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南仏でのバカンス

僕も水辺の生き物なのかもしれない。
焼けた肌が剥がれ、剥がれた肌は焼けていく。
太陽が出入りする下で、仰向けかうつ伏せになるだけの生き物。

塩水に晒されて焦げた肌がつんと張る。
ここでは水に入るのも上がるのも自由。
ある意味で究極の自由は究極の自律である。
ここではラグを敷く場所を決め、日焼け止めを塗り、海に入ったり出たりして、いつビーチを去るのかを全部自分で決めなければならない。
それくらい暇だ。

ゴツゴツした石を覆う水は透明だ
一緒になりたい
塩辛い地中海の一部になってスッと消えてしまいたい

ツルツルして粉っぽい海岸の石ころの1つに僕もいつかはなる
そう思うとサントロペ港に浮かぶボートやカンヌの女性たちがまとうドレスからすっと価値が消えていく
数々の富と名声の残骸が流れ込んだ海の水はこんなにも透明なのだから

マントンの住宅街に咲くジャスミンの花の香りが潮風に乗っている


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