『トト・ザ・ヒーロー』の面白さ

 少し前まで、私は映画オタクだった。観た作品を勝手に評論し、ノートに記していた。他の人からは「暗い」と言われていたが、我関せずとばかりに崇高(?)な作業を続けていた。
 そんな中でも、私にとって好きな作品のベスト3に必ず入る映画がある。『トト・ザ・ヒーロー』というものだ。そこまで有名ではないので、あまり日常会話でその題名を口にすることはないものの、心の中では我が名作として存在している。
 しかし、その『トト・ザ・ヒーロー』には難点がある。「どういう風に面白いのか?」という問いに対して、明確にそれを表現することができないのだ。
 例えば、これが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』等の誰もが認める名作であるならば、幾らでも話が弾む。だが、『トト・ザ・ヒーロー』に関しては、どうしても説明することが難しい。そして、最終的には「世界観がツボだった」という誰にも伝わらないような結論に達するのである。ある意味では評論家泣かせの映画だと言えるだろう。
 さて、そんな『トト・ザ・ヒーロー』であるけれども、一度だけ知り合いの森山君にその作品について詳しく語ったことがある。けれども、「ほら、人生って自分では辛いことばかりだと思ってるけど、他人からしたら羨ましいってケースがあるじゃない?そんな映画。え、ストーリー?いや、細かいことは気にしないで観て欲しいんだよ。話は地味でも何故か心に残ることが有り得るんだし・・・・・・」というように、大失敗に終わった。そんなことがあってから、私は声高に『トト・ザ・ヒーロー』が好きだと言えなくなってしまった。
 ただ、個人的な映画体験としては素晴らしいものだったと断言できる。どんなにあらすじを説明することが難しい作品でも、個人的に出会えたことだけでも素晴らしいと感じられる。そのような魅力が『トト・ザ・ヒーロー』にはあるのだ。
 以上、ここまで書かせて頂いたけれども、やっぱりこの映画の良さを伝えることはできなかった。もう「騙されたと思って観ろ!」と無理強いをするしかないのだろうか・・・・・・

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