「こんな会社にしか入れなかった俺達が悪い」

 昔、新卒で入った建材メーカーで先輩社員に愚痴を言っていたところ、その人から「こんな会社にしか入れなかった俺達が悪い」と一蹴されたことがある。その時、私は「俺はここ以外からも内定を貰っていたし、選択する権利は充分にあった。採用担当の嘘の数々に騙されなければ、絶対にもっと明るい未来が開いていたはずだ」と思っていたが、その後のあらゆる企業で氷河期世代特有の洗礼を浴びることとなる。
 例えば、菓子の量販店に入った時は精神面だけでなく体力面でもボロボロになり、「このまま働き続けると絶対に過労死する」と考えてしまうレベルにまで陥ってしまった。本当にこの頃は休みと言う休みが存在せず、倒れるまで動きっ放しの状況を強いられ、文字通りの『生き地獄』を味わった。誰からも「どうしてそんな会社に入ってしまったの?」と訊かれる程であったものの、その時になって初めて「こんな会社にしか入れなかった」という言葉が重く圧し掛かった。
 その後、障害者雇用も含めて数々の職歴を作ってしまったけれども、その中できちんと労基法を守っていた企業はゼロである。そう、建材メーカーの先輩社員からの「こんな会社にしか入れなかった俺達が悪い」との一言がいつまでも残り続けているのである。恐らく、これからもこの呪縛からは逃れられないだろう。そんなことを頭に浮かべながら、ハローワークで自分にもできそうな仕事を探しているのが非常に情けない。
 さて、そんな散々な働き方をしてきた私であるが、これは自分にだけ与えられた罰でも何でもない。氷河期世代の面々は同じ体験をして、それに耐えることができた人だけがきちんと社会人として今でも働けているだけのことだ。大学時代の仲間達は超ブラックな環境に耐え、きちんとした職歴をゲットすることに成功した。我慢ができなかった私だけが失速して行ったのだった。当時のことを振り返ると、発達障害や鬱をその理由にすることはできないだろう。
 もしかしたら、「こんな会社にしか入れなかった俺達が悪い」と言えた方が余裕があったのではないだろうか・・・・・・捉え方がそんな悪い方向に進んで行く点からも、私と社会との隔たりは大きくなるばかりである。

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