【連載小説】『港区タワマン32歳女物語』#37 クミ

#37 クミ

今日は1人でシャンパンを飲んでいる。嬉しいことがあったからだ。ソノさんの疑いがどんどん晴れてきて、広告が戻り映画も予定通り撮影するとのこと。映画においては初出演となる。スクリーンでソノさんを観るために渡韓するのもいいだろう。日本で上映されれば最高だが、日本のように試写会や初日の舞台挨拶はあるのだろうか。今から何とかコネを作れないだろうか。そういえばマミはまだソウルにいるのだろうか・・。連絡を取る手段がないのが残念だが、コネをどうにか作ってほしい。

愛犬ソノはとても良い子だ。私は家庭科が苦手で裁縫もしたことがないが、ソノにぴったりの服を作りたくてミシンを買った。中々上手くいかないが、上質な布でオリジナルのものを着させる喜びは仕事では得られないものだ。これから寒くなるし編み物も始めようかと計画をしている。まるで行き先のない母性愛を全力でソノに捧げているようだ。散歩は朝晩しているが、仕事で留守にしている間は寂しい思いをさせてしまう。私は財力だけはある。ペットシッターを雇ったのだ。これでソノのストレスも軽減するだろう。

簡単な日常会話は理解出来るようになったが、まだハングルが読めない。勉強する時間が中々捻出出来ない。仕事、ソノさんの過去作を鑑賞、愛犬ソノとの時間もうこれだけで精一杯だ。今回の騒動があって、まだ日本では詳細までは報じられないため、韓国の掲示板やまとめサイトを翻訳しながら読むことになる。どうしても細かいニュアンスが伝わってこない。Twitterで親切なファンが翻訳してくれるものもあるが、私は全ての情報を客観的に分析をし真実を導きたいのだ。寝なくても生きていければ、ハングルを勉強する時間が取れるのに。私がこれ以上睡眠時間を削ったらカウンセラーがうるさいだろう。最悪、仕事を強制的に休みにさせられる。

ソノさんを想いながら酔いが進む。

（ヴァジャ）

「ゲイと女の5点ラジオ」というふざけたポッドキャストをやってます。
お時間ある時、ぜひ聞いてみてください。
Apple Podcasts : http://apple.co/3s6OR3f
Spotify : http://spoti.fi/3yEPFPc
Amazon Music : https://amzn.to/2Y7FaXj