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ある箱の話

一人でいるうちに
体の輪郭は緩やかに溶けだし
部屋と一体化してしまった

私と一体化した部屋が売りに出される
不動産屋の広告を見た青年がやってくる

青年は長く眠るひとだった
夕方になってから外に行く

私はカップラーメンの残り香を吸い込みながら過ごす
毎日はとても平板で幸福だった

ある日青年は芍薬の花束を持って帰ってきた
花をさした硝子が私の体を照らす
青年はわあわあと泣き出す
湧き出したものは止まらず
私は傍らでじっと見つめていた

やがて青年の流した涙が海をつくり
私たちは漂流した
南の島にぶつかった拍子に
私と部屋は分離する

青年と私は南の島で
姉弟という設定で暮らし始める


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