痛みは人生を前進させるきっかけである
私は、麻酔科医として専門医も取得し、手術室の麻酔の大抵のことは一人で対応できる。麻酔科医の仕事は少し特殊だ。患者さんの意識をとり、痛みをとり、外科医が手術に集中できる環境を整える。その際に、大抵の場合患者さんは呼吸が自分で出来なくなる。呼吸のサポートをしながら、微妙な血圧の変化に速やかに対応したり、手術の進行に応じて薬の調整をしたりして、一見すると患者さんの状態は変化がないように整えていく。私たちの役目は、手術した部分を除いて、患者さんの状態を変えずに、目覚めてもらうこと。特殊だけど、手術が成功し、患者さんが手術前と変わらず目覚めたときはやりがいを感じる。麻酔科医とはそういう集団です。
麻酔科医としての歯がゆさ
麻酔科医と患者さんの付き合いは、短いのが一般的だ。手術前日に術前の診察でご挨拶して、手術当日手術室で再会する。術後は、数日状態を確認して役目は終了となる。麻酔科医として多くのことが出来るようになったころ、私の中で歯がゆさが芽生え、だんだんと大きくなっていきました。
「手術をきっかけに患者さんには、自分の問題点と向き合い克服してほしい」
病気になると不安や恐怖が生じ、人生を振り返るきっかけになると思います。患者さんには生活習慣を見直すだけではなく、その他にも抱えている問題と向き合い、手術の後は前進してほしい。患者さんだけでなく、家族も人生を見直すきっかけになってほしい。病気を無駄にしないでほしい。
「そのために、麻酔科医として何ができるか」
正直、短い患者さんとの付き合いでは、限界を感じてしまいました。
(もちろん、麻酔にやりがいを感じていますし、重要な役割を担っていると思っています。)
ペインクリニックとの出会い
麻酔科医は、患者さんが手術を受けれるよう痛みをとるのが仕事です。手術後も痛みで苦しまないようにするのも麻酔科医の大事な仕事です。そう、麻酔科医は痛みと密接に関わっているのです。歴史的に、麻酔科医が手術室の外でも痛みの診療に携わってきました。私の勤めている病院でも、ペインクリニックの研修を短期間できる環境が整っていました。
そこで学んだのが、慢性疼痛とは、生活習慣や思考の癖、対人関係などのあらゆる面が痛みの慢性化に関わっている可能性が高いということでした。
つまり、
慢性疼痛はその人が抱えている問題を描出している可能性が高い
ということです。
慢性疼痛の診療に携わることで、時間をかけて患者さんが抱えている問題をあぶりだして、その人の人生を前進させることが出来るのではないか。
こういう思いで、ペインクリニックの診療に携わることにしました。
多くの患者さんと真剣に向き合うことで、多くの人の人生に関われるとても魅力的な役割です。
まだまだ、未熟ですが痛みに関して有益な情報をわかりやすく伝えていきたいと思います。
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