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秋田杉 山から降りて 街角に

秋田杉の山

 いつもは素通りする角の材木屋の倉庫が日陰を作っていたので、暑さを凌ごうと立ち止まった。ビッシリと倉庫の壁際に立て掛けられている板や角材を眺めていると、「東濃」と小さく書かれた板があった。東濃檜だな、わざわざ板に書いてあるのは、銘柄材で価格も高いからか。少し目を移すと、「能代」、「紀州」、「秋田」と書かれたものもある。書かれているのは、どれも美林で名高い場所である。

 半径1キロ弱、散歩の範囲に材木屋が4軒ある。コンビニには及ばないまでもかなりの数だ。商売敵との差別化は、材木屋でも腐心しているところか。国産の良い材料を売りにする店があれば、安価な輸入材を主に扱う店もあるのだろう。国産材の比率ってどのくらいなんだろうか。食料自給率があるように木材自給率もあるのだろうか。

 2022年の木材自給率41%と林野庁のデータにあった。木材と言っても、丸太に始まって、紙の原料となるパルプ・チップ用材、合板、製材と幅広い。材木屋が主に扱う製材に限ってみると自給率は約50%である。食料自給率(カロリーベース)の38%と比べて高いと見るか低いと見るか。

 林野庁のデータによると、昭和40年台の高度経済成長とともに輸入木材が増え続け、バブルが弾けた平成2年には国産材の比率は20%近くまで低下ている。その後、2000年代に入ってからは、国産材の比率がほぼ一貫して高まっている。木材は食料より頑張っているではないか。

 林業・木材産業に対する国の支援策によるところもあるが、何といても海外木材の価格の上昇が国産材の利用比率を高めた1番の要因のようである。日本は、国土の約2/3が森林で、木材資源に恵まれているので、コスト高のハンディが下がれば国産材の巻き返しが可能ということらしい。

 日本には「日本三大美林」に限らず、良質の木材を蓄えた森林が多くある。この1、2年の円安で、それらの森林から切り出された材木の競争力はさらに高まっているに違いない。我が町の材木屋に並ぶ木材が全て国産材になる日もそう遠くないかもしれない。

(2024.08.31)

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