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書きやすいカルテをデザインする

※はじめにお断りしますが医療者向けの内容になりますのでご了承ください。

2023年現在、皆さんがカルテを書くのは基本的にパソコンの前だと思います。患者さんが居ない場面の方が多いかも知れません。

患者さんが居ない場所で書く理由は何故ですか?
患者さんに知られてはまずいことがあるのですか?
おそらくそうでは無いはずです。

単純に書く余裕が無いからでは無いでしょうか?

同時通訳の方を観ていて驚きます。
テレビでしか拝見した事は無いのですが、聴きながら違う言語で話す。反射的にされているのでしょうが、私にはそのスピードでインプットからアウトプットできるのは理解できない世界です。
また、世の中の大半の方はそれに同意して頂けると信じています。(私の自尊心のために。)

普通に文字を打ち込むとなると、単純にタイピングスピードの問題もありますし、漢字に変換するのに苦労する場合もあるでしょう。
あるいは検査所見をコピーするだけでも手間がかかります。

一方で、診察には一定のルール、リズムがあり、そこまで多岐にわたる内容を記録しないといけないわけでは無いはずです。

そのパターンをもとに、カルテに沿って診察していくスタイルが次世代の形としてふさわしいのではないかと考えます。

かつてはドイツ語でカルテを書いていた、と大学の授業で聞きました。
また、紙カルテの時代には、癖の強すぎる書体で書かれた、少なくともゴシック体や明朝体とは異なる形の文字を解読する技術を身につけるのが必要だった、と先輩医師から聞いた事もあります。

2023年現在は専門医プログラムが統一されつつあり、それに伴って症例報告を書く必要があるため、ある程度はカルテの書き方がパターン化されつつあります。

また、これからの時代、医療もビッグデータをもとに技術、知識が進歩していくことと思います。
しかし、臨床内容はビッグデータには未だ組み込まれる事なく、ある意味で、情報が捨てられ続けている状況と考えます。その事実はとてももったいなく、嘆かわしい事だと感じています。

それが無駄な事だと分かっていて、なぜ続けていけるのか。
恐らく、その事を気付いているのはごくごく一部でしょう。そもそも興味を持たない人が多いかも知れません。
(一般の方からみて、医療職は高尚な考えを持っている、高い知識レベルの人間の集まりだ、と思われる方もいらっしゃると思いますが、私はそうは思いません。あくまでも受験勉強に強いだけで、同時にマニュアル通りにしか動けない人が多い世界、といった印象です。)

全ての言語化できる情報はデータベース化できるはずで、それをまとめない手はありません。私の考えは全く新しい考えでは無く、収束した結果と考えています。こうなるのは自然だよね、と。



データベース化するためにはデータをそれぞれ規定していく必要があります。
イメージとしては別の記事で記載したように、「3色の絵の具で絵を描く」のでは無く、「ブロックを組み合わせて作品を作り上げる」という事です。

人の悩みは無限だと思いますが、人間の体から発生する病気、主訴の数には限界があります。その全てを項目として、選択肢形式にします。自由記載はありません。選択肢にないものがあれば、どこかに当てはまらないのか再考し、それでもなければ新しい選択肢として増えていきます。

病歴も人それぞれではありますが、やはりパターンがあります。
いつ、どこで、何をした時に、どのようになったのか。5W1Hが元で、WHOは基本的に本人、WHYは病気の原因となる、解決すべき問題ですのでその2つは外れます。
病歴とはあくまでもそれらを連ねているだけですので、選択肢化する事が可能です。

自由記述できない事は一見不便に見えるかもしれませんが、そこにまとめていく、思考の仕方を洗練していく事で、共通認識として持てるようになります。無駄が減って他に時間があてられるようになる他、正しい理解につながっていくため、治療の過程で寄り道が減り、患者さんの満足度向上のほか、医療経済的にも有益となります。

パターン化する事による副次産物は他にもあります。これまでは素人が手を出せない領域とされていましたが、事実を連ねるだけなら誰でも行えるため、患者さん自身がカルテを書けるようになります。その結果として日々の細かい変化を気付けるようになったり、解釈モデルの理解につながる他、先ほど同様に医療職のカルテ記載の時間の軽減につながります。

また、パターン化して書きやすくなる事で診療しながらカルテを書けるようになります。
私は消化器内科医ですが、内視鏡レポートは検査が終わってから書いています。腹部エコーの検査も同様です。
それが検査しながら書けるようになればどれだけ楽になる事か。消化器内科に限らず、外科であれば手術所見を同様に書けるようになります。

また、パターン化されたものであればプログラムへ組み込むことも容易ですので、ベイマックスのような医療ロボットを作る足がかりになります。

医療においてパターン化は有限ですのでやる気の問題で十分に解決しうると考えます。

今回は以上です。
他の記事もご覧頂けますと幸いです。
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途中に記載した、「患者さんの満足度向上」について、なぜ「治癒率向上」ではないのか、気になる方もいらっしゃると思いますので後日改めて記載します。

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