無花果のお裾分け〜からの水道水
この時期になると毎年隣家の方から大量に無花果を頂いている。
柔らかく甘く、とろける様に美味しいのだが家族は皆好まず、殆ど私の胃袋に収まってしまう。
最初に頂いた時はあまりに大量の為、遠慮していたのだが
👴「いいのいいの、気にしないで!トイレの窓の外に勝手に生えてるやつだから!!シャ〜ッシャッシャッシャ😁」
所々抜けた歯の間から空気を漏らして笑うオヤジさんに、トイレというワードは聞かなかった事にして有り難く頂戴した。
この地域は首都圏ではあるが、未だお裾分けや長期に留守にする際は隣近所に報告して出掛ける人が多い…という昭和のあの時代の風習が少し残っている。
苦手な人には少々気詰まりから知れないが、長野の出身の為かその辺はあまり気にならなかった。
何しろこのお隣さん、田舎でも中々お目にかかれない強烈なキャラクターなのだ。
最初の出会いはこの地に居を構えて、挨拶に行った時
🦍「初めまして、隣に越してきました………カボチャ、召し上がられました??」
👴「あら〜?何でわかるの??エスパーさんかね??シッシッシwww」
当時から壊れたハーモニカの様な個性的な歯を剥き出しにして、ニッカリ笑うその口の周り360度にカボチャらしき物体がぐる〜りと付いているのだ。加えてカボチャの煮物の匂いを身体中にまとって出てきたのだから、ある意味誰でもエスパーになれると言えよう。
そんなオヤジ(そろそろさん抜きでも良いでしょうw)との付き合いも約20年、オヤジは伴侶を亡くし、我が家も祖母と父が鬼籍に入り、年相応の行動が目立つ様になったオヤジを心配して息子夫婦が同居する様になった。
よくある話だが、身体は元気なので時々何処かへ行ってしまうので見かけたら連絡をして欲しいと頼まれていた。
ある時、我が家は自衛隊の基地が比較的近くにある為轟音と共に頭上に飛行機が来た時
👴「こオラァ〜!うるしぇ〜!!うるしぇ〜ぞおるぁぁぁぁぁぁ!!!!」
空を仰ぎ手拭いをブン回しながら叫ぶその姿に、息子さんに連絡をするべきか!?
と、思ったが面白いので暫し眺めていた🤭
見えない敵が去った後は、憑き物が落ちた様にしれっと中に入っていった。
そして最近は我が家の前で待ち構えている時があり、
🦍「どうかしましたか?」
👴「ちょっと聞いてよネオばたさ〜ん!水がね、うちの水がおかしいんだわ!!」
よく見ると手には水の入ったコップを持っている。
👴「この水ね、美味しくないのよ!ね、おかしいでしょ?おかしいよねえぇぇぇ」
いきなり水の味を問われても返答に困るので、私は某グルメコミックの主人公よろしく
🦍「まあ…水と豆腐には旅をさせるなと言いますから…」
👴「飲んでみて欲しい〜んだわ、ね、お願い!!」
言い終わる前に畳みかける様に懇願してくるオヤジ。
普通これ美味しいから食べてみて!
というやり取りは理解出来る、しかし、不味いから飲んでみろと言われたのは初めてである。しかも一体何処で汲んできたのか、砂の様な物が入っている。
謎の言葉を喚き散らし過ぎて国籍不明な人間になっており、息子夫婦は不在らしい。
飲んだフリでもするしかあるまい…
覚悟を決めると
🧑「おじいちゃん!何やってるの!!」
家からお嫁さんが飛び出してきた。
居たんかい。
🧑「ごめんなさいね〜💧最近アレがおかしい、コレがおかしいって、おかしいのは自分の頭なのにね!😂」
明るいお嫁さんはオヤジからコップをもぎ取り、家に押し込めた。
🦍「いえいえ…ところで、コレ、何処のお水?」
🧑「金魚の水槽の水よ〜」
危うく水槽の水を飲まされる所であった。
そして先日、また家の前でオヤジが待ち構えていた。
🦍「こんばんは〜、どうしました?またお水??」
👴「トイレの無花果〜!今年もた〜くさん取れたから!!ギャッシッシッシww」
残り少なくなった歯を全開させながら無邪気に笑うその姿に、
🦍(オヤジ、長生きしろよ)
心の中でそう呟いた
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