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「無配の出品、なぜいけないのでしょう?」というメッセージへの回答

※ こちらの記事は2021年7月6日にprivatterにて公開した文を加筆修正したものとなります。事の経緯の詳細はprivatterに記載しております。全て約一年前の出来事です。

 私は二次創作をしている一般的なオタクです。約一年前、色々あって『無配の転売やめてほしいね。』という旨のツイートをしました。 

 その後、以下のような匿名のメッセージが届きました。

 同人誌の転売が禁止されているのはなんとなく知っていたけど、無配はどうなんだ?と私も疑問に感じたので調べてみることにしました。また、無配に限らず同人誌の転売禁止等についても詳しく調べたので、ご参考までに。


!注意!
以下の記事は、法律について素人である私がインターネットで仕入れた情報を元に作成しております。間違いも十分あり得ますので、引用しているサイトを確認してください。また、この件について知識を持っていらっしゃる方の意見を随時募集しております。


同人誌転売禁止の慣習的な理由

>> 無配の出品、なぜいけないのでしょう?

 無配は「無料の同人誌」と解釈できます。つまり同人誌転売禁止の慣習的な理由(違法かどうかは別)が無配にも適用されるはずです。

理由① ゾーニングの問題

 一つ目は二次創作の場合だとあくまで同人界隈のファンブックであり、同人世界と無関係の人が公式と勘違いしないように、さらには権利者に通報され、法的措置を採られないようにするためだといわれています。

同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題その1 | ウィステリア・バンデル法律事務所
https://wisteriabandel.com/20190428.html

 要するに、フリマアプリにおいて作品名で検索したときに公式グッズに紛れて同人誌が見つかるような状況を避けたいということです。ただ、現在はSNSに二次創作を載せることが(是非は置いといて)ほぼ当たり前になった時代なので、SNSが普及していなかった時代からの名残のような慣習と解釈される場合もあるでしょう。つまりこの理由だけだと「お前がtwitterに二次創作載せてるのは棚上げかよ。」となるということです。

理由② 金銭的な問題

 二つ目は、金銭的な問題です。同人誌の多くはお金を出して買うわけですが、別に同人作家が儲けるわけではなく、お金をもらうのは、投下資本(印刷費、参加費、配送費、交通費、宿泊費等)回収のためです(中にはがっつり稼いでいる同人作家もいるようですが)。転売等は、同人作家の投下資本回収の機会を奪うことになります。

同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題その1 | ウィステリア・バンデル法律事務所https://wisteriabandel.com/20190428.html

 これは無配には当てはまらないですね。ただ、同人誌の出品が後を絶たない現状を考えるとこの考えは非常に重要だと言えます。

理由③ 営利目的の転売行為にあたる

 三つ目は、営利目的転売行為等です。(中略)本来は正規値段で買えた買い手(読み手)の気持ちを踏みにじる行為であり、同人作家として到底容認できないところです。

同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題その1 | ウィステリア・バンデル法律事務所https://wisteriabandel.com/20190428.html

 無配の話に置き換えると、『本来は会場で無料で貰えるところを転売ヤーが転売目的で取っていってしまうため、欲しい人に行き渡らないからダメ。しかも無料であったものに値段がつくことは、頒布元の気持ちを踏みにじるものだ。』というところでしょうか。

 以上三点が「同人誌転売禁止の慣習的な理由」です。無配の転売禁止については理由①と③が挙げられるため、慣習的に無配も転売禁止であると言えそうですね。


同人誌転売の法的問題

 それでは法は適用されないのか?といったところを解決していきたいと思います。

転売は原則自由

 同人誌の頒布は法律上売買契約にあたります(民法第555条)。売買契約である以上、同人誌の所有権は買った時点で売主から買主に移転するため、買主が同人誌の転売等しても、所有権の範囲内ですので原則自由となります。また、著作権(譲渡権)侵害になると思われるかもしれませんが(著作権法第26条の2第1項)、いわゆる消尽にあたりますので、著作権上も問題ありません(同条第2項第1号)。

同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題その1 | ウィステリア・バンデル法律事務所https://wisteriabandel.com/20190428.html

 同人誌を買った人もしくは無配を受け取った人に所有権が移るため、転売等は原則自由になります。

しかし慣習法によって法的措置を取られる可能性がある

 「転売禁止等」は同人界隈の独自のものとはいえ、常識化されたルールです。そうすると、「転売禁止等」が一種の慣習法として一定の法的拘束力を認める余地があります(民法第92条参照)。

同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題その1 | ウィステリア・バンデル法律事務所https://wisteriabandel.com/20190428.html

 つまり、上で述べた「同人誌転売禁止の慣習的な理由」が慣習法となり、同人誌の転売において法的措置を取られる可能性があるということになります。先ほど「無配を無料の同人誌と解釈できる」と述べましたので、無配の転売においてもこの慣習法が適用される可能性はあり得ると思います。
 慣習法とは何ぞや?という方はWikipediaなどをご覧ください。

慣習法(かんしゅうほう)とは、社会の成員の間に存在する一定の慣行のうち、その慣行が成員によって法的拘束力があるものと意識されているもの(法的確信を伴うもの)をいう。

Wikipedia|慣習法
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%85%A3%E7%BF%92%E6%B3%95

 また、余談ですがオークション出品における画像の掲載に関して次に述べる条件により著作権侵害に当たる場合があるようです。びっくり。

 原則として、転売のためオークションサイトに表紙を掲載することは、著作権侵害にあたらないとされています(著作権法第47条の2)。もっとも、32,400画素を超えることは許されず(同法施行令第7条の3第1号、第2号イ、同法施行規則第4条の2第1項第2号、第2項第1号)、それ以上の画素数でアップロードされていた場合、著作権侵害にあたる可能性があります。

同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題その3 | ウィステリア・バンデル法律事務所
https://wisteriabandel.com/20210115.html

「同人誌転売禁止の慣習的な理由」が慣習法となる条件

頒布元が転売禁止を明言する

 慣習法として「転売禁止等」が保護されるためには、少なくとも実際に買う前に、買い手(頒布先)が、「転売禁止等」の措置があることを知る機会のあったことが必要

同人誌の転売禁止・オークション出品禁止と法律問題その2 | ウィステリア・バンデル法律事務所
https://wisteriabandel.com/20190430.html

 つまり、先に頒布元が「これは転売禁止です!」と宣言しておかないと、慣習法の適用には至らないということです。「転売禁止等」の宣言の例として以下が挙げられます。

  1. 奥付に「オークション出品禁止」などと記載する。

  2. 同人誌即売会において、POPなどの見えるところに、「本サークルの頒布物はすべて転売禁止です」などと掲示する。※ 掲示を証明できるようスペースの写真を撮っておく必要がある。

  3. pixivやツイッター等SNSで事前告知する。※ 転売者がそれを閲覧しているかどうかの証明が必要。

 このうち1が最もされているかと思います。なので、もし転売した無配の奥付に「転売禁止」などの文字が記載されていれば、法的措置をとられる可能性はあり得ることになります。

無配の転売を推奨しないその他の理由

 上記を読んで「それでも無配を転売するんだ!」という方はいらっしゃらないと思いますが、念の為に無配の転売が禁止されるその他の理由を挙げておきます。ちなみにこれらは「同人誌 転売 禁止 なぜ」などの簡単な単語で検索するだけで出てきます。これからはメッセージを送る前に自分で調べてくださいね!

理由① メルカリで同人誌を出品すると違反になる

 どのようなものが違反になりますか?(中略)許諾なくキャラクターなどを使用したハンドメイド品、同人誌など

知的財産権を侵害するもの(禁止されている出品物) - メルカリ スマホでかんたん フリマアプリ
https://help.jp.mercari.com/guide/articles/877/

理由② 古物商許可がないと逮捕される可能性がある

 警察から営利目的の転売とみなされると、古物商許可を得ていない場合逮捕されることがあるそうです。ただし無配にこれが適用されるかはわかりません。専門家に聞いてください。
 参考:同人誌の転売は違法? ► 古物商許可の教科書 (kobutsukyoka.jp)

 以上の通り、同人誌ならびに無配の転売にはリスクが伴います。そういった点から推奨しません。
 「どうしてもお金が欲しい!どうせ捨てるならお金にしたい!」と強く願うのであれば、同人誌専門の中古ショップへ売りにいきましょう。(中古ショップは基本的に古物商許可を得ています。)


公式グッズの特典の転売についても、同人誌の場合とほぼ同じ

>> アニメイトなんかで特典貰って出品するのもいけませんか?

営利目的の場合、古物商許可がないと逮捕される

 アニメグッズの場合(特典も結局はアニメグッズですよね)、営利目的でない転売であれば可能で、営利目的の場合は古物商許可が無いと逮捕だそうです。同人誌と基本は一緒ですね。ちなみに営利目的かどうかは警察が判断します。あなたではありません。
参考:アニメグッズの転売ビジネスの始め方 ► 古物商許可の教科書 (kobutsukyoka.jp)

ブランドのノベルティ転売に対する経済産業省の回答

Q、ブランドのノベルティでもらったマスクを転売することは違法になるのか?
A、転売行為自体は禁止していない。しかし定価の商品金額に利益を上乗せすることは禁じられている。

ノベルティのマスク転売について経済産業省と厚生労働省に電話して聞いてみた。│ms2300Blog

 とあるブランドのノベルティのマスク転売における経済産業省の回答は転売がホワイトであることは言い切っていません。グレーゾーンっぽいです。
 ちなみに一年前この文章を書いたときは引用元のリンクがあったのですが、今は存在していないようです。個人ブログですので信憑性には欠けます。
 また「特典」ということでしたので「映画のパンフレット」の転売のケースを調べましたが、違法であるかはわかりかねます。営利目的での入手および転売の場合はやはり古物商許可が必要なのかもしれません。

 以上から、「特典の転売」はその目的に依存して合法・違法かが判断されるようです。

(2022/07/27 追記)
 特典やノベルティについて調べたところ『販売を促進するために配布するグッズ』という位置づけで配布されることが(当たり前ですが)ほとんどのようです。そのため購入者限定特典などを転売することは、すなわち『販売促進の妨げをしている』ことになります。このことが法に触れるかはわかりませんが、慣習的には禁止されるでしょう。


損とは?

>> 無配なんですから誰も損してないのに

 ここからは主観的な意見です。

 マロ主さんのおっしゃる「損」の定義を金銭の面のみで限定すると「損」をする人はいないかもしれません。ただ頒布元から言わせていただくとめちゃくちゃ不快です。この感情を簡潔に表すと、友達にあげた誕生日プレゼントが翌日フリマアプリで出品されていた(元値より高額で)という感じでしょうか。誕生日プレゼントは基本無料で渡しますが、購入にはお金がかかりますよね。

 無配も無料でお渡ししますが、印刷などである程度お金がかかっています。中にはおまけでシールなどを付けたりすることもあると思います。全くのタダで無配本ができているわけではありません。ご存知でしょうが。
 ですので、自分の同人誌ならびに無配が転売されていることを知った時の感情は「損」であると私は考えます。

 また、上で述べた通り、転売目的で同人誌および無配が回収されてしまうと本当に欲しい方に届きませんよね。それも「損」になるのではないでしょうか。

 要するに、「ひとの嫌がることはしちゃダメだよ!」という、小学生でもわかるお話なわけです。

 難しすぎましたかね?


結論

>> 無配の出品、なぜいけないのでしょう?

  • 同人界隈の慣習が特定の条件で慣習法となり法的措置を取られる可能性がある。

  • 特定の条件とは、奥付に転載禁止等の記載があるなど、転載が禁止であることが宣言されていること。

>> アニメイトなんかで特典貰って出品するのもいけませんか?

  • 同人誌、アニメグッズに関わらず、警察から営利目的と判断された場合には古物商許可が無いと逮捕される。

  • 無配、特典などの無料のものは上記が適用されるか定かでないが、経済産業省は『グレーゾーンですよ』という旨の回答をしている

>> 無配なんですから誰も損してないのに

  • そもそも人が嫌がることをしてはいけない

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