大洋ホエールズに入りたかった

 子供の頃、プロ野球選手になるのが夢だった。小学生の頃から西武ライオンズの試合を観に行き、必死に黄金時代の選手達の応援をしていた。また、日曜は父とキャッチボールをするのが楽しみだった。私のコントロールが最悪のボールを彼は難なく受け止めてくれていた。今となっては反対の立場になってしまったが、それ位に私の野球熱は強かったということである。
 そんな中、小学校の仲間と遊んでいた時、「どのチームに入りたいか」という話題になった。巨人が圧倒的な人気だった中、私だけが「大洋ホエールズに入りたい」と言った。
 勿論、他の子供達は「どうしてそんなチームに?」と訊いてきた。それに対し、私は「弱いから俺でもレギュラーになれるかも知れないから」と、非常に失礼な返答をしたのであった。勘違いも甚だしいものである。
 しかし、今になってそのエピソードを振り返ると、意外と自分は身の丈に合った生き方をしていると思わされる。当時、肥満体で運動神経も悪かった私は間違っても巨人や西武を挙げることができなかったのだ。それに、体育会系ではない我が身を頭に入れると、緩そうなチームを挙げたことも納得できる。人々は子供に「夢は大きく持て!」と言うことが多いものの、私なりの大きさが大洋ホエールズだったのである。
 まあ、その頃はプロサッカーのリーグができるのは夢のまた夢だったこともあり、子供達はプロ野球に夢を託していたことも頷ける。その中で、大洋ホエールズを選んだ私は何か諦観のようなものを抱いていたのではないだろうか。また、その後の情けない生き様を予言していたような気もする。野球選手どころか普通のサラリーマンとしても通用しなかったことを考えると、将来を悲観視していたのかも知れない気がして恐ろしい。

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