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創作あれこれ

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創作(オリジナル)あれこれを載せていきます。
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#ポエム

水中の言葉みたい

子供の頃 プールの底に座って水面を見るのが好きだった プールの底で 仰向けになって水面を見ることも 揺れる水面の光は絶えなくて 希望に満ちた小さい頃 それは沈むことのない太陽のようだった 誰かが水の中に入ってきた たくさんの泡が 水面付近に壁を作る 音は聞こえるけど はっきり聞こえない 何を言っているのか 分からない それが時々怖くて 時々楽しい 水中で会話をしようとしても 言葉は泡と化す 全てが水に揺れて はっきり見えなくて それでも 見えるものは見えていた もしキ

黒白

あの時から、本来の自分の色でなくなっている。 いつか反旗を翻す。 その時をただ静かに待つ。 そう、静かに待つつもりだった。 それでも偽る自分はつらいものである。 本当は、この色でいたくない。 何に負けてしまったんだろう。 規則に従っただけだ。 周りだって、それが”普通”だと見ていたじゃないか。 パタパタと反旗を翻す仲間が周りに目立つようになる。 まだ自分の番はこないのか。 勝ったら、元の色に戻れたら、どう思うんだろう。 開始早々、色を変えられてしまった。 あれから随

モラトリアム

そこに踏み入る勇気がなかった ぐずぐずしていたら 違う路を歩くことになってしまった もう君の顔は思い出せない 1番後ろ 1番窓側の席 人気のある席だけど 逃げ場のないところ 夏というには、まだ早く 春というには、もう遅い チャイムが鳴る中 まだまだ眠い目をこする  しばらくしてから 君は颯爽と現れた クーラーをつけるには、まだ早いかなって言いながら 窓に向かう ゆっくりでもなく早くもない 背が高いから 歩幅が大きい方だったのかもしれない わずかな間 その独り言のよう