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ワンマンツアー折り返しなう

 毎日ではないがまぁ4,5日に一回くらい、思い出したら飲んでいるマルチビタミンのサプリがあって、メーカーによれば一日4錠が推奨摂取量なんだが、何故かキッチンで手のひらに一振りジャラっと出すと3錠出てくることが多く、足りないなぁ、とは思いながらも、たったもう1錠を深追いするほど強迫的に飲んでるわけじゃないからそのまま3錠だけ飲んで終わる。終わるんだが、俺はこのマイナス1錠の積み重ねによって本来より幾分か早死にするのだろうなとそのあと必ず思う。日頃の破滅的な不摂生のことよりもたまーに飲む効いてるのかすら不明なビタミン剤の満ち欠けの方が実感として命に肉薄しているのはいかにもおかしいが、人間って案外そんなもんで、たとえば学業や仕事上の成績のことより身近な人から言われた日常の何気ない一言の方が実感として嬉しかったり悲しかったりしませんか。俺はするね。
 そういやあんまりここで触れてなかったけど、先月の12月6日、メジャー1stとなる「再定義EP」をリリースしたことにより、俺もようやく正式にメジャーアーティストの仲間入りを果たしました。例によって俺が締め切りから逃げ回りすぎて発売を延期したり(本当は11月のサイキックフェスまでには出しておきたかったぽい)、そもそもレーベルからはフルアルバム形式にしたいというオーダーがあったのにも関わらずそれを拒否したというか提出した曲数的に実現不能でEPにダウンサイズしたり等々、1stから先が思いやられまくっているものの、まぁまぁちょっと待ちなさいよと、今日飲む分のビタミン剤が1錠や2錠少なかったからといって騒ぎなさんなと、その内とんでもない量のドデカミンがぶ飲みして次の日のおしっこ真っ黄色にしたるさかいに、と必死に大人たちをなだめている。大人たちとか言ってるけど俺も年齢的には完全に大人なのでへらへら逆張りばっかしてないでそろそろ真っ当に頑張らないといけない。いや、マジで。
 ────だから、というわけでもないがそのEPのリリースツアーとして14ヶ所ほどワンマンで周るのに加え、作品のキャンペーンと称して単独で各地方に赴きラジオ番組に出まくったり雑誌に取材してもらったりしている。色んな場所に行くと、当たり前だがそれなりに沢山の人に出会う。元旦にあった震災では、そのつい一週間前に行ったばかりの新潟や金沢の街並みやそこに住む人たちの顔が次々と浮かんできて、ひとりひとりに連絡を取れない分、少額ながら寄付をさせてもらった。単なる善意の押しつけであって大した役に立つかどうかは知らん。いらなければ銀行で千円札に変えてケツでも拭いてくれ。無事を祈っています。光景が浮かんでくるといえば今回の神戸VARIT.→高松TOONICEという連続の日程でこなしたライブの終演後、高松の街で偶然出会った古い友人たちと朝までしたたかに飲み、今にも倒壊しそうなボロ宿のシングルベッドで少しだけ眠ったあと、キャンペーンへ向かうためにふらふらと乗り込んだ博多行きの新幹線から見た、それはそれは真っ赤な夕焼けが、帰宅してずいぶん経った今でも妙に頭から離れない。まるで一日が終わってしまわないよう、西へ西へと太陽を追いかけているようだった。誰かが言っていたようなつまらん言葉だが、人生ってやつは本当に、何もしないでいるにはあまりに長すぎるし、何かしようと思ったら全く足りない。人間もそうで、独りでいる分には他人なんて誰ひとり必要ないが、みんなでいようと思い始めたら何人いても足りないし、出会ったからには誰も欠けてほしくない。人生のことも友達のことも、ましてや震災や遠い国で起きている戦争のことなんて、どうすればいいのか俺には何もわからない。わからないがとりあえず、ビタミン剤は次からきちんと4錠飲むことにしようと思う。

写真は福岡空港から東京羽田へと帰路につく空路にて
ボロボロの格安中華スマホ越しでも美しい九州の夜景


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