Cadre小噺:ノルウェアのサイボーグ事情

主観:セラム

支援部隊「ペリドット」のマスターでありながら…
まさか体が故障するとは不測の事態でした。
なぜ故障かって?僕は体の一部が機械化しているからですよ。
僕が元々活動していたノルウェアは、
そうせざるを得ない環境だったんです。
まあざっと説明しますか。

そもそもノルウェアは10年前に発見され、
天然の「モリオン」を採掘できることから
開拓が始まったんです。
僕も開拓の際に過去に所属していた医師団に派遣されました。
採掘が始まってから1年後、
坑口から穢れが大気中に穢れが広がりはじめ、
シャドウが大量に湧くようになりました。

モリオンは魔除けの石として有名なのですが、
穢れを発する性質を持つ事を知ったのは開拓から4年後の事です。

知ってからはもう手遅れ。
常に大気に穢れが蔓延している状態になって、
普通の者でもシャドウを認識してしまう危険地区になりました。

僕はシャドウと戦えるのである程度の耐性はありますが、
それ以前に長時間穢れに曝されると汚染で心身が衰弱し、
崩壊しまう恐れがあります。

仲間たちが衰弱して困っていた時に
赤い衣の…名前の無い旅人が現れて、
病んで倒れたリーダーの体の崩壊した部分に
モリオンを組み込んだ機械の部品を装着しました。
すると機械が穢れを排出し、
リーダーは何事もなく起き上がったのです。

聞けば魔導器という失われた技術らしく、
特殊な魔石の力で穢れから守り、
体と魂をつなぎ合わせる事で生命維持が可能なんだとか。
(魔導器に関しては、リアさんの方がよく知っているはずです)
勿論、多少のリスクはあります。でも魔導器に頼ることにしました。
もちろん反対もされましたよ。
「それは生きていると言えるのか?」
「サイボーグになってもそれは同じ者なのか?」とかね。

でもこのような事態に対して
生き延びるための知恵が開拓者達にはないので仕方がないのです。

僕ら医師団は、居住する者達の為に彼からサイボーグ技術を学びました。
それで今では魔導器の解析を進め、より便利な力を得るようになりました。

今やサイボーグ技術は生命維持だけに留まらず、
特定の動作の効率を上げる事にも使われるようになりました。
自動装置でいいだろうとは思いますが、
ノルウェアはあまり他世界と安易に行き来できない環境ですし、
大規模な自動装置よりも体に装着する機械のほうが安上がりなので、
大規模な作業以外にはあまり取り入れないんです。

機械には魔石による擬似的な神経が繋げられているので
肉体と比べて劣りますが触覚があります。
僕の左手は指先が治療器具に、
よく不気味がられる左目は所謂診察機になりますからね。

工事関係者は体を壊しやすいので、身体能力の強化を兼ねて、
簡易に修理が可能な強靭な部品を使います。

あと、サイボーグ技術の中には兵器化もあります。
こちらは生命維持よりも戦闘に特化したサイボーグ技術です。
シャドウの掃討をする自警団がよく施されています。
改造の範囲を広げるほど強力な兵器を使う事ができ、
その上、兵器に使うエネルギーは低コストなんですよ。
あまり喜ばしいことではないですけどね…。

しかし、通常に比べて人間性の喪失が激しいのが難点でして、
生命維持を意識してないので、あまり長生きもできない。

人間性の喪失には原因がありまして、
動力源が魂から生じる生命エネルギーだからです。
思いやる気持ちや感情があるのも生命エネルギーが
適切に賄われているからこそで、
魔導器にエネルギーを集中させると、その分精神に賄う分が減ります。

僕は顔の左半分、左手、左足を改造してますが、
赤い男が施工した物ですし、リアさんが時々整備してくれるからか
あまり心情に変化は無い様です。

体の殆どが機械になっていた患者もいました。
なんというか、ティダルさんのように体の記憶に基づく行動をしがちでした。
あと生きる上で重要である痛覚も50%程無くなったはずです。
それこそ生きていると言えるのでしょうか?

エルバートさんのように体そのものを改造したい人もいますがね、
エネルギーの負担で自我が死ぬんです。
あれじゃあ生きているだけのロボットと同然ですよ。