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旅立ちの日に

先日、わたしの音楽教室ミューレで、卒業式を執り行いました。高校3年生にあたる歳の子が3人、ついに教室を退会したからです。どの子も2歳からず〜っと通ってました。

「どうしよう、先生、完全にやめ時を失った!」と言っていたので、「何かけじめをつけて、引き際を考えなさい」と伝えたところ、最後に歌を仕上げて、みんなの前で発表して終わる、と決めました。それで、日曜日に集まって卒業式をやることにしたのです。

卒業式の内容は、在校生が考えました。わたしは「焼肉でも食べに行く?」って言ったんだけど、「みんなで作る」とのことでした。

メニューを考え、スマホでだいたいの相場を調べ、予算を立て、調理器具を誰がどのくらい持ってくるかも、全部、中高生が決めました。(わたしはチェックすらせず。とんでもない見込み違いも面白いから)

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在校生は朝9時に集合し、買い出しに行ったり、会場を飾ったり、卒業証書を作ったり、胸につけるお花を作ったり、楽しそうに準備をしていきました。感心したのは、今回、卒業する子がいなくなったら一体、どうなっちゃうんだろうっていうくらい、その下の子たちを頼りないと思っていたけど、ちゃ〜んと世代交代して、次の学年たちが、これまでに見たことないくらい、積極的に取り仕切っていたことです。

様子を見ていて、いいタイミングで実行委員長と副委員長、会計を任命しました。こういうときのわたしの「子どもの見る目」にはとても自信があります。適任というだけではなく、「今、任命したら、この子は伸びる」という子を見つけるのがうまいと思います。

会計のやり方は、「もし、これから学校祭などをやるときに役立つから覚えておくといいよ」と、教えました。お金のことなので、ここだけ、大人の手を入れました。

料理は、わたしは本当にひとつも手伝いませんでした。式の内容も、わたしは何も口出ししませんでした。ちゃんと司会を立て、いい内容でした。証書を渡し、在校生、卒業生それぞれの言葉(先生に怒られたブルグミュラー、ブルグミュラー!みたいな笑)、花束贈呈、校長先生からの言葉などなど、ちゃんと式典になってました。

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わたしから卒業生に伝えたいことはいつも同じで、「生きていく先に、もし誰も味方じゃないと思うことがあったら、ミューレを思い出して、絶望する前に来なさい」ということです。普段は思い出しもしなくても、その言葉だけを覚えていてくれたらいいです。

式が終わったあと、昔の発表会DVDを見て、うろ覚えで演目をやってみました。グダグダで、大爆笑。年度ごとに、「このときは客席で見てた」「このときは別な演目で出た」「このときは参加した」など、出演した子がそれぞれで、自分が出た演目に加わり、「全然覚えてな〜い!」「この演目、好きだった!」など、本当に愉快そうに思い出話をして歌い動く姿を見て、「こういう幼なじみがいるのって、本当に素敵なことだなぁ」としみじみ思いました。

当時はまだまだ小学生だった頃の演目を楽しそうに大きな体の子が再現するのを見て、先生としては、本当に感無量でしたよ。ムービーを撮ったので、何度も何度も見返しています。内輪ウケで、全然面白くないと思いますけど、雰囲気がとても良いので、ご紹介します。(本人たちは嫌がると思うけど)

食事メニューは、鍋(キムチ鍋と寄せ鍋)、焼きそば(塩焼きそばとソース焼きそば)、ホットケーキ(生クリームとフルーツでデコレーション)、りんごを用意していました。食事タイムが終わった後は、みんなで花火。

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↑この写真は、自撮りが上手な中高生たちにわたしが混ざったんだけど、わたしだけ盛れていないと、子どもたちが大爆笑したものです。先生を笑いものにできるっていうのも共通の思い出がある子どもたちのいいところですよね。

余った食材を食べ切ったり、持ち帰ったり、炊いたご飯をおにぎりにして分けたり。洗い物も掃除も完璧。見事な手際で片付けてくれました。あまり大きな声で言えたことじゃないですけど、朝9時に集まり、最後の子が帰ったのが夜の11時でした(汗)。

この子たちがイベントを企画して片付け終わるまで、中高生にありがちな揉め事は一切起こりません。役割分担も自然にうまくいって、「やりたい子がやれることをやる」ことで収まります。子どものまんま、それぞれのありのままを認め合って大きくなっているからです。誰が何が苦手か、みんな分かっているから、無理をさせるってことがなく、全員が自然体。誰も無理をしていなければ、諍いは起こらないのだと思います。ついでにわたしも自然体なので、別に何も世話しません(笑)。

10年ほど前、この子たちが小学生のころ、初めて20人ほどの子どもたちを集めてイベントをすることができたとき、「こんな風に、いろんな学校の子が分け隔てなく集まって、ひとつのことをやるのが先生の夢のひとつだったから、ついに実現して本当に嬉しい」と泣いてしまったことがありました。

それから10年経ち、今は何もしなくても中高生が集まってイベントしてくれるようになりました。わたしは、遠巻きに子どもたちを見ているのが好きです。

最後に、わたしの大好きな動画を見てください。すっかり片付けも終わり、「早く帰んなさーい!」と言った後のホール内の様子です。中1から高3まで、年齢も学校もバラバラの子たちが、まー楽しそうに風船で遊んでます!窓からこっそり撮影しました。立派に歌い上げるステージの様子よりも、わたしはこちらの姿の方がもっと好きかもしれません。

仲間外れとか陰口とかとは無縁の世界。お互いがお互いを尊重して、応援し合って、それぞれの道を見つける過程。こういう中高生の世界が見たかったのです。

またひとつ、夢が叶いました。

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