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医療と医学【med service & science】

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医療と医学に関する情報を非医療関係者に伝わるように書きます。なお、内容は筆者が日々努力して up-date されたものを提供したいと思いますが、ときには専門外のことで分からないこ… もっと読む
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記事一覧

はじめて執筆した書籍が出版されます『消化器病理の見かたのコツ』

お久しぶりです。 noteをたくさん書いていた時期から2年あまり、別にただサボっていた訳ではありません。この2年間で僕の人生は大きく転換しました。 適応障害から復帰し、家族で新天地へ移り、メンタル不調にやられながらも新しい世界で頑張り、体調も随分と良くなり、昔ほどではないけどそれなりにバリバリ仕事できるようになりました。また、今更ながら社会人大学院ではありますが、博士課程に進みました。 たくさんのやり甲斐ある仕事をいただき、忙しいけれども、ときに挫けそうになりながらも、

医学教育における基礎医学の重要性

基礎医学は臨床の役に立たないと思っている人がときどきいるが、全くそんなことはない。基礎医学は医学的考え方において、文字通り基礎・基盤である。 基礎というのは easy や experimental、not clinical ということではなく、basic、fundamental あるいは essential に相当するものであると思う。 一部で役立たないと思われている背景は何なのだろうか。それを考えないといけないと思う。 一つは医学部の講義である。多くの教員は研究のプロ

発達障害(developmental disorder)概論:一般的な解説の行間を埋める

「発達障害」という用語が世に浸透して久しいが、どのように発達障害を捉えているだろうか。僕自身は発達障害の専門家ではないので、詳しいことについては明るくないのだが、一応の医学教育を受けた身として考えるところはあるので概説したい。詳しい概念については様々な記事があるので(ここでは Wikipedia を貼付)、その行間を埋めるような解説をしたいと思う。 (1)発達障害の定義と概要発達障害について明確な定義はないように思うが、Wikipedia では以下のように記載されている。下

新型コロナウイルスについて簡潔に解説▶診療現場にいない一般的な知識を有する医師としての見解

この記事は非専門の医師として、新型コロナウイルス感染症に関する考え方をまとめたものです。最新の情報について、また、確実な情報源としては公的機関の情報をご参照ください(本文に理由を記載しますが、公的機関の情報が最も確実です)。また、明らかな事実誤認などありましたらご指摘頂ければ幸いです。 ※ (3)に追記があります (1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とはウイルスは DNA または RNA という遺伝子を有し、周囲にこの遺伝子を元に生成される様々な蛋白質をまと

諺(ことわざ)からみる内科医、外科医、精神科医、病理医の違い:外科医について

前回は内科医について考察した。諺(ことわざ)は以下の2通り(短いバージョンと長いバージョン)。諺なので極端な言い方になっているが、的を得ていないわけではない。今回は外科医について考察したい。なお、この諺は、病理医の仕事を揶揄したものであるので、他の分かりやすい科と比較している。実際には他にもたくさんの診療科があり、どの診療科も重要であることは言うまでもない。 Surgeons know nothing but do everything. Internists know e

諺(ことわざ)からみる内科医、外科医、精神科医、病理医の違い:内科医について

いくつか違うバージョンがあるので、簡単なものから見ていきたい。 Surgeons know nothing but do everything. Internists know everything but do nothing. Pathologists know everything and do everything but too late. 「外科医は何も知らないが、何でもする。内科医は何でも知っているが、何もしない。病理医は何でも知っているし、何でもするが、遅

セロトニンやGABAの精神安定作用は経口摂取では得られないって話:脳のつくり=解剖学から考える

セロトニン、GABAって、とてもメジャーな言葉になってきましたね。僕が大学生の頃にGABAを含んだチョコレートが流行りだしました。ちょうど「薬理学」という薬の作用を学ぶ科目を勉強していて、GABAって精神科領域でとても重要な物質なんですが、「GABAは血液脳関門を通過しない」と教科書に書かれてあり、「えっ、じゃあ、GABAって食べても意味ないじゃん!!」ってなりました。今日はそこら辺について分かりやすく解説したいと思います😊 (1)脳のつくり:マクロ脳は人体の中でも特殊で不

(18)非病理関連領域(精神科・一般小児・総合内科・救急など)

1.精神科💛【精神科の勉強法1】精神科の勉強について多くの人が誤解しているように思う 💛【精神科の勉強法2】精神科のオススメ教科書 💛【精神科の勉強法3】精神科の知識をその後どう活かすか:非精神科の医師へ 💛うつヌケのお得技ベストセレクション:一般向けかつ医療従事者向けの精神疾患全般の推薦図書として 💛セロトニンやGABAの精神安定作用は経口摂取では得られないって話:脳のつくり=解剖学から考える 【境界領域】 💚発達障害(developmental disorder)概論

小児の腹痛について(医療従事者+非医療従事者向け)

✅こちらの記事はサークル【病理医がつなぐ医療の架け橋】での成果として、一般的な内容をまとめたものです。病理以外の分野でも、分野フリーで可能な限り一般的な医療情報を発信・提供します。サークル内ではもう少し具体的な内容で意見交換しています。 腹痛は最も多い症状の1つであるが、 まず、 「急性の腹痛」と「慢性の腹痛」で全く考え方が異なる。 また、一般論として、 ▶ 本当に「お腹」が原因の痛みか? ▶ 嘔気・嘔吐、下痢・便秘、熱などの症状は? ▶ 発症にきっかけや増悪因子は? な

小児科の一般向け推薦図書:医療従事者にも絶対に役に立つ!

個人的な意見であるが、 小児科の医学書・教科書ってなかなか役に立たない。 結論から言うと、 「子供の病気」の一般向け書籍は、 子供をもつ親御さんだけでなく、 医療従事者にも大変有用である! どんな本にも書いてある。 「子供は大人のミニチュア版ではない」 つまり、 大人とはそもそも診る方法、考え方が違うのだ、と。 しかし、実際、 小児科のカバー範囲は大人と同じくらい全身にわたるにもかかわらず、 小児科の教科書1冊でカバーできるのか? 実際、 小児科の教科書は網羅的だが

【精神科の勉強法3】精神科の知識をその後どう活かすか:非精神科の医師へ

精神科は病理との直接的関連は小さいが、 診断学が重要である点で実は類似している。 精神科の勉強法について浅学ながら述べる。 【本日の内容】 (1)精神科の概要と勉強法:誤解するなかれ! (2)精神科のオススメ教科書 (3)精神科知識をその後どう活かすか:非精神科の医師へ👈今日はココ (3)精神科知識をその後どう活かすか:非精神科の医師へまず、文章がただただ長いが読んでいただければ幸いである。日常診療および自身の経験から思うところがある。医療従事者、特に非精神科の医師(にな

うつヌケのお得技ベストセレクション:一般向けかつ医療従事者向けの精神疾患全般の推薦図書として

実は一般書籍の中にも優れた医学情報を含む本がときどきある(実際に多くはないというのが個人的見解である)。もちろん患者目線に立って書かれているので、記載は平易で読みやすい。この本はまさにその代表であると言える。専門家の医師が監修している。 この本は「うつ病」をテーマとして、その具体的な対処法について「本人」「家族」「職場」など複数の視点から述べ、また、症状・受診・治療などのことはもちろん、職場との連絡や対処法、睡眠・運動・食事など、実生活上で重要になる観点からも述べられて

【精神科】性格・気質・人格について

【本日の内容】 (1)性格・気質・人格を理解する意味 (2)性格とは (3)気質とは (4)人格とは (5)話題の HSP について (1)性格・気質・人格を理解する意味これら3つは一部重なるものの、 基本的には異なるものを指している。 この3つの言葉の意味=定義を理解することは この3つを語る上で基盤となる。 何事においても、 「定義」は非常に重要である。 「定義」は言葉・現象を扱うに当たっての約束事・決め事であるから、 何かを論じる際に最初の約束事を無視しては話が

子宮頸がんワクチン【情報の選別】

間違いなく、 日本の医療の最大の問題の1つである。 結論から言うと、 絶対に受けるべき!!! というか、受けなければ一定割合で、 子宮や自分の将来、さらには命に危険が及ぶ!!!である。 子宮頸がんに関して伝えたい大事なことは (1)子宮頸がんワクチンを接種する (2)子宮頸がん検診を受ける の2点に集約される。 医療・医学の情報の選択は、しばしば専門的で分かりにくい。 分からないことがあれば、ネットであれこれ調べるより、 自分が信頼できる医療関係者に相談するのが一番だと