『配属ガチャ』問題について

 今日、ネットニュースでスピード離職に関する記事が載っていた。そこでは、配属先が希望している部門と異なり、退職代行サービスに連絡して辞めることになったのだが、それに対するコメントが古臭くて疑問を持った。高評価を得ているものは「希望した職種と違っていても会社に居続けろ」「そんなことで辞める奴は何処へ行っても同じだ」という類のもので、会社が嘘を吐いて違った部門へ飛ばしたことに対しての否定的な意見がなかったのである。
 そもそも、入社前に希望職種への採用を約束して、入ってから違う部署に配属させることは労働基準法違反である。その為、何度も面接をして、採用担当者と志望者との温度差をなくすのだ。しかし、誰もが昔の価値観で物事を捉えており、約束と違う契約を交わされた人を責めているのである。これでは、誰もが羨むような職種で新卒を釣る悪徳企業を肯定しているのと全く同じ状態だ。
 さて、そんな私も、このような労基違反の被害者となった経験は少なくない。事務職だと言われてITヘルプに配属されたことがあれば、プログラマの経験を全く積ませて貰えないでテスターからいきなりSEとして働かされたこともある。また、3ヶ月の研修が約束されたのにも関わらず、僅か2週間でそれが終わってしまったという苦難も受けた。そういうことを頭に入れると、今でも「配属先は希望と違って当たり前だ」という風潮があることが非常に悲しく思われてしまうのである。
 因みに、望んでいた部署に入れなかったのに、意外とそこが天職だったというケースは極めて少ない。それはそうだろう、人員が足りていないということは、誰もやりたがらないのと一緒なのだから。そういった環境に新卒社員を配置すれば、精神的にも体力的にも不具合が出るのは当たり前である。きちんとしたホワイト企業でもない限り、部署の不一致は絶対にその後の生活に支障をきたすことは間違いない。
 まあ、『配属ガチャ』となるケースは、対象となってしまった会社そのものがきちんとしていない可能性が非常に高いので、代行サービスを用いて退職した方の選択は正しいと言える。また、それに対して批判をしている人達は条件の良い大企業にでも勤めているのだろう。この意見は憶測に過ぎないものの、若者が減少している今を頭に入れると、昔の価値観では人事も成り立たないのではないだろうか。

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