西武新宿線と蛙亭
20年正月明け。
上京前に、物件探しで東京に2日間遠征をした。
この2日間、宿は決めずに東の都に向かった。
そう、この2日間の夜を愉しむため。
そして、このあとたまたま同じ路線で住む事になる、いわば西武線の友達と連絡が取れた。
東京で初めて遊ぶ、いわば特別な日。
上京物語1日目である。
だが、今日はいつものソレとは少し違う。
物凄い勢いでその彼女との距離は縮まる。
特に彼女が積極的というわけではなく、なんとなく双方の歯車の噛み合いが初めから上手くハマっている。
その大きな要因の一つがお笑いだった。
芸人がめちゃくちゃ好きだったのだ。
僕の知らない芸人さんを勧めてきた。
当時のお笑いウォッチャーとしてはかなり珍しい出来事だった。
男女コンビの蛙亭。
大阪ではもうすでに人気を博していた、元漫才劇場所属の男女コンビ。
彼女は続けてオススメのネタを言ってきた。
ソレが終わったあと、2人でネタを見て寝た。
「マッチングアプリ」
あくる朝
朝、不動産屋に向かう。
いつもの常套句の「また遊ぼ」を放つ。
いつもこの言葉の中身は空っぽである。
ただ、今日だけはその言葉をめいいっぱい重たくして放ったのを記憶している。
「また遊ぼってよう言うやん?そう言うのんじゃないやつのやつの “また遊ぼな。”」
彼女は笑っていた。
その日は、今までにない気持ちがあったが、それを「東京に初めてきたから」と理由付けて、従来通り「遊び友達」として自分の中で位置付けた。
そこから何度かまた同じように遊んだ。
「最後の日」を除いてどれも楽しかった。
1年後、西武新宿。
「どう?この1年間。何してた?」
「んー。ま、就活とかインターンとか。
あとは遊びも。そっちは?」
「んー。仕事しかしてへんかも。
あ、勿論遊びつつ笑」
「変わってない。。」
「お互いな。」
ーーー
「1年ぶりやったけど、おもろかったわ。
また遊ぼな。」
「んー。やっぱ、なんかもういいかも。」
予想してなかった答えに、虚しさと哀しさとかと同時に、あの最初に出会った日に感じたちょっとした違和感が「東京で初めてだった」とかの理由ではないことにここで初めて気づく。
負け戦だと分かりながら最期をまっとうするためもう一度会う約束を持ちかけた。
モヤモヤを解消したいだけの為だけの日。
自分の保身の為の日。
次の週。
最期に言うべき一言を伝えるだけ。
ただそれだけ。
しかし、そんな経験はもう記憶にない程、昔でしか経験してない。(言えるはずがない)
何も言えずに、2軒ほど新宿の酒場を回った。
言えない、というより、実は、この日も
いつも通りおもろすぎる彼女の返しと酒を愉しんでしまっていた。
結局、言えずに帰ることになった。最低だ。
「で、今日なんで誘ってきたの」
一気に酔いが覚めた。
こんなにもかというくらいシラフまで戻った。
この後何を言ってどうなったかは流石に書けないのでペンを置きます。
※2021年5月のおはなし。
を下書きにずーっと入れてました。
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