからないと法律に違反する事はないと思いますので、警察に追われる心配はありません。

病院にかかると病気が治るか?という問いに対して、答えはノーです。

病気が治るのは薬や手術などで治るのか、自己の自然治癒力で治るのか(=ほっといても時間が経てば治る)、そもそも治る見込みがない病気なのか、大まかに3通りだと思います。
なので、手術をのぞいて、病気を治すために病院にかかっている訳ではありません。

基本的には病院は診断を行い、それに対してお勧めの治療方法を提案する場です。
実際に治療する主役は患者さん本人になります。



ここまでの内容をみて、「突き放した言い方だ」、「無責任じゃないか」と思われる方もいらっしゃることと思います。
実際に私もそう思います。
一方でそれがやむを得ないとも思っています。

人は命がある生き物です。すなわち、いずれ命を失う事になります。
何かしら病気になって最期を迎えるのは当然の事です。
前提として、その事を理解していない方の方が大半で、なぜか自分が死ぬ事が想像出来ないのが普通のようです。
根本には、日本の文化的な問題かもしれません。「死」について会話をしてはいけないような風潮を感じます。

考えても、考えなくても、死は皆平等に迎えるものです。
最終的にそこに至る過程に病気が存在しています。

命に関わる病気であれば、死をゴールとして考える必要があり、その過程を決めるのは本人がすべきと私は考えています。

先日、別の記事で書いた治療目標は患者満足度の向上であり、病気の治癒率を高める事ではない、というのはこの生物的な理由があるからです。
この場合には、最期に向けて満足できる生き方をサポートするのが医者の仕事だと思って診療を行っています。


次に、命には関わらないけど、生活を苦しめる病気である場合。
これは単純に生活を楽にするために受診しているはずなので、受診が生活を圧迫するのであれば頻度を控えめにしたり、場合によっては受診自体やめる事も選択肢とすればいいと思います。

医者にもよりますが、生活の事まで考えて診療方針を考えている場合は少ないかもしれません。
医者をやっていると、自分の診療に手一杯で他の医者が具体的にどうしているか見えない場合が多いので、この辺の感覚は看護師さんの方がよくご存知のことと思います。
若い看護師さんは医者に遠慮しますが、ベテランの看護師さんであればそれまでの経験を踏まえて意見をくれるかもしれません。コソッと看護師さんに聞いてみるのもありかもしれませんね。



他に、社会的に病院受診を求められる場合があります。
例えば、休職するために診断書が必要であるとか、あるいは家族から受診するようせがまれて行く場合もあると思います。

診断書については、国家資格を持つ者としての判断が必要となる場面がどうしてもありますので、そのための受診は避けられないと思います。

家族にせがまれる場合はなかなか難しいです。家族が病気の事を理解して、通院の必要性がわかっている場合は良いのですが、中には感情的に受診を求める場合も少なくありません。
この場合には家族も含めて話し合いをしなければ、最悪の場合は主治医も患者も受診の必要性を感じていないのに通院を続ける、当事者が迷惑するパターンがあり得ます。




この記事を読まれた方で、病院受診をされている方はどこに当てはまるでしょうか?
改めて病院受診理由を考えてみて頂ければと思います。
よく分からない、という方は主治医の先生に聞いてみてもいいかも知れません。

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