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妖怪との約束


sumi amane様がイラスト化して下さいました



出前館でマックを注文した。
ごはんバーガーが期間限定の為、今の内に食べてみようと。

待つこと約30分。

『お待たせしました~出前
···か···ン···*☆◆$★···』

ドサリと袋を落とす配達員のお兄さん。
その顔面は忽ち蒼白に変わった。
ハッと自分の姿を見ると、今日は11月とは思えない程の暑さ。
ベージュのババシャツにお揃い(?)のベージュのパンツ(勿論下着の)。

一応上下お揃いのコーデではあるが、このお兄さんはおそらく世界一見たくないコーデを見させられてしまったであろう。

こちらもとうはたったとは言え乙女(図々しい)である。

『キャッ!』

と言い、何故か顔を両手で覆った。

お兄さんからすれば、悲鳴を上げたいのはこちらだと言いたい所だろうが、品物を入れた袋を落としてしまいかなり狼狽している。

『す、すみませ···』

『いえ、こちらこそすいません』

『すみ···すみま···』

『いえ、こちらこそごめんなさい』

このやりとりを十数回繰り返し、私の背後で家族が爆笑しているのをきっかけに、お互い我に返った。

不毛なラップバトルはこうして終演となった。

幸い品物は無事であったが、お兄さんのメンタル面はちっとも無事ではないだろう。

ふとウォシュレットのお兄さんを思い出した(★便座の温もりは···に記載)が、最近若いお兄さんに精神的ダメージを食らわしてしまう事が多くなった。

配達のお兄さんは運んできてくれた時の汗は瞬時に引いて、まるで雪女を見た時の様に小刻みに震えている。

私は彼を安心させようと、ひと言

『この事は誰にも言ってはいけません···』

逆に恐怖を植え付ける形になってしまったのだろうか。
お兄さんは、

『は···はヒイ···はい!!』

ババシャツの雪女にそう約束をし、よろよろとバイクで去って行った。

ごはんバーガーはお兄さんの生気も吸い取ったのだろうか。
パワフルで元気が漲る味であった。





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