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我が世代 食い物にする 教習所

 運転免許更新のために認知機能検査を受けた。3年前に続いて今回も無事にパスしたので、次は自動車教習所で高齢者講習を受けなければならない。そこで、高齢者講習を行なっている教習所の一覧表を見て、我が家から徒歩圏いある大泉自動車教習所に電話して予約を取った。教習所一覧の中に、18歳になって免を取るために通っていた武蔵小金井自動車学校を見つけて、当時のことを思い出すと共に、「あの小さな教習所が今もあるか」と驚いた。

 教習所一覧表をよく見てみると、10代後半から20代にかけて通学、通勤に利用していた中央線の沿線に、当時あった教習所がほぼ全て載っている。若者の数が減った上に若者の自動車離れが進み、新たに運転免許証を取る人が減ったと聞いて久しい。それでも、多くの教習所が生き残っているのは何故だろう。ひょっとすると、高齢者講習で食い繋いでいる。うん、ありそうなことだ。

 この思いつきを後押しするデータを、警察庁作成の運転免許統計の中に見つけた。新規免許交付者の数は1997年220万人から2022年には120万人と45%も減少している。これに対して、教習所の数は1535から1295と15%しか減っていない。一方、高齢者講習の受講者は、2001年の40万人から2022年には360万人に増えている。

 我々団塊の世代が社会人になった頃に、モータリゼーションの波が押し寄せ、自動車メーカーを始め、多くの自動車関連産業が勃興し、やがて日本経済の屋台骨を支える存在になった。自動車教習所もそん1つにあげられる。モータリゼションの波が収まると自動車メーカーは、主戦場を海外に移した。これに対して、自動車教習所は、国内に留まり、高齢者講習という新たなニーズを作り出した。

 「団塊の世代が通り過ぎた後は、ぺんぺん草も生えない」とも言われる。そんな言葉などものともせずに、団塊の世代の帰り道に待ち伏せして、団塊の世代を2度味わいつくす自動車教習所は、凄い産業ではないだろうか。

(2023.11.17)

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