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そういうお前はどうなんだ劇場(その1)

 『そういうお前はどうなんだ?』というアナログゲームがあります。
グループSNEのゲームでAmazonなどで2,000円少々で購入できます。
商品説明を引用すると

「犯人はこの中にいる! ......気がする」

ある洋館でパーティーが開かれた。
しかしその翌日、凄惨な殺人事件がおこってしまった。

しかしその場にいた全員、妄想力と言い訳だけが達者で、推理能力はゼロ。
もちろん犯人が誰かわからない。
刑事が来る前に容疑者の中で最もそれっぽい人物をつるし上げ、警察に突き出そう。

自分の部屋から出てくる怪しい証拠の言いわけをしつつ、他人の怪しい証拠を好き勝手に追求する本作。
キャラクター、性格、事件、証拠、被害者の状態などがゲーム毎に変化し、全く違った物語が展開されます。
何度も遊べるミステリー風言いわけゲームを、ぜひお楽しみください。

と言う訳で、一度プレイしてみたものを小説風に書き起こしてみました。
一部の画像はPixAIという画像生成AIサイトで作成してます。

登場人物


三杉金蔵(館の主人)
金の亡者


沢木翔一(館の料理長)
記憶喪失


葦原誠(新聞記者)
ミステリーオタク


小沢マナ(館のメイド)
?

 ある日、新聞記者の葦原誠は、取材で三杉金蔵の元を訪れた。
一代で富を築いた彼に成功の秘訣を語ってもらうという企画だった。
三杉の都合で夜遅くの訪問となり、三杉邸は山奥にポツンとあるため、その日はそのまま泊まることになったのだが……
 翌朝、メイドの小沢マナが自室で無惨な死体となって発見された。

地獄の牛鬼殺人事件(前編)

牛鬼伝説

 マナは自室で亡くなり、髪が真っ白になっていました。
彼女が経験した恐怖を表しているのかもしれません。
この地域では、「牛鬼伝説」という怖い話があり、その伝説を知った人は恐怖のあまり死ぬと言われています。
では、マナの死はこの「牛鬼伝説」によるものなのでしょうか?
しかもマナは生前、誰かに殺されると怯えていたらしいのです。

記憶喪失の料理長

 三杉邸には、館の主である三杉金蔵の他に、料理長の沢木翔一とメイドのマナが住み込みで働いていたので、三杉は真っ先に沢木を問い詰めると、意外な答えが返ったきました。
「記憶喪失じゃと!?」
「ええ、今朝起きると、ここ数日の記憶が無くなっていまして、もちろん昨夜のことも覚えておりません」
白を切るつもりなのか、本当なのか判断がつかなかった三杉は沢木の部屋にあった不審な赤いスーツケースを指して開けるように言いましたが、沢木は動こうとしません。
仕方がないと葦原がスーツケースに取り付くと、鍵はかかっていなかったようであっさりと開きました。
「爆弾!?」
中にはドラマに出てくるような爆弾が納められていて、ご丁寧にタイマーがカウントダウンしています。
三杉が窓を開け、裏の湖を指さしました。
すぐに葦原は反応して、スーツケースごと爆弾を湖へと投げます。
葦原の渾身の投擲で、爆弾入りのスーツケースが放物線を描いて湖に落ちました。
皆が固唾をのんで見守る中、轟音とともに湖から水柱が立ち上がりました。
 場所をリビングに移して沢木の尋問が続けられました。
ミステリーマニアの葦原は生き生きとして、沢木犯人説を語ります。
「沢木さん、あの爆弾は何ですか? 流石にこのお屋敷をまるまる吹っ飛ばすほどの威力はなさそうでしたが、部屋の一つや二つなら跡形もなく消し飛んでいたんじゃないですか」
「本当はマナさんの部屋に仕掛けて死体の隠滅を謀るつもりだったんじゃないですか」
しかし葦原に対して沢木は冷静に応えました。
「私は記憶を失っていますが、あの趣味の悪い赤いスーツケースは私のものではないと断言できます。
たぶん犯人は殺害現場を見られたか何かで、私を殴って気絶させ、あの爆弾を部屋に仕掛けて殺すつもりだったんでしょう。
残念ながら私は犯人に殴られて記憶喪失になってしまったようですが。
そういうあなたはどうなんですか?」

ミステリーマニアの新聞記者

 沢木は葦原が昨日持っていた赤い日記帳のことを話しだしました。
「芦原さんは赤がお好きなんですね。昨日、食事の時に赤い日記帳に何か書かれていましたが、食器を下げる時にチラリと見えた内容は『肉が食いたい。新鮮な若い娘の肉が』とか、書かれていましたよね」
三杉は眉をひそめ葦原を糾弾します。
「まさか食人衝動を抱えていたのか。そう言えば、小沢を見る目が欲情と言うより、うまそうな料理を見る目じゃった」
それに対して葦原は反論します。
「いやいや、適当なことを言わないで下さい。これは小説のネタ帳です。恥ずかしながらミステリー好きが高じて記者をやる傍ら、小説を書いていたんです。僕に食人衝動なんてある訳ありませんよ。そういうあなたはどうなんです?」

金の亡者の館の主

 今度は葦原が三杉を糾弾します。
「昨夜の書斎でのインタビューの後、僕は書斎を一度出た後、一つだけ聞き忘れたことがあって、まだあなたが居るか少し扉を開けて中を見たんですよ。
あなたは書斎でなにやら怪しい薬を自分に打っていましたね」
沢木が目を見開いて三杉を見ました。
「旦那様、まさか麻薬に手を出していたんですか? その秘密を知った小沢を牛鬼伝説になぞらえて殺したんですか!」
沢木にまで疑われて三杉は激昂します。
「バカモン! これはただのインスリンだ。儂が糖尿病だということはお前も知っているだろうが!」

つづく




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