![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/93071091/rectangle_large_type_2_2eedac291c40be1d70e05f49f8c8e997.png?width=800)
妖怪との約束
![](https://assets.st-note.com/img/1670738323559-2UrDTzWBR5.png?width=800)
出前館でマックを注文した。
ごはんバーガーが期間限定の為、今の内に食べてみようと。
待つこと約30分。
『お待たせしました~出前
···か···ン···*☆◆$★···』
ドサリと袋を落とす配達員のお兄さん。
その顔面は忽ち蒼白に変わった。
ハッと自分の姿を見ると、今日は11月とは思えない程の暑さ。
ベージュのババシャツにお揃い(?)のベージュのパンツ(勿論下着の)。
一応上下お揃いのコーデではあるが、このお兄さんはおそらく世界一見たくないコーデを見させられてしまったであろう。
こちらもとうはたったとは言え乙女(図々しい)である。
『キャッ!』
と言い、何故か顔を両手で覆った。
お兄さんからすれば、悲鳴を上げたいのはこちらだと言いたい所だろうが、品物を入れた袋を落としてしまいかなり狼狽している。
『す、すみませ···』
『いえ、こちらこそすいません』
『すみ···すみま···』
『いえ、こちらこそごめんなさい』
このやりとりを十数回繰り返し、私の背後で家族が爆笑しているのをきっかけに、お互い我に返った。
不毛なラップバトルはこうして終演となった。
幸い品物は無事であったが、お兄さんのメンタル面はちっとも無事ではないだろう。
ふとウォシュレットのお兄さんを思い出した(★便座の温もりは···に記載)が、最近若いお兄さんに精神的ダメージを食らわしてしまう事が多くなった。
配達のお兄さんは運んできてくれた時の汗は瞬時に引いて、まるで雪女を見た時の様に小刻みに震えている。
私は彼を安心させようと、ひと言
『この事は誰にも言ってはいけません···』
逆に恐怖を植え付ける形になってしまったのだろうか。
お兄さんは、
『は···はヒイ···はい!!』
ババシャツの雪女にそう約束をし、よろよろとバイクで去って行った。
ごはんバーガーはお兄さんの生気も吸い取ったのだろうか。
パワフルで元気が漲る味であった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?