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自分らしさ

2019年10月20日(日)、やらまいかミュージックフェスティバルに出演しました。

やる気はあるのだけど、「やる気があります!」という表現が素直にできない子がいました。そのことを、環境に恵まれていないからだと思い込んでいる節がありました。だから、なかなか殻から抜け出ることができず、よく練習中に泣いていました。自分が思ったようにコトが運ばないことにストレスを感じていたからです。

わたしは慰めも励ましもせず、まずは、味わうことや自問、内省する時間をかけるしかないと思っていました。

徐々に顔つきが変わってきて、レッスンの中で、「周りはどうでもよくて、自分が自分なりに吹っ切ってやれることをやったときの充実感」を感じているようだと思える時間ができてきました。

そういうときにすかさず、「今日、○○のとき、自分のことだけ見つめて歌っていたでしょう、そういうときにYらしさが出てて、すごく良かったよ」と伝えました。

何度か繰り返したあと、お母さんに「ソロを歌わせようと思うけど、衣装の協力をしてもらえるか」と聞きました。了承を得たので、「わたしからタイミングを見て話すから、まだ言わないで」とお願いしました。

次のレッスンのとき、ひとりだけ別室に呼び出して、「ソロを歌ってみる?」と聞きました。

「うーん・・・、できるかどうか分からない」と言うので、「やりたいかやりたくないか」と聞いたら、「やりたい」と答えました。それで、わたしは「じゃあ、やる。できるかどうかはそれから考えよう」と言いました。「あなたならできる」とは言いませんでした。自信のない子だったから、わたしがそう言ってしまうと、いつまでも誰かの後押しを必要としてしまいます。

「ウケを狙う役だから、笑われるけど、それは大丈夫?思い切ってお客さんを笑わせることができる?」と言うと、「大丈夫。思いっきりできる」と言います。

あとから、「先生、ひとつ聞きたいんですけど。どうして、わたしにソロを歌う?って言ったんですか」と聞いてきましたので、みんなに向かって、このように答えました。

「先生は、歌がうまいというだけでソロを取らせることは絶対にしない。自分のことだけを見つめて、自分なりの表現ができる準備が整った子だけに、今だ!というタイミングで声をかけるんだよ」

本番まで、ひたむきに自分と向き合い、ひとつひとつハードルをクリアしていきました。自分の出番ではないときの振る舞いも見事でした。実は、半年前にはディズニーランドのオーディションには落ちてしまった子だったのです。理由は、「人がどうか」ということが動機になっていたからです。それからいろんなことを経験し、泣きながらも自分の中で反芻し、内省し、振り返り、自分に向き合った結果だと思います。

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ボヘミアン・ラプソディでは、「この子しかいない」という子にソロを取らせました。他のパートは細かく指導しましたが、この子にだけは、「何も考えずに思った通りに歌えばいいから」と伝えてありました。そのように伝えることが、いちばん、この子の良さを引き出せるからです。

細かいことをあれこれ決めて、その通りにやらせようとすると、失敗したり忘れたりして、この子の良さが半減してしまうのです。だから、たとえば立ち位置やどのタイミングで歌い出すか、移動するかなどは、周りの子に覚えさせて、「もし忘れていたらフォローして立たせて」とお願いしてありました。そのやり方がいちばん収まりがいいのです。収まりがよければそれでいいじゃありませんか。

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もう声変わりが始まっているので、この美声が聞けるのも最後でしょう。

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ディズニー演目には出演しない男子二人に、銅鑼(どら)を作って欲しいと頼みました。きっと楽しく作るだろうと思って。でも、そのときにわたしが考えていたのは、ダンボールに色をつけた程度の「オモシロ銅鑼」でした。

ところが、↓これが高校生の考えた設計図でした。予想外に本格的!!!

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板金屋さんのドラマーに相談したところ、わたしたち大人の意見は「たぶん運べない/高くつく/作れない」でした。

「でもさー、自分で考えた通りにやらせたい気持ちもあるんだよね」「失敗してみないと分からないしね」「どうする?」「予算と期限を与えて、運べるっていう条件も満たして作らせよっか」「うん、それでたぶん無理だから、こっちでも他の方法考えとくわ」

こんなやり取りがあり、「好きにやらせてみよう」ってことにしたのです。

そうしたら、レッスンは7時からなんだけど、「6時から行って制作してていいか」とか、練習の隙あらば「作っていいか」って、結局、仕上げちゃいました。持ち運びもできるし、終わったら解体して元の衣装ハンガーにできます。ステージの練習よりずっと楽しそうに優先してました(笑)。

あー、よかった。「そんなの無理だから大人のやり方でやんなさい」って言わなくて。仕事でも、自分の経験だけの判断が正しいに決まってると思い込んで、若い子のアイデアを潰してしまうことってあるよなーと思いました。

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着色までしたら、本当に本格的なものができました!ちなみに音は鳴りません。音源をアテてます。

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本番中は、あれこれハプニングがありましたが、「何が大切なのか」「何に向かって判断するか」を伝えてありましたので、いつもの通り、お客様にはバレずに子どもたちが自分で考えて対応しました。

ディズニー演目で前列に立つ子が、帽子を持っていませんでした。本番中にそれが分かり、急遽、最後列の子に帽子を貸してもらいました。

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わたしは、こういうときに「誰の帽子を借りるか」ということも、最適な子を選びます。「この子なら帽子がなくてもいい」とかいう理由ではありません。貸してもらう子にとっても、成長を考えます。

最後列は、本当は一段上に立つ予定だったのですが、急遽、前の大きなお姉ちゃんたちの後ろに立つことになりました。客席からはほとんど見えなくて、楽しみに来られた保護者さまには申し訳ないなぁと思いました。

でも、子どもたちは手を抜くことも腐ることもなく、自分たちにできることを精一杯やり遂げていました。最後列で盛り上げる自分たちに誇りを持っていたからだと思います。それは何故かというと、「全体をどうお客様に見せるか」ということを考えて、それぞれが自分のポジションについているのだという自覚があるからです。

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ひとつのステージにおいて、前に立って目立つことばかりが花形ではありません。ひとりひとり、適任のタイミングがあります。そのポイントは常にひとつです。それは「自分らしさ」です。

自分らしさを尊重されたとき、子どもは、どんな役であっても誇りを持って全うします。

全員が自分らしく誇りを持って歌ったステージをぜひご覧ください。

1.真っ赤な太陽
2.ボヘミアン・ラプソディ
3.A Disney Silly Sing-Along
4.Friendship Favorites

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