再生数13万回の悲劇

 その昔、私はMySpaceというSNSで自作の楽曲を公開していたことがあった。日本では全く知られずに終わったサービスであるが、意外と海外の方々から私の音楽を気に入って貰えて、その中の"Afraid What"という唄が13万回の再生数を記録した。因みに、少し前に同題の詩をアップしたけれど、こちらはその曲を日本語訳にしたものである。
 これによって、私はある種の成功体験を得ることができた。数々の人達がファンになってくれ、名前の知れているバンドからもフレンドリクエストがきた。また、素晴らしい才能を持った絵描きの方から多くのイラストを提供して頂けたのも、自らの活動を肯定されたような気分になった。そういったこともあり、音楽で喰って行けるのではないかとも思うようになった。
 しかし、現実はそんなに甘くはなかった。怪しいインディーズのレーベルから「CDを作りませんか?」といった誘いばかりが増え、自分の知っている限りのレコード会社からはオール無視を決め込まれたのである。勿論、私が「金ならありません」と返すとそれ以降のメッセージはなく、それでも、奴等は様々な手段で私をカモにしようとしていた。正直、これが嫌で音楽から足を洗ったと言って良いだろう。
 今になって考えると、その13万回という中途半端な再生数が悪かったような気がしてならない。通常、YouTube等で話題になるレベルの動画はそのケタが違うし、その位はないと生活を維持するのが難しいようである。それを頭に入れると、私は自費出版レベルの域から出ていないということを認めなければならない。
 余談だが、私が楽曲制作に対する意欲が失われたと同時に、MySpaceというSNSは衰退してしまった。今でもあるのかどうかすら分からない。本当にバブルが弾けたような体験だった。少しでも音楽に対する情熱が残っていたら良かったものの、本当に燃え尽きてしまったのだから仕方がない。要するに、私にはプロになる素質がなかったのである。
 ただ、自分の音楽を評価してくれたフレンドとは今でも他のSNSで繋がっている。それだけがせめてもの救いだろう。本当に仕方がない話だが、天狗になって騙されなかっただけでも善しとしなければいけないのだろう。

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