思ったこと

札幌で開催予定の男性向けアニクラについてジェンダーの観点から議論が発生していた。一部始終をざっくり追っていて、両方の意見側のTwitterスペースを聞いていた。

ざっくりとまとめると、男性のみが楽しめる(逆に女性が来てしまうとイベントコンセプトが崩れたり、単純に女性向けではない表現・内容が含まれているみたい)DJイベントを開催するにあたり、東京都内で開催されている(た)コンセプトのイベントを踏襲して「入場料 女性 5万円」という価格設定を行い、それを踏まえたうえで「女は来るな」とツイートでイベント告知に添えて発言。
そのイベント内容・告知が女性差別・ミソジニーを助長する内容なのではないか?と、同じ地域で活動するが別界隈(だよね?)の女性DJが意見したことでピンポイントで「男性向け」イベントについてジェンダー的な観点からの議論が発生したって感じ?合ってるよね?

以下は自分が本件に関してこういう事が起こってるんじゃないか?っていう予想なので本当かは分からないし、僕の意見が正しいかどうかもわかりません。でも全く違ったら僕は結構凹んじゃいそうです。

小さい規模ながらもイベント主催者として、こういう観点の議論がアニクラまでに降ってきたかあとは思った。自分の印象だけどアニメ好きでクラブに通うような方々の中には「女性が苦手で~」って方もいるとは思うけど、女性蔑視・女性差別な意識を持って参加している人は居ないんじゃないかなあとは思う。そういう意識を持っていたらもうちょっと攻撃的な形になると思うんよね。あくまで「ギャグ」という意識で尖った告知をしたんじゃないかなあと感じた。

あとイベントコンセプト的に女性が来場すると多分イベントが大事にしている柱が崩れてしまうのだろう。これはゾーニングのようなもので、遊びに来て不愉快な気持ちになるのならそもそも遊びに来ないほうがいい、という意味合いだろう。コンセプチュアルな空間作る時って中途半端にやるより振り切った方が面白くなる事は多いし。

男尊女卑に捉えられかねない告知文やシステム設定って言っても結局身内の悪ノリレベルで、いわゆる学校の部室みたいな雰囲気なんだろう。ある程度クローズドな空間であれば許されてるけど、地方のコンパクトなカルチャーのサイズ感の中で告知する際に「身内向け」の外を想定出来てなかったから今回のような騒動が発生したのかなあと思った。

女性に対するゾーニングが必要な程のホモソーシャルなイベントをやるという行為そのものがダメ、という意見はあるし、世の中がジェンダー平等に動いていく中で時代に逆行しているのは間違っていないと思う。
僕は男性なので実感することは難しいけど、女性が日常生活をしている中で本人に否のないミソジニーや差別的な行為・意識に囲まれており、常に誰かの悪意が自分の方向を向いているのではないかって思っているのかと想像すると、そういう意識から解放されて楽しめるクラブカルチャーの中でさえ、そういう気持ちを持たないといけないのか…と幻滅してしまう気持ちがあるのかと思う。まるで裏切られたような。
これはもう当事者にならないと分からない。だからどういう立場であっても、問題提起するのはとても大事なことだと感じる。確かに誰かが言わないと気づかない。こういう事例がダメなことだって啓発されるようになったのも最近だし、少しずつ社会が改善されていくのではないだろうか。

僕個人としては、差別やヘイトのような誰かが不幸になることを願った発言や行動、場所を作るのは嫌だし、自分のイベントでこういう事は絶対しないように気をつけている。
でも、クラブカルチャーの中でも取り分けアニクラのような界隈に関しては正直ナンパ行為もあまり見ないし、他の界隈よりは誰もが自由に遊べる場所なんじゃないかって思ってる。誰も差別やミソジニー・ミサンドリーな意識を持っていないから、そんな言われ方をして批判される空間じゃない!ってそのカルチャー内で活動している方(男女問わず)から反発があったんじゃないかなあと。
さっき言った身内ネタの言葉尻の強さが不適切だっただけで、意識内にそんな気持ちが微塵もない人が思ってもいない事で急に批判されたら、まあそれを言ってくる人を忌み嫌うよね。お客様でもない人が喧嘩売ってるようなもんだから。攻撃って捉えられても仕方ない。

あとアニクラならではの見方かもしれないが、仮に主催やお客様にホモソーシャルな意識があったとして、それが実際には生きていない(存在しない)アニメやエロゲーのキャラに向けられるのは、果たしてそれって女性差別なのかっていうのはずっと悩んでいる。特に後者ってキャラの目的がそういうのだったりするじゃん。分別の付く大人が全てを理解したうえでコンテンツに触れる訳じゃん。そこにジェンダー論で突っ込むのってそれ野暮な話じゃないですか?って思うし。全員が品行方正で正しいことだけ思って生きている訳じゃないし。
突っ込む行為の裏にミサンドリーな意識が無いですか?もしそうだった場合、男性に対する差別や蔑視と思われてもおかしくないですよね。男性の方が優位な社会だから対ミソジニーは尊重されて、対ミサンドリーは不意にされる、っていうのも変だなあと思う。そういうコンテンツに関わって生きている女性を名誉男性って批判するのもとっっっても嫌い。

今回の件とは直接関係はないかもしれないけど、ジェンダーに関わる話が出ると思い出すことがある。僕がホモソーシャルな社会に関して強く思うこと、以前TBSラジオの澤田記者がラジオで伝えていたエリートを輩出する男子校に伝統として残る「優れた男子が社会を運営していく」マインドの危険性について。

「弱者の味方」ではなくて「自分がトップになり女子供や弱者を率いていく」強者の考え。男子校自体は減っているが、その伝統を受け継ぐ人が社会を設計し運営し引っ張っているから、結局のところ根底にジェンダーも含むあらゆる事象での平等というのが達成しづらい社会になっているんかな、っていう。
これってもう世代が変わることでしか解決が出来ないんだろう。だからじわじわと社会が動いていっているんだろう。

こういう、強者のマインドを強くするためのホモソーシャルな社会は僕は大嫌いなのですが、今回の件に話を戻すと、あくまで部室の延長線みたいな感覚で、仲良い男子だけが集まってワイワイ楽しむことを目的にした空間まで、ホモソーシャルな空間と決めつけてしまうのはちょっと早計、というか不自由というか、それは逆にミサンドリーな意識が出ていないか?と思うのです。

問題提起した側のスペースを聞いていると、もうその地域のクラブには行けない、界隈に一石を投じたことで嫌われたんじゃないか?もう呼ばれないんじゃないか?って言っていて、そりゃそうだよなあDJイベントって結局人の繋がりだからなあ…じゃあイベントをやれば良いよ!とオーガナイザー観点から思っちゃった。(それは別の話)
まあ身内向けのイベントであっても視点を一歩引いたところから見て、色々とケアをしつつ告知や開催まで持っていく意識と思ってもみないことを考える人が居るということ、そしてお互い意見が合わない場合も、意見が合わない相手のことも考えること。大変なことだけど今後必要な視点なんじゃないかなあと思っています。理想論だけどさ。そう思うと意見が合わないからブロック、みたいな断絶をする行為って楽だけどもう一生元には戻らないのよね。

僕は当該イベントの開催は行うべきだと思ってます。
僕も男性ばかりが集まるクラブイベントで友達とわいわい遊ぶのって大好きです。(何故か分かりませんが僕がやるイベントって入場料男女一緒なのに女性が遊びに来ません…涙)
コンセプチュアルなイベントをやるに当たって尖った設定や目立つ告知等で個性を出すのはイベントをやる側として大事な要素のひとつだと思います。また、アニクラの雰囲気的に男女差別やミソジニー、みたいな考えを持った人は僕の肌感覚ですがほとんど無いんじゃないかと思っています。

ただ、あのコンセプトのパーティーが生理的に無理とか、男女差別だって思うのもわかる。誰にでも告知に幻滅する権利があり、今の社会の流れにそぐわないって主張する権利もあり、遊びに行かないイベントに意見を言う権利もある。
ジェンダー的視点からもあらゆるイベントのことを考える時期が来ている、ということを理解し踏まえた上で、お互いのことを考え、理解しようとする気持ちが大事なんかなあ、と思いました。自分ももっと勉強しないと。

最終的には愛と優しさだって「エブエブ」が言ってただろ。

エブエブアカデミー賞7部門受賞おめでとう。
あんなムチャクチャな映画がアカデミー賞作品賞取れるなんて思ってもみなかったよ。

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